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U・LA・LA!  作者: mimuka
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「はぁ~い! みなさーん、こんばんはぁ」


観客席に向かって笑顔と声をかけると、わぁっ!と歓声が上がる。


「さて、ULALAちゃん。今回の新曲は甘く切ないラブソングらしいですね? そういう恋愛の経験があるんですか?」


「それは秘密です♪ でもラブソングでも、ロック調ですからねぇ。甘い恋愛ばかり、しているワケではないですよ?」


「おおっと、問題発言! 厳しい恋愛のご経験が?」


「それはご想像にお任せします」


あくまでもニコニコ笑顔を貫き通すのが大事。


司会者も慣れたもので、笑顔で返す。


「それでは秘密主義のULALAちゃんに歌ってもらいましょう!」


「はーい! 行って来ます」


スタジオの準備ができたらしい。


―今回の新曲は、アニメのOPの曲に採用された歌。


さっき言った通り、ロック調でありながら、歌詞は甘くて切ない。


…そんな経験は無いけどね。


それでも演技に関しては自信がある。それは歌唱力にも通じることだ。


だから精一杯歌える。


歌うのは結構好き。演じると言うより、気持ちを吐き出せる感じが好きだから―。


一通り歌い終えると、頭を下げる。


「ULALAちゃんでしたー! ありがとうございました」


司会者の声で、再び向こう側に戻る。


…と、何だか視線を感じる。


司会者がいる所のセットには、他の歌手達が待機している。


みんな笑顔で拍手をしてくれているのに、1人だけ、険しい顔でアタシを見ている。


彼の名は確か…『クロウ』くん。


まだ23歳ながらも、さまざまなところで活躍をしている。


それこそモデルから始まり、ドラマ・映画・歌手などいろいろ。


彼もまた、マルチタイプのタレントだ。


ただ…彼はいわゆるおバカキャラ、だ。


大人気クイズ番組のレギュラーで、毎回珍回答を出している。


だから顔はビジュアル系の美形なのに、性格が素直でおバカキャラなだけに、いろいろな人から愛されるキャラでもある。


アタシとはある意味、逆な人間だな。


アタシは全てを演じている。キャラを演じることこそが、仕事だと思っているから…。


純粋に芸能界に憧れて入ってきた彼とはまた違う。


まっ、いっか。どうせ長くこの世界にいるつもりはないし。


彼に向かって、あくまでも笑顔を浮かべてみせる。


「さて、次はクロウくんに歌ってもらいます」


アタシの次は、彼の出番だ。


すれ違いざま、彼はアタシに向かって何か言いたそうに口を開いたけれど、すぐに閉じた。


何だろう? 何か話があったのかな?


でも彼はそのままセットへ行ってしまった。


そして熱唱する。熱く、切ないラブバラードを。


思わず胸が熱くなる…。


観客達もうっとりとしている。そのぐらい熱くて切なくて、そして愛おしい。


一曲熱唱した彼は、すぐにこっちに来た。


この後、司会者との会話を…するハズなのに、何故かアタシの元へ来た。


「うっULALAさん!」


「はっはい?」


思わずビクッと構える。


周囲にいる歌手達も、何事かと目を丸くしている。


「オレ、キミの事が好きです! 大好きですっ! 結婚を前提に、お付き合いしてくださいっ!」


そう言って手を差し出してきた。


「えっ、えぇ~?」


観客席からは、歓声とも悲鳴ともつかない声が上がる。


ひっ悲鳴を上げたいのはアタシの方だぁ~!


思わず司会者に視線を向けると、ハッと我に返った。


「そっそれじゃあCMにいきます!」


すぐさまCMに移る。


「コラッ、クロウ!」


慌てたクロウのマネージャーが駆け寄ってきて、彼を羽交い絞めにした。


「いきなり何を言い出すんだっ! この馬鹿っ!」


「だっだってぇ」


「だってじゃない! とりあえず、こっち来い!」


…彼はそのままズルズルと引っ張られ、スタジオ、退出。


あって良いのか? こんなこと。


「ULALAちゃん…。大丈夫?」


近くにいた女の子のアイドルに声をかけられ、アタシも我に返った。


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