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私の好きなこと

「こらっあああ! ご主人様はうぶなんだから、おっぱいとか言ったらダメなんだよ!」

 メルが俺と下ネタ女の間に入って、ガルルルっと牙をむいた。


 しかし、下ネタ女は動じない。

「わぁ! なんて、かわいい人なんでしょう!」

 そう言って、にっこりとほほ笑むと、ごく自然な感じでメルの手を取った。


「ご主人様! メルのことかわいいだって! この人いい人だよ!」

 牙を収めたメルがニコニコの笑顔で俺を振り返った。

 お前、それはチョロ過ぎるだろう。


「メルさんという名なのですね。メルさんも我が君の臣下なのですか?」

「臣下? よく分かんないけど、メルはご主人様のものだよ」

「我が君のもの……」

 下ネタ女が、にまーとした笑みを俺に向けた。


「こんなにかわいい人に、あんなことやこんなことをしてものにするなんてっ! もうっ、さすが我が君です」

「してねーよ!!」 


「今度、あんなことやこんなことをする時は、私も入れて3人でいたしましょうね」

「だから、しねーよ!!」


「ああっ、我が君だけでなく、メルさんともあんなことやこんなことをするなんて、想像だけで震えます」

「俺のツッコミを聞き受けろや!」


 すると、下ネタ女が頬を赤らめて身をよじった。

「……もっと突っ込んでくださいませ」

「もう絶対に何も言わねーからな!」


 ダメだ、こいつはポンコツが過ぎる。

 関わらない方がいい。


「メル、ヒルダさんの無事を確認しよう。その後に、ケイオスと魔剣をぶっ飛ばして終わりにするぞ」

 俺は左手でメルの手を取って、ヒルダさんの元へ向かおうとした。


 すると、右の二の腕にムニュとした柔らかくて弾力のある物体が押しつけられた。

 その感触の方を恐る恐る見ると、下ネタ女が俺の腕に絡み付き、その豊満な胸を押し付けていた。


「な、何をやってるんだよ!?」

「メルさんが左側なら、私は右側をとっぴです」

 にっこりとほほ笑む下ネタ女を慌てて振りほどいた。


「とっぴされるいわれはない!」

「ん? 右手が不自由になっても、もう1人の夜は訪れないから大丈夫ですよ」

「ご主人様、さっきからこの人が言っている意味が分からないんだけど?」

「分からんでいい!」


 俺は下ネタ女に向かって、着いてくるな、そもそも君主と臣下の関係ではないと明確に伝えた。


「つまり我が君は、私をおそばにはべらすつもりはないと言うのですか」

「そうだ。好きな所に行って、好きなことをやって、できれば1人でひっそり暮らしてくれ」

「好きなことですかぁ……」

 

 下ネタ女はあごに手をやって考え込む素振りをした。

 そして、おもむろに「●●××▼■……」と早口でしゃべりだした。

 途端に空が暗転し、紅蓮の月が現れた!!


「だぁあああああ! ダメ絶対!!」

 慌てて下ネタ女の口を右手でふさいだ。

「ふぐぅ!」

 下ネタ女の魔法詠唱が止まった途端、青天に戻り、紅蓮の月が消えた。

 あっぶねー!


「その魔法は禁止だ!」

 そう一喝してから下ネタ女の口から右手を離した。

「くはぁ!」

 呼吸が止まって苦しかったのか、下ネタ女は頬を上気させて「ぜぇ、ぜぇ……」と喘いでいる。


 ちょっと、強く押さえすぎたかな。

「悪かった。慌てて力を入れすぎたよ」

 

 すると、下ネタ女は目をとろけさせながらほほ笑んだ。

「我が君は窒息プレイがお好きなんですね!」

「ちげーよ!!」

「さっきからメルだけが意味分かんないっ!」

「分かんなくていいんだよ!」


 メルが「ふーんだ!」と言ってそっぽを向いたが、これはしばらく放っておく。

 その代わりに、下ネタ女に魔法を唱えないように言い聞かせると決めた。

 世界を守るために。

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