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剣物語  作者: 渋谷かな
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性格

「どうせ僕なんか。」

 人間の性格は、そう簡単に変わるものではない。夢見叶は、自分に自信の無い性格だった。自分へのコンプレックスが強ければ強い程、自分と他人を比べる性格であればある程、自分の心の殻に閉じこもってしまう。

「よく眠れたな? 新しい枕やマットレスのおかげかな。最近、何も変わらない同じ毎日の繰り返しなのに、何かが違って見えるような。」

 朝、僕は目が覚める。自分の部屋で、自分のベッドで。でも、でも何だか、以前に比べれば清々しかった。

「ああ!? まずい!? 遅刻する!?」

 ふと時計を見ると、もう朝食を食べなければいけない時間になっていた。急がなければ学校に遅れてしまう。

「あわわわわ!?」

 僕はパジャマを制服に着替えて、家族の待つ食卓へ向かう。


「お、おはようございます。」

「おはよう。叶。」

「叶さん、寝坊ですか? いつになったら時間通りに起きてこれるのやら。あなたは、もう高校生になったんですからね。いい加減にしっかりしていただきませんと。」

「すいません。」

 父親の夢見勝と母の夢見杉。父は病院や学校を経営している夢見グループの社長である。母は、小言ばかりで毎日、息子である僕をいじめている。偉大な父親のプレッシャーを受けたというよりも、母のいじめに僕が委縮している、または「どうせ文句を言われるなら。」と何をしても同じだろうと、人生を諦めたら、今の自分になった。正確には、今までの自分になった、というべきか。

「まあまあ、お母様。最近は、叶も赤点を取らなくなってきたわけですし、それに朝食を食べさせないと、学校に遅刻してしまいます。」

「心さんが言うなら。叶、早く朝食を食べなさい。」

「は、はい。」

 おまえが邪魔してたんだろう! 僕は心の中でお母様に文句を言った。口から言葉にして声として、お母様に文句が言えないからだ。

「心お兄様ありがとう。」

「叶、早く食べないと遅刻するぞ。」

 そして、僕なんかに救いの手を差し伸べてくれるのが兄の夢見心。頭脳明晰、スポーツ万能、才色兼備の優しい兄である。医学部を卒業し、父の夢見病院で医師として働いている。

「おかしい。最近の叶お兄様は何かがおかしいわ?」

「何をブツブツ言っているんだよ?」

「だって、以前の叶お兄様は、お母様にサンドバックにされたら、今にも死にそうな顔をしていたもの! 今のお兄様は何事もなかった様に平然としているんだもの!」

「慣れだよ、慣れ。」

「そういうものですか? 信じられない!? 叶お兄様から、そのようなお言葉が出てくるなんて!?」

「僕は、いったいどんな人間に思われていたんだよ?」

「ゴミ、虫けら、落ちこぼれ、負け犬、それでも兄。」

「あのな!?」

「叶さん! ご飯は静かに食べなさい!」

「すいません。お母様。」

 黙れ! サンドバッグ! と僕は心の中で叫んだ。当然、僕の心の声はお母様には聞こえない。

「ごちそうさまでした。お父様、お母様、病院に出勤致します。」

「うむ。私も後から行く。」

「行ってらっしゃい。心さん。」 

「待って下さい!? 僕も行きます!」

「私も行く!」

「はしたない! 口に食べ物を入れて席を立たない!」

「すいません。」

 とくに毎日の生活が変わる訳でもないし、急に性格が変わる訳でもない。

「それでも夢の中で、救世主様、やってます!」

 言いたい! 誰かに心の声を言葉にして言ってみたい! 何かが変わり始めた。夢の中の僕が、現実の僕を凌駕し始めていた。

 つづく。

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