王都入城
クレンに改めて注意をした後、4人でリューイからドラゴンのうんちくを聞いた。
ベルド竜騎士団のドラゴンは全て光属性の白竜であることなどを教えてもらう。
そうやって博識を高めていると、王都の方から2匹の白いドラゴンが近づいてくるのが見えた。
「おっ、来たな」
リューイが満足げに空を見つめた。
「あれも竜騎士か?」
俺の問いにリューイは頷く。
「僕の部下だ。アランたちを運ぶために、少し遅れて城を出るように伝えておいたんだ」
「俺たちを乗せる? 竜の背に乗せてくれるのか?」
「それもできるけど、4人一緒の方がいいと思ってね」
リューイの思わせぶりなウインクの意味は、2匹のドラゴンが少し離れた場所に着陸してから詳しく分かった。
2匹のドラゴンのそばに行くと、ドラゴンの間には一つの大きなかごがあった。
かごの高さは人の背丈の3分の2程度で、中の広さは人間なら10人ほどは入れそうだった。
かごの両端から太い皮のベルトが2本ずつ左右に伸びている。
その太いベルトはそれぞれが、かごの左右にいるドラゴンの胴体にしっかりと固定されていた。
ドラゴン2匹が飛べば、ベルトがかごをひっぱり、かごが宙づりになる仕組みだ。
「リューイ。もしかして、このかごに乗れってことか?」
「ご名答。さあ、お嬢さんたち、どうぞお乗りください」
リューイがかごに付いている扉を開けると、3人娘が『わ~い』と大喜びで駆け入った。
かごの中には、豪華な椅子が何脚も固定されている。
メルたちは、その椅子に座ったり、左右のドラゴンに手を振ったりと大はしゃぎだ。
「う~ん。これ、途中で落ちない?」
かごを前に心配してリューイの方を見ると、バーンと肩を叩かれた。
「勇者アランが臆したのかい。我が竜騎士団を信じてくれ」
「そりゃあ、大陸一のベルド竜騎士団なら安心なんだろうけど……」
ドラゴンの機動性を生かした攻撃力、情報伝達力、そして輸送力がベルドを大陸有数の強国に押し上げている。
大きなかごを使った輸送はベルドお得意の方法だ。
しかし、スキル「飛翔」で空を飛ぶことに慣れているせいか、自分以外の何かに命を預けて飛ぶのが少しためらわれた。
「国賓はドラゴンで迎えるのが我が国の風習だ。乗ってもらわねば困るぞ」
リューイにいたずらっぽく笑いかけられたので、乗るしかなくなった。
「お手やわらかに」
かごに入って、左右の竜騎士を見上げると、右手の親指をビシッと立てられた。
その行為、竜騎士の間で流行ってるのかな。
「では、出発!」
リューイの勇ましい声を受け、かごの左右のドラゴンが大きな翼を開いた。
その翼が河岸段丘の下から吹き上がる風を受け、ドラゴンの巨体をふわりと浮き上がらせる。
なるほど、標高差がある場所に王都を造ったのはこの風が理由か。
竜騎士団を母体とする国としては、常に風が吹き上がってくるこの一帯が国家に適しているのだ。
左右のドラゴンがゆっくりと羽ばたくたびに、一緒にかごが引き上げられていく。
「わ~、飛んだ飛んだ!」
メルとクレン、キョウはかごの外に身を乗り出さんばかりの勢いだ。
キョウは身長がかごの高さギリギリなので、背伸びをして何とか顔だけ出している。
一方の俺は、真ん中にある椅子に腰かけて、ここから動かないと決めた。
俺たちを乗せたかごは、左右のドラゴンたちに合わせてどんどんと高度を上げる。
ついには周囲の山々の稜線が見えなくなった。
おい、高すぎるだろ。
そう思った途端、左右のドラゴンが前方へと進む向きを変えた。
皮のベルトによってかごが引っ張られ、ドラゴンの後を追い掛けるように前に前に進んでいく。
山々の景色がどんどんと後ろに飛んでいく。
「速い、速い!」
メルたちのはしゃぐ声の向こう側、青い空のただ中にリューイの白いドラゴンが飛んでいた。
俺がリューイの姿をドラゴンの背に探すと、それを分かっているかのように、こちらに向かって右手の親指を立てられた。
それ、流行ってるんだね。
リューイのドラゴンは俺たちを難なく追い抜く。
その後は、リューイを先頭に、2匹のドラゴンが続いて飛んだ。
三角形の隊列だ。
隊列を組む3匹のドラゴンの飛行速度は一定で、少しの乱れもない。
かなり訓練しないとできない芸当だと素人でも分かった。
リューイたちの技術の高さを実感したことで、かごへの不安感が一気に和らぐ。
「大きなお城だね」
メルの声に顔を上げると、ベルドの王都の象徴である巨大な白い城壁が目前に迫っていた。
城壁の上に白いドラゴンたちが整然と並んでいた。
俺たちを中心に、左右に100体ずついったところだ。
ドラゴンたちの横には、白い甲冑に身をつつんだ竜騎士たちが立っている。
さらには、白竜とランスの絵を合わせたベルド竜騎士団の青い旗が無数にはためいていた。
「豪勢なお出迎えだな」
俺は椅子から立ち上がり、かごの前方へと身を移した。
すると、リューイたちのドラゴンの飛行速度がグッと下がった。
俺たちがゆっくりと城壁の上を通過する直前、
――パーンパカパーン
城壁からラッパの音が高らかに鳴り響いた。
それを合図に眼下に居並ぶ竜騎士たちが、一斉に右手の指先を額に当てた。
挙手敬礼だ。
竜騎士団が最高の礼を尽くした出迎えをしてくれていると分かった。
「しっかりと返礼しないと失礼だな」
俺は竜騎士たちと同様に挙手敬礼をして、居並ぶ竜騎士たちに向かって会釈をした。
「メルもやる~」
俺の仕草を見たメルたちもニコニコの笑顔で同様の挙手敬礼で竜騎士たちに応えた。




