妹
「どうせ僕なんか。」
どれだけ月日が流れても、人間の性格は簡単には変わらない。
「叶。大学は医学部を受けるんだろうな。」
「叶さん! あなた! お父様の話を聞いているんですか!」
「まあまあ、お母様。」
「そうよ。私が女医になるから、叶お兄様には期待しない方がいいわよ。」
「すいません。」
相変わらず朝食を食べる家族の中に、僕の居場所はなかった。
「行ってきます。」
僕は食欲も無くなり、学校に行こうとする。
「叶。朝食を食べないのか?」
「叶さん! あなた! 逃げるんですか!」
「行ってらっしゃい。」
「待って! 叶お兄様! 私も行きます!」
早く、こんな家から出たい。大人になれば、僕は自由を手に入れることができるのだろうか? きっとダメだ。家柄に縛られて、家業の病院か、学校か、他の事業を継がされることは決まっている。それが僕の未来だ。
「どうせ僕なんか。」
生きていくお金を得るために、僕は決められた未来を受け入れる。僕は親の呪縛から逃れることはできない。もし現実に愚かにも逃れることを選択すれば、僕はレールから外れて、その他大勢の負け犬の生きる価値の無い人間と同じ存在になってしまう。せっかくお金持ちの家に生まれたのに、それはもったいない。
「ああ~、早く眠りたいな。」
僕は生きながら死ぬことを選んでいる。僕には夢なんか見ることはできない。見ることのできない夢は、叶ことは無い。夢を叶えるためには、まず、夢を見ないといけないのだから。
「お兄様、叶お兄様。さっきから何をブツブツ言っているんですか?」
「んん? 独り言。」
「そんなんじゃ、カワイイ彼女ができませんよ。」
「おまえも僕なんかと一緒にいると、友達がいなくなるぞ。」
「私は大丈夫です。夢見グループの娘として、中学校は完全に支配しました。歯向かう者は、停学退学。酷い者は少年院に送り、我が町に住む価値の無い者たちは引っ越しさせましたから。」
「おまえは悪魔か?」
「いいえ。叶お兄様のカワイイ妹です。ニコッ。」
「参った。月は、カワイイ妹だよ。はあ~。」
「やったー! 叶お兄様に褒められた!」
お金持ちの性格は、少し変わっている。お金の力で自分の思い通りに物事が進むと勘違いしている。人の心はお金では買えないのに。
「叶お兄様も、一つくらいは組織を持てばいいのに。そしたら、誰もお兄様に危害を加えることができなくなりますよ。」
「いらない。僕は、僕の手で平和な夢の世界を作るから。」
「熱でもあるんですか!? お兄様らしくない前向きな発言!? 119番と、もしもし救急車を1台お願いします。」
「救急車を呼ぶな!」
「ストレスですかね?」
「おまえがストレスだ!」
「良かったら、私の女中にお兄様の相手をさせましょうか? 私の兄だと言えば、みんな喜んで玉の輿狙いで喜んで服を脱ぎますよ。」
「え!? いいの!? って、いらない! 月は早く学校に行きなさい!」
「待って下さい!? 叶お兄様!?」
「どうせ僕なんか。」
僕は少しもったいないと思いながら、妹から走って逃げる。
つづく。




