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剣物語  作者: 渋谷かな
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南風

「ウギャアアア!?」

 またハヤテが南から湿った強風に吹き飛ばされている。

「この風の神、南風のノトスに戦いを挑むのは、殺してくれと言っているようなものだぞ。」

「いててててっ!? 北風のボレアースも強かったが、この南風のノトスも同じくらい強い!? いや! もしかしたら、もっと強い!?」

「この温風を司る南風のノトスを、北風なんかと同じように思うなよ。どこかに飛んでしまえ! サウス・ウインド!」

「ギャアアア!? また来るからな!?」

 ハヤテは空の彼方に飛ばされてしまった。

「なぜだ? なぜ、まだあいつは風の剣騎士の鎧を着ていたんだ?」

 南風のノトスは首を傾げるのだった。


「乾杯!」

「やっぱり乾杯は、お茶にかぎりますな。」

「そうですね。渋いお茶が一番です。」

「よかったらお団子もありますよ?」

「おお! 風流ですな。春は桜餅の季節ですな。」

 エルフ師匠と友達のジンは、縁側でお茶を飲んで楽しんでいた。

「うわあああー!?」

 そこに、ドカーンっと空から風の剣騎士ハヤテが降ってきた。

「ああ!? せっかくのお茶が!?」

「私のお団子が!? 待て!? 転がるな!?」

 ハヤテのせいで、エルフたちのお茶会が滅茶苦茶になった。

「こら! ハヤテ! おまえはどこから降ってくるんだ!?」

「空からだよ。」

「なんだ!? その態度は!? 私たちのお茶とお団子をどうしてくれるんだ!?」

「知らない。」

「なに!?」

「次は西風のゼピュロス様に、西風の剣騎士の鎧を授けてもらえるように頼みに行くんだ!」

「こら! ハヤテ! 少しは師匠の私の言葉を聞け!」

「さらばだ! 師匠!」

 ハヤテは風の様に去って行った。

「こら! 待て! ハヤテ!」

「忙しい奴だな。お茶でも飲んで、ゆっくり休んでから行けばいいのに。」

「まったくだ。どうせ、ゼピュロス様にも吹き飛ばされて帰ってくるだろう。」

「今度はお茶がこぼれないように、湯呑みはやめて、ペットボトルにしますか。」

「そうですな。お団子はやめて、クレープにしましょう。」

「おお、いいですね。若い我々にはピッタリですな。」

「ワッハッハー!」

 いったいエルフ師匠とジンは何才なのだろう。


「うわあああー!?」

 その頃、ハヤテは西風のゼピュロスのそよ風に吹き飛ばされていた。

「強い風だけが相手を吹き飛ばすとは限りませんよ。」

「なに!?」

「血気盛んな若者には、そよ風の良さは分からないでしょうね。」

「クソッ!」 

 風の神、西風ゼピュロスは子供のようにハヤテを弄ぶ。

「それにしても、ハヤテ。おまえはどうして風の剣騎士の鎧を着ているんだ?」

「どういうことだ?」

「東風のエウロスが言っていた。邪悪なる者が甦ったから、風の剣騎士に新しい風の剣騎士の鎧を与えようと。」

「なんだって!?」

「私も、北風のボレアースも、南風のノトスも、その意見に賛成したぞ。だから今頃、おまえには新しい風の剣騎士の鎧を授かっている頃だと思ったのだが。」

 風の神アネモイの四人は、ハヤテに新しい風の剣騎士の鎧を与えることに賛成していた。

「ゼピュロス様! 私をエウレス様の元に吹き飛ばしてください! 私は、この世界を守るために、新しい強力な剣騎士の鎧が必要なんです!」

「いいだろう。東風のエウロスの元へ飛んでいけ! ウエスト・ウインド!」

「ありがとうございます!」

 こうして、ハヤテは東風のそよ風に乗って、空の彼方に消えていった。

「ハヤテか。憎めない男だ。」

 ゼピュロスは、意外にもハヤテのことを気に入っていた。

 つづく。

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