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7.風変わりな、奴隷

 2人は家で休むことにしたらしい。

 銀貨を持たせているので腹が減れば外で食べろと言っておいた。


 奴隷購入の予算としては大金貨10枚だ。


 交渉次第では物々交換も出来るだろうし、1人も買えないということはないだろう。


「いらっしゃい。おや、初めてのお客さんだね」


「あぁ。紹介状をもらってきた」


 妖婦。彼女の第一印象はそれだった。

 女性が奴隷商人というのは珍しいと、個人的には思ってしまう。


「へぇ。あの坊ちゃんからの紹介とは、どこかの貴族さんかい?」


 ドルビド君からの紹介というだけで貴族と間違われるのか。

 それほどドル商会は大きいということだろう。


「いや、ただの冒険者だ」


「ふ~ん。疑うわけじゃないが、金はあるんだろうね?」


 疑うのもわかる。

 冒険者が奴隷を買うのは珍しくはないが、基本的に貴族や裕福な商人が奴隷を買うものだ。


「あぁ。大金貨10枚はある」


 マジックバッグから袋に入った大金貨を取り出してカウンターに置く。


「へぇ~以外に高ランクの冒険者なのかい」


「ランクはCだ。金の宝箱を見つけてな」


「なるほど。それで仲間にする奴隷を探してると」


「あぁ」


 彼女は嘘を見破る能力があると思われる。

 すべてを見透かされているような感覚を受ける。


「いいよ。うちの子達を売ってあげる。

 ちょっと待ってな」


 どうやら売ってもらえるようだ。


「こっちだよ」


 30分ほどで彼女が戻ってくる。

 彼女の案内で奥の部屋へと移動する。


「みんな戦うことができるし、冒険者になってみたいと言っている子達だ」


 女の獣人が3人。男が2人。

 冒険者になってみたいか。


「1人いくらだ?」


「右から、7、12、9、10、11だ」


「予算は10枚だが?」


「男がケチケチするもんじゃないよ。

 それにあの袋には10枚以上は入ってるだろ?

 うちの耳はいいんだ」


 流石は商人というべきか。

 さて、どうしたものかな。

 あまり見た目で判断はしたくないが、確かに12枚の価値がある。


 女の獣人と目が合う。

 戦いたい。

 そんな気持ちが読み取れた。


 他に視線を向ける。

 買ってほしくない、なんて思っている者はいない。


「1人ずつ話をするかい?」


「そうだな。12の彼女と11の彼と話がしたい」


「わかった。隣の部屋で待ってな」


 3人は買われないとわかると落ち込んだようにため息をついて奥の部屋へ戻って行く。


 俺は指示された部屋に入って椅子に座る。

 待っていると12の彼女が部屋に入ってきた。


「失礼します」


「座ってくれて構わない」


 こちらから声をかけることで彼女はお礼を言いながら椅子に座る。


「ありがとうございます」


「もう聞いていると思うが、俺は冒険者だ。ランクはC。目標はSだ」


「はい。きっとお役に立てます」


 彼女にどれほどの力があるのか、ここに入る時の足運び、全く隙のない警戒心。


 俺は彼女に勝つことはできても、軽傷ではいられないだろうと感じた。


「すぐに君と決めたいところだが彼とも話がしたい」


「ありがとうございます。失礼します」


 彼女が椅子から立ち上がって部屋を出て行く。

 1つ1つの動作に無駄がなく、綺麗だった。


 しっかりとした教育を受けていると感じられる。ここは当たりなのかもしれない。


「失礼します!」


「座ってくれて構わない」


「ありがとうございます!」


 元気のいい子だ。


 うるさいのはあまり好きではないが嫌いになれないタイプのニコニコとした元気な子だと感じる。


「もう聞いていると思うが、俺は冒険者だ。ランクはC。目標はSだ」


「俺、この世界に来て、冒険者になりたいと思ってたんです!」


「……この世界?」


「あ、やべ。今のは聞かなかったことにしてください」


 彼はよくわからない。

 動きは素人のはずで、警戒なんて全くしていないはずなのに、勝てると思えなかった。


「そ、そうか。とりあえず店主を呼んできてもらえるか?」


「あ、わかりました」


 買ってもらえないと思っているのだろう。

 さっきまでの元気がなくなって目に見えて落ち込んだ様子の彼が部屋から出て行く。


「決まったのかい?」


「彼女は強いな。彼は変わった子だな」


「2人で20枚でどうだい?」


「それはありがたい申し出だが、あいにくと金がない」


「金の宝箱の中身を売ったら買えるだろ?」


 金の宝箱の中身は空だったのが、今まで集めていた装備やアイテムを売れば金を作ることができるだろう。


「特別にうちで何か買ってやるから、2人買いな」


「どうしてそこまでしてくれるんだ?」


「うちは奴隷商人。

だけどあの子達の母親みたいなものだと思ってる。

 幸せになれるところがあるんだったら、そこに行かしてやりたい。

 ただそれだけだよ」


「…そういえば、名前を聞いていなかったな」


「こんな美人の名前を始めに聞かなかったのはあんたが初めてだよ。

 うちはミコト。今後ともよろしく」


「あぁ、よろしく頼む。2人を買わせてもらってもいいか?」


「まいどあり。じゃ、用意してくるから。

 あんたはうちに売れる物を用意しとくんだよ」


 ミコトの言葉に甘えることにしてどれが彼女のお眼鏡に叶うか考える。


 念のために持ってきていたマジックバックから装備やアイテムを取り出す。


「ありがとうございます。ご主人様」


「ありがとうございます! ご主人様!」


「アドだ。よろしく」


「私は狐族のチャルナです。

 ルナとお呼びください」


「俺は蒼咲 正也(あおざき まさや)って言います!

 マサって呼んでください!」


「わかった。これから家に向かう。

 君たち以外にも2人の奴隷がいるが、仲良くしてくれ」


「かしこまりました」


「わかりました!」


 ルナとマサを購入したことで、軽くなったと感じるマジックバックを持ちながら家に帰った。


 ベッドが足りないことを思い出してドルビド君にベッドの手配をしてもらった。


 さらに軽くなったような気がするが、これから稼げばいいのだ。


 家ではオーギスとフィーが出迎えてくれたので2人にルナとマサを紹介する。


 夕方にはベッドが到着したので、二階の全部屋にベッドを設置した。


 ルナとマサには二階の部屋を使ってもらうことになった。


 無駄遣いはしたくないがパーティー結成祝いということで、少し豪華な夕食を5人で堪能した。


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