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仇敵?再来

 大聖堂の外に出ると、いつものバスターソードを担いだケイオスがドームの屋根の中央で仁王立ちしていた。

 褐色の肌、精悍な顔、青色の髪、漆黒の鎧。

 いつも通りの様子で変わったところは見受けられない。

 メルに派手にぶっ飛ばされた割りにはけが一つしてないようだ。


「驚いたな。本当に生きてやがる」

「ケイオス君は丈夫なんだね」

 俺の左隣でメルが感心したように頷いた。


 ヒルダさんは信徒と神官たちを避難させに行ったので、ここにはいない。

 避難の時間を稼ぐためにもケイオスにいろいろと聞いてみるか。


「お前、どうして無事なんだ。メルにあれだけ派手にぶっ飛ばされたのに」

「クッハハハハ! すべては魔王様のおかげだ!」


「どういう意味だ?」

「その女から、とんでもねー衝撃波を受けて、ぶっ飛ばされながら俺の体はボロボロと崩れて行ったんだ」

 ケイオスは遠くを見る目で噛みしめるように話す。

「俺の体と魂はあっと言う間に塵芥になり、まさに消滅寸前だったが、まだ頭が残っていたポチが転移魔法を唱え、魔王様の元へ瞬間移動。魔王様が俺たちに超絶最強回復魔法をかけてくださったので、命拾いしたって訳だ。まあ、復活まで半日はかかったけどな」


 なるほど、あの時にキラリと光った原因は、転移魔法の輝きだったということか。

 俺たちということは、ポチ将軍も死んではいないようだ。

 

 強力な回復魔法は、俺やヒルダさんも使える。

 しかし、わずかばかりの身体の欠片から全身を復活させるほどの魔法は使えない。

 やはり魔王はとんでもない強さのようだ。 


 しかし、やられてもやられても復活させられて、再び戦闘に行かされるのはキツいな。

 ケイオスが少し気の毒でもある。

 ちゃんと休暇と給料はもらってるのかな。


「それで、休暇も取らずに、今日はどんな要件だ」

 十中八九、禁忌の魔道書を奪いに来たとは思うが、念のために確認しておく。

「禁忌の魔道書をいただきに来たぜ!」

 ほら、やっぱりな。


「あと、貴重な休暇をアランたんのために使うのは、アランマニアの責務だ!」

「使わなくていいから。存分に家で休んでいてくれ」

「心配してくれて、ありがとう!」

 いや、心配してねーし、ウザイだけだし。

 

「それと……アランに報告がある」

 ケイオスはなぜか誇らしげに胸を張った。

「このケイオス。勇者アラン討伐隊の隊長に任命された」

 胸に手を当てるケイオス。


「ん? 前からそうだろ」

 たった1人の討伐隊兼隊長というケイオスに相応しい閑職だ。


「ちげーだろ! ほら、変わってんじゃん!」

「何が?」


「名前だよ!」

「まったく分からん」


「ほら、アランたんの前に勇者って付いたんだよ!」

「で?」


「超絶かっけー!!!」

 ケイオスが突然に感涙した。

「勇者アランって響きをおかずにパンが食える! しかも、無制限におかわりするレベルに! アランたん、俺のために勇者になってくれてありがとう! そして、この感激最高潮のまま死ね!」

 うわー、キモさとサイコさが増してる。


「やっぱりケイオス君ってアホなんだね」

 メルがやはり感心したように頷きながら、手にした焼き菓子をくわえた。

 

 それ、持ってきたのかよ。

 あと、まだ食うのかよ。

 避難の時間は十分に稼いだから、これから戦闘なんだけど。

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