友達
「おはよう。鈴木。」
「おはよう。夢見。」
僕の高校での数少ない友達の鈴木火炎。
「おはよう。おまえたち。」
「省略かよ!?」
「人数が多いから仕方がないよね。」
「こらこら、こちらは天下の夢見グループのお坊ちゃまだぞ。」
「金くれ、金。」
「妹さんを紹介してくれ、お兄さま。」
「ワッハッハー!」
高校の教室には、高橋、田中、渡辺、山本、中村という、五人も友達ができた。世の中は不思議なもので、僕をいじめていた、いじめっ子たちがいなくなったら、簡単に友達がたくさんできた。まだ友達というよりは、言葉を交わす顔見知りになっただけなのかもしれないが。
「僕は夢見グループのお荷物だから権力もお金もないよ。」
いじめっ子と仲良くすると、自分がいじめられるかもしれない。という、恐怖心理から、僕には誰も寄ってこなかった。僕は、いじめっ子たちのために孤独にされてきたことを、初めて知った。そのために僕は暗く、卑屈になってしまっていたのだった。
「それは良かったな。」
「なんで?」
「本当にお金持ちで、威張り散らしていたら、本当に一人ぼっちだ。おまえの周りにいるのは、いじめっ子でも、普通に話してくれる人間でもなく、ただの奴隷かメイド、若しくは心に復讐心を宿して時期を待ち、屈辱に耐えながら顔では笑って従っている危ない奴しかいないだろう。」
「そういうものなんだ。」
僕は考えたこともなかった。自分のことだけで精一杯だったからだ。単純に妹の月の周りは、そんな感じだろう。そういえば、兄の学生時代はどうだったのだろう? 歳の差が10才あるので、兄の学生時代のことは、全く知らない。
「強すぎても孤独なんだ。」
分かるような気がする。僕もゲームの剣物語の世界で、最強の剣騎士だった。そして強すぎて誰からも恐れられ、誰からも相手にされなかった。現実世界で孤立していたのと、ゲームの世界で孤立していたのと同じ状況だった。
「その点、おまえは金持ちだけど普通の人間だと思えるわ。」
「そうそう。そうじゃなければ、こうやって話をしようと思わないもんね。」
「そだね。」
「おお! 流行語大賞!」
「そうか!? 僕は普通の人間だったんだ!?」
「中学生の妹さんを紹介してくれ。」
「おまえは、ロリコンか。」
「バレたか。」
「ワッハッハー!」
平和だ。高校生活が始まって、初めて平和な学生生活を送っている。これが普通の学生生活だ。普通に勉強して、普通に部活して、普通に友達と笑って。平凡で何も変わらない毎日だけど、きっと、これが普通の学生生活だ。僕は憧れて思い描いていた夢を叶えた。
「座れ、おまえたち。」
そこに教師が入って来た。
「今日は、報告がある。私は、おまえたち問題の多い生徒たちの相手に疲れて、精神疾患で1年間求職することにした。」
「やったー!」
「こら! 喜ぶな!」
「シーン。」
「そこで、おまえたちの新しい先生を紹介する。中へ、どうぞ。」
「ああ~!?」
教室に新しい先生が入って来た。僕は、その顔を見て驚いた。
「伝家宝刀先生だ。」
新しい教師の顔は、伝説の剣騎士デカノーホウトと、そっくりだった。
つづく。




