表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/78

発動

「××▼▼▼▼■■×……」

 ヒルダさんの魔法詠唱が最終段階に入った感じがした。


 その時、フッと一瞬で空が暗転した。

 さっきまでの青天が嘘のように、世界が闇に包まれる。


「空を見て!」

 メルの声で天を仰ぐ。

 

 そこには紅蓮の炎に包まれた月が浮かんでいた。

 あんな月は見たことがない!


 何より恐怖感が募ったのは、紅蓮の月がどんどんと大きさを増していくことだ。

 もしかして、あれが世界の6分の1の大きさの隕石なのか?

 大きさが増しているってことは、この世界に徐々に近づいてるってことか?

 世界滅亡の危機に五臓六腑が震えた。


「メル! 魔法を止める他の方法はないのか?」

 焦ってメルの両肩をつかんで激しく揺らした。


「伝説の聖剣なんだから、なんかこうズババアーンって感じで解決できるだろ!?」

「私はできないけど、ご主人様ならできるよ」

 

 メルが慌てふためく俺に向かって、優しくほほ笑んだ。

 その笑顔を見て、心が落ち着いていく自分に気付いた。


「俺にならできる?」

「うん。だって、ご主人様は勇者様だもん」

 

 メルは俺の両肩に手を置いた。

 まるで励ますように。


「ご主人様にしかできないことがあるでしょ?」

「俺にしかできないこと?」

 メルの翡翠色の瞳を見つめて気付いた。


 ある。

 俺にしかできないことが。


 紅蓮の月はすでに天の半分を覆うほどに大きくなっている。

 その空からは熱風が大地に吹き付け、世界の温度がぐんぐんと上昇している。

 空気が震え、滅亡を予感した世界の代わりのように悲しげに唸りだした。


 迷っている暇はない。

 俺はヒルダさんに向き合い、禁忌の魔道書に向かって右手をかざす。 


 全身全霊を込めてあのスキルを発動させる。


「擬人化!!!!!!!!!」


 途端に魔道書が茜色に輝きだした。

 まるで星の爆発のように強力な光。

 

 光の奥で、ヒルダさんが気を失ったように倒れ込むのが見えた。

 その手からは禁忌の魔道書は離れていた。

 

 ……よかった。 

 ヒルダさんの無事を確認した後、まぶしさに耐えきれずに顔を背け、目をつぶった。

 そして、光が収まったと思った瞬間……。


 ――デロデロデロデロデロデンデロン。


 天空から不吉な音が響いた。

 うわー、あきらかにやっちまった感が満載の音じゃん。


 目を開け、音が聞こえてきた空を見上げる。

 そこは暗闇ではなく青空で、紅蓮の月ではなく太陽が浮かんでいた。

 よしっ、世界の滅亡は防げたようだな。

 

 ほっとして顔を戻すと、前方に10代後半に見える女の子がいた。


 首元で切りそろえられた明るい栗毛。黒く大きな瞳。意志の強そうなキリッとした眉。

 白い修道服を着ているが、その裾は通常よりもとても短く、むっちりとした太ももが完全に露わになっている。

 露わと言えば……襟元が大きく開いてるので、胸元が見える。

 そこには、大きな胸の谷間があった。


 単刀直入に言えば、スゴくエロい!!


 恥ずかしくて顔を赤らめていると、女の子と目が合った。

 俺の視線を受けた女の子が同じように頬を染めた。


 そして、ぽってりとした唇を開いた。


「視姦ですね?」

「はい?」


「我が君は私を見ることで性的興奮を覚えつつ、私を辱めることで私の性的欲求を刺激していますね?」

「だから、はい?」


「しょうがないですね~。とりあえず、おっぱい触ります?」

「とりあえず死ね」

 

 こいつ、息を吐くように下ネタを言いやがる!

 伝説のアイテムってのはみんなポンコツなのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ