メルの一撃!
先ほどメルと一緒にいた場所からはすでに遠く離れている。
だから、メルに声が届くとは思えなかった。
それでも叫ばすにはいられなかった。
「メル!!!!!」
「は~い」
間の抜けた声がすぐ近くで上がった。
首を横に向けると、メルは俺の隣にいた。
「あれ? なんでいるの?」
「うん? メルはご主人様の横にずっと付き従ってたよ」
マジかよ!?
あのスピードに着いて来ていた上に、気配まで消していたのか。
とか驚いてる場合ではない。
ケイオスとポチの攻撃が来る!!
「メル! ケイオスとポチの攻撃を防いでくれ!」
「ソフトクリーム」
「はい?」
「ソフトクリームを食べさせてくれるって約束したら、戦ってあげる」
「おまっ、この期におよんで!」
ケイオスとポチの姿がグッと近づいた。
バスターソード切っ先が光り、ポチの雄たけびが響く。
近い!近い!死ぬる!
「分かった! ソフトクリームを食べさせる! 約束だ!」
「やったああああ! ご主人様、大好き!」
メルは躍り上がって喜ぶと、迫ってくる2人の敵の方を見た。
ケイオスとポチの勝利を確信した顔が俺の目の前にあった。
その刃が俺の首に、その拳が俺の心臓に届く!
「メルメル~パーンチ!!!」
勇ましい声とともにメルが右拳を目前の敵に向かって振った。
その途端、空気が、いや空間そのものが揺れた!
――ドッガアアアアアアン!!!!!
聞いたこともない大音量とともにケイオスとポチの体が前方に吹き飛んでいった!
いや、吹き飛ぶなんてレベルじゃない。
2人の体はあっという間に空の彼方へと運ばれ、豆粒のように小さくなり消えていった。
消えた途端に、キラリーンという音が空の向こうから聞こえた。
2人は星になったようだ。
「巨人君の相手は久しぶりだなぁ」
メルは今度は右腕を下ろすと、その腕を思いっきり振り上げた。
「いくぞぉ! メルメル~ブレード!!!」
――スッパアアアアアアン!!!!!
再び空間が揺れた。
いや、今度は斬れた!
メルが腕を振り上げた先にある巨人が真っ二つに裂けた!
城のような巨躯が一瞬で二つに割れた。
断末魔を上げる暇もなく、炎の巨人の体が轟音とともに大地に倒れる。
俺の頭上に再び青空が戻った。
死した巨人は次第にその姿を消していった。
異界に戻ったのだ。
「なっ!? えっえええええええ!?」
消え失せた巨人の跡には、哀れなほど狼狽するベルーナがいた。
「いくら聖剣とはいえ、強すぎるでしょう!!!!」
それな。
俺も思った。