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「えっと…。クロウくん、アタシのどんなところを気に入ってくれたのかな? そこ、聞いてなかったから」
『あっ、そうだったよね。ゴメン。オレ、自分のことでいっぱいで。でもULALAさんのこと、真剣だから! ひっ一目惚れだったけど、本気で好きなんだ!』
―ウソ。だったらアタシのウソを、見抜けたはずだ。
そんな冷めた考えをしながら、アタシは少し考えた。
元々芸能界に長くいるつもりはない。
若く可愛いウチに、ちょっと稼ぎたかっただけ。
自分が1番輝いていた時期を、芸能界という記録に残したいと思ったのが、始まりだった。
だから…別に芸能人と付き合うことも、そのうちの1つと考えれば良いのかも。
別れる時が、アタシが芸能界を引退する時だと考えれば…そう悪くはないかもしれない。
彼は悪い人では無さそうだし。
…逆にアタシの方が、悪い人だ。
「…じゃあ、アタシで良いなら、お願いするわ」
『えっ? 本当?』
「うん、これからよろしくね♪ クロウくん」
『い…やったぁあー!』
大声は予想できたので、耳から離してた。
その後、2時間ばかり話をして、彼とは電話を切った。
そしてすぐに真希さんのケータイに電話する。
彼女はとても優秀な人で、アタシの連絡にはすぐ応じてくれる。
『うらら、どうしたの? こんな時間に』
「うん、真希さん。今までクロウくんと話してた」
『そう? それで決めたの?』
「ええ、お付き合いすることにしたわ。社長にそう言っておいて」
『分かったわ。それじゃあ今日はゆっくりお休み。明日も朝、早いから』
「了解。おやすみなさい」
『おやすみ』
真希さんのこういうところも良いな。楽で。
「さて、と」
アタシは欠伸をしながら立ち上がった。
明日からは今日以上に忙しい。早く休もう。
―そして翌日。
「あっちゃー☆」
事務所に呼び出されたアタシは、会議室で今朝の朝刊&週刊誌を広げて見せられた。
内容はどれも同じ、クロウとのことだ。
「事務所側としての返事はマスコミにはもう出してあるから。クロウくんの事務所もOKとのことだしね」
「ちゃっちゃっと話が進んだようで…」
「向こうのマネージャーが優秀だったのよ。どうも前々からうららちゃんに気があること、クロウくんがもらしていたみたいで、準備はしていたみたい」
「手腕なことで」
アタシが皮肉まじりに言うと、真希さんは困り顔で肩を竦めた。
「まっ、これで交際が公になったわ。スタートも悪く無いし、良い関係を築いてね」
「はいはい」
…ゴメンね、真希さん。
アタシ、そんなに可愛い性格していないんだ。
「ところで初デートだけど、向こうのマネージャーと話し合った結果、ヒーローパークでどう?」
「…そういうのって、本人達が決めることじゃないの?」
「はじめのうちはどこ行ってもマスコミに付かれるわよ。それなら行き場所安全な所に行った方が、心構えもできていいじゃない」
ヒーローパークというのは、いわゆる芸能人御用達の遊園地だ。
芸能人か、その関係者を重宝される。
もちろん一般人も入れるけど、結構厳しいところらしい。
なので芸能人がワラワラいる。