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とある竜騎士の願い

 翌朝、俺とリューイは聖なる山に向けて出発した。

 王都から山までは徒歩では半日かかるが、ドラゴンに乗れば僅かの時間だという。

 リューイは愛竜に乗って飛び、俺はその隣をスキル「飛翔」でぶっ飛んだ。

 

 ちなみに、メルとクレン、キョウは城に残してきた。

 3人とも強行に行きたがったが、俺が「リューイに迷惑が掛かる」と何度も強調すると渋々に従った。

 特に、クレンは俺と離れることにかなり動揺していた。

 だが、最近のクレンは、俺がいなくてもメルとキョウがそばにいれば至極平穏なので大丈夫だろう。


「半日で戻る」

 そう言って、俺とリューイは城を出た。


 リューイの白いドラゴンとレースをしたり、S字飛行をしたりして遊びながら飛んでいると、すぐに聖なる山が近づいてきた。

 

 聖なる山は、円すい形の大きな独立峰だった。

 周囲にある山々に比べ、3倍の高さを誇っている。

 地表は白と茶色の岩肌に覆われ、草木は1本も生えていない。


 火口の手前でリューイが下降したので、俺もそれに従う。

 山に降り立ったリューイは、手の合図を愛竜に送り、竜だけを空に飛び立たせた。

 白い竜は、主人を残して城の方へと戻っていく。

 

「竜がいないと帰れないじゃないか」

「大丈夫。竜笛を吹けば、迎えに飛んできてくれるんだ」

 竜笛は竜騎士が竜との連絡手段に使う物で、素材は竜の骨だという。


「さあ、行こうか」

 リューイの先導で俺たちは火口に向かって歩き出した。

 すでに周囲には上位竜が発しているビリビリとした気配が漂っている。


 火口のへりにたどり着き、広大な火口をのぞく。

 その広さは小さな村がすっぽりと収まりそうなほどだった。


 火口の中央には噴火口があり、その穴から巨大な白い竜が顔だけをのぞかせてた。

 デカい。

 顔だけで村の教会ぐらいの大きさがある。

 

 その黒い両眼は、俺とリューイに向けられていた。

 明らかに怒りを持って、こちらを睨みつけている。

 正直、背筋がゾクリとした。

 

 スキル「能力値開示」で上位竜の戦闘力を測ってみる。

 ――5019。

 くっ、相当の強さだ。

 

 だが、戦闘力7897もある俺の敵ではなかったな!

 ガハハハハハ。

 あー、よかった。安心した。


 内心で胸をなで下ろした俺の隣で、リューイが少し緊張した様子で声を張り上げた。  

「上位竜よ、光の守護竜よ。我はベルド国の王族リューイなり」

 

 その声に応え、上位竜が地鳴りのようなうなり声を上げた。

 続いて、上位竜は人間の言葉で話しだした。

 「我が眠りを邪魔してまで訪れた理由はなんだ。隣の者は誰だ。返答によっては殺すぞ」


「魔王と竜族の関係について訪ねたいことがある。そして、隣にいるのは勇者だ」

「魔王……勇者……よかろう。我が目前もくぜんまで来い」

 上位竜はそう言うと、噴火口からゆっくりと這い出て来た。

 

 全身が露わになると、そのデカさがよりきわだった。

 聖地で戦った炎の巨人の2倍はあるだろう。


 リューイと俺は火口のへりから斜面を下り、上位竜の目の前まで歩み寄った。

 近くで上位竜を見上げると、全身を覆う白い鱗の1枚の大きさは馬1頭分ほどもあった。


 リューイは上位竜を前に、何かを決意したように大きく息を吐いた。

 その横顔は、怖いぐらいに冷静だった。

 いつものリューイらしい笑みが消え去っている。


 リューイは上位竜に向かって話し掛けた。

「上位竜よ、光の守護竜よ。僕の望みを叶えてほしい」


 その声を受けた白い塊が、熱風のごとき鼻息をもらしながら口を開く。

 無数に並ぶ巨大な牙の向こう側、真っ赤な巨大な谷の底から声が響いてくる。


「王の子よ、リューイよ。我に何を求める?」

「僕は……」

 リューイは言った。 


「僕は勇者の死を求める」


 はい?

 聞き間違いかな?

 それとも、上位竜との駆け引きのテクニック的な?

 そ、そうだよね……?


「我、人の争いには関わらず。王の子よ、去るべし」

「いや、お前は僕の言うことを聞くしかないんだ」


 リューイは鎧の胸当ての隙間から、何かを引っ張り出した。

 それは、手の平と同じぐらいの大きさで、金色に輝いていた。

 1枚の鱗のように見える。

 

 その金色の鱗を見て、上位竜が明らかに動揺した。

「そ、その鱗は!」

「竜王の逆鱗げきりんだ」

 

 リューイはそう言うと、上位竜の頭上に飛び乗った。

 驚いたことに気位きぐらいの高い上位竜がそれを許した。

 まるで、竜騎士に従う下位竜のごとくだ。


 ここまで来て、ようやく俺は理解した。

 さっきのリューイの発言は駆け引きの一環ではなく、本音なのだ。

 リューイは上位竜を使って、俺を殺す気だ。


「リューイ。俺を殺すために、わざわざ火口まで連れてきたのかい?」

「そうだ。貴様を1人にする必要があった。聖剣たちが一緒では、僕の希望は叶わないから」


 リューイは冷たい目を俺に向け、話し続ける。

「この竜王の逆鱗は、全ての竜族を意のままに操れる能力がある」


「……つまり?」

「つまり、上位竜と、そして『虚空の竜騎士』が力を合わせて貴様を殺すのだ!」


 リューイと上位竜の戦闘力の合計は……。

 ――9180。

 俺の戦闘力を余裕で上回っている。


 リューイは竜王の逆鱗を胸にしまうと、腰の剣を抜いて俺に向けた。

「学院生の頃からずっと思っていたよ。貴様が死ねば、僕が勇者だ!」


「その言葉、学院生の時に聞きたかったよ……」

 俺はむなしさと悲しみとともに、抜刀した。

 それを合図に、上位竜の巨大な口が俺に向かって襲いかかってきた。

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