我慢できませんっ!
「いいか、その恐怖の大魔王なんちゃらの魔法は禁止だ。絶対に唱えるな!」
ビシッと指をさして念を押した。
「でも、好きなことをしろとおっしゃいましたよ」
下ネタ女が小首を傾げた。
「その魔法は禁止!」
「なら、大地を腐らせる魔法は?」
「禁止」
「全生物の脳みそを腐らせる魔法は?」
「禁止」
「脳みそは元気だけど、体が腐る魔法は?」
「禁止」
「脳みそも体も腐る魔法は?」
「ゾンビ! さっきから腐らせてばっかだな!!」
俺の全否定を受け、下ネタ女は頭を抱えてしまった。
「で、でも、私は破壊と殲滅と腐敗とか暗黒で破滅的で猟奇系な魔法を唱えたくなるんです」
「我慢しなさい」
「えー!」
「えー、じゃない!」
「でも、私……我慢できない理由があるんです」
下ネタ女が俺を上目使いに見た。
「我が君のそばにいれば解決するんですけど…」
そして、ぽってりとした上唇をしっとりとした舌で舐めた。
こいつ、駆け引きを持ちかけてきやがった。
いや、脅迫か。
世界の破滅か、俺への従属かを選べという訳か。
だが、どうしてそんなに俺に従属したいんだ?
何が狙いだ?
「まずは、その理由とやらを聞こうか……」
「理由は……」
下ネタ女が空に吠えた。
「私、性欲が高まると世界を破滅させたくなるんです!!!!」
返事などできなかった。
その必要を感じなかった。
変態だ。
やっぱり、こいつは放っておこう。
「さあ、メル、2人だけで行くぞ。ヒルダさんを介抱して、ケイオスをぶっ飛ばそう」
「待って!待って!待ってくださいぃぃぃぃ!!」
下ネタ女が俺の腰にすがってきた。
だから、おっぱ……胸を押しつけるんじゃない!
「お願いしますぅ! 一緒に連れて行ってくださいぃぃぃぃ!!」
「遠慮します」
俺、即否定。
「そこをなんとか!」
「なりません」
「夜とぎは365日しますから!」
「1日たりともいりません」
「でも、おそばにいないと、世界破滅の魔法を唱えるのを我慢できそうにありませんっ!」
「どういう意味だよ」
下ネタ女が懇願するように俺を見上げた。
「我が君のおそばにいると、とっても幸せな気持ちになって性欲が満たされるんです! 世界の破滅なんてどうでもよくなる自分がいるんですぅ!」
どんだけ変態な属性なんだ。
しかし、俺のそばに居られないと世界を滅ぼすと言われると、むげについてくるなとも言えないな。
「さて、どうしたもんかな」
「いいじゃん」
困っている俺を尻目に、メルがあっけらかんとした声を上げた。
「この人も一緒に連れて行ってあげようよ」
「よいのですか?」
下ネタ女が歓喜の声を上げた。




