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牛乳を手に入れろ

 そうと決まれば、まずは材料調達だ。

 ソフトクリームを作るには、牛の乳が必要だが、ここにはない。

 しかし、ないのなら出せばいい。


「おい、巨乳ダークエルフ!」

「ベルーナって呼びなさいよ」


「乳を出せ!」

「はい?」


「乳を出せって言ってるんだ!」

「へ、変態勇者!」

 

 ベルーナが両手で豊満な乳を抑えると、恐怖に歪んだ顔で後ずさりした。

 さらに、メルまでもが俺から離れ、思いっきり引いた表情をしている。

 なるほど、俺の真意が伝わっていないようだ。


「お前の乳じゃない。牛だ」

「牛?」


「乳牛をここに召喚しろと言っている。その牛から乳を採って、ソフトクリームの原料にする」

「あー、そういう意味ね。てっきり、私の……」

「メルはご主人様が変態じゃなくて安心した!」

 ベルーナは安堵の息を吐き、メルはまたニコニコの笑顔で俺に飛び付いてきた。

 

 ふっ、神の子と称される俺がそんなゲスな思考をするものか。

 というか、女の人に乳を見せろなんて言える度胸があるわけないだろうが。


「じゃあ、乳牛を召喚するわ……」

 ベルーナが大地に向かって両手を突き出した。

「言っとくけど、私ほどの召喚士が乳牛を召喚するなんて、本当はあり得ないんだね! これって結構な屈辱なんだからね!」

 そう半べそをかきながら、ベルーナはエルフ語で召喚呪文を唱えだした。

 

 俺はスキル「言語」でこの世界のあらゆる言葉をマスターしているが、ベルーナの呪文は理解できなかった。

 古代エルフ語だろうか。 


 しばらくすると、ベルーナが手をかざす大地に魔方陣が現れた。

 その魔の紋様が回転しながら、まばゆく光り出す。

 しばらくすると、魔方陣の中から大きな雌牛が出てきた。

 

 はち切れんばかりの乳房、隆々とした筋肉、あらゆる物を粉砕しそうな立派なひづめ……。 

 大きさは俺の身長の5倍はある。


「わー、立派な牛さんだね。おーい、こんにちは~」

 メルが嬉しそうに雌牛の顔を見上げ、手を振った。


「ご主人様、おいしい牛乳が採れそうだね」

「……そうかな」

「このベルーナ、メル様に喜んでいただき恐悦至極にございます」

 ベルーナが誇らしげに胸を張った。


「迷宮の奥から召喚したのよ。ほら、アホ勇者。この私に感謝しなさい」

「……絶対にしない」

 ドヤ顔のベルーナに向かって、最大級のがっかり顔を向けてやった。


「なっ、こんなに立派な雌牛になんの不満があるのよ!」

「確かに立派だけども!」


「乳房だってこんなに大きいのよ!」

「確かに大きいけれども!」


「じゃあ、いいじゃない!」

「牛じゃねーし!!!」


「牛じゃん!」

「これはミノタウルスじゃ!」


 魔方陣の上に現れたのはミノタウルスの雌だった。

 頭は牛、首より下は人間という魔獣だ。


「ミノタウルスだって牛乳が採れるのよ! ほら、こうやって」

 ベルーナがミノタウルス(雌)の乳に手をかけようとした。

「だああああ!!やめろ!!それ以上はやめろ!」

「なんでよ!」

「人類側でいろいろと問題があるんだよ!」


 結局、ミノタウルス(雌)には迷宮にお戻りいただいた。

 そして、俺の監督指導の下、今度は普通の乳牛を召喚させた。

 ついでに、ボウルとかスプーンとか調理に必要な道具も召喚で取り寄せさせた。

 注文すれば何でも届く召喚術。

 とっても便利だ。


「くっ、私はアマゾンじゃない……」

 ベルーナが意味不明な言葉を吐き、悔し泣きをした。

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