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3.家族会議

 相手が奴隷であっても、忌み子であっても。

 信用できれば、それでいい。


 騙されることも、裏切られることもない相手を俺は手に入れた。


 泣く子供2人を連れて歩くのはかなり注目を集めた。

 何事もなく宿に着いたことに安心した。


 オーギスは泣き疲れたのか眠っている。

 フィーは真っ赤な目でこちらをチラチラと恥ずかしそうに見てくる。


「明日に家の受け渡しがある。

 今日はここで寝てもらうが明日には移動する」


「はい! お、んん! ご主人様!」


 今お父さんと言おうとしたな。まあいいか。

 オーギスに着せていたローブを脱がせてベッドに寝かせる。


 紫の髪は目立たないようしなければならない。

 オーギスにどのような戦いが合うのか、それ次第で装備を考えないとな。


 しかしフィーはいい買い物だった。

 治癒魔法が使える人間は冒険者にとって喉から手が出るほど欲しい。


 使い手が全くいないわけではないが、フィーの治癒魔法は効果が高い。


 オーギスの傷は何ヶ月も続いてつけられたものだと思われるが、フィーはすぐに癒してしまった。


 35年前のフェルを思い出す。


「フィーはオーギスとここで留守番だ。俺はちょっと出かけてくる」


「はい。わかりました」


 向かった先は冒険者ギルド。

 パーティーの申し込みだ。


 実際はする必要はないものだが、しておくと何か揉めた時にギルドが対応してくれる。


 主な揉め事はパーティーの勧誘だ。


 今は痩せて子供っぽく見えているフィーだが、そのうち子供に見えづらい美人になるだろうと思っている。


 美人な冒険者を巡って争いが起きるのはよくあることだ。


「パーティーの申し込みをしたい」


「はい! かしこまりました!

 お名前をどうぞ」


「アドだ。パーティーメンバーの名前は」


「アド、さん?

 失礼ですが、カードの提示をお願いします」


「あぁ」


 胸ポケットからカードを取り出してカウンターに置く。


 ナーナはカードを手に取ってカードに書かれている名前を見ては俺の顔を見る。


 何度かカードと俺を見てを繰り返す。


「本物だ。若返ったんだ。状態確認」


 ナーナの持っているカードに指を当てて確認を行うとカードに文字が浮かび上がる。


「うそ、本物?」


「カードの偽造は重犯罪だろ?」


「アドさん! 何があったんですか!?

 わかるように説明してください!」


「わ、わかったわかった。少し落ち着け。

 ほら、深呼吸」


「すー…はぁー…。

 で、何があったんですか?」


「よくあるあれだ。宝箱を開けたら呪いを受けた」


「なんで罠の確認をしないんですか!?

 身体に異常は!? いつから!?」


「罠がないことは確認済みだった。

 中身が呪いだったんだ。今のところ異常はない。

 一昨日に宝箱を開けて、昨日呪いを受けたことがわかった」


「…若返りと不老。解除はするんですか?」


「今のところは問題がない。

 だから解かない」


「はぁ…でしょうね。

 ホントに冒険者ってなんでバカばっかりなんだろ」


「バカで悪いな」


「悪いです。アドさんが引退したら一緒に働けると思ったのに」


「ナーキにも同じことを言われた」


「はぁ…本当に、仕方ないですね。

 バカなんですから」


「あぁ。これからもよろしくな」


「ランクSまで付き合ってあげますよ」


 ナーナに笑みを向けて頷き、冒険者ギルドを出る。

 フィーとオーギスの冒険者登録が必要だったことがわかった。


 明日から活動開始になりそうだ。


「おかえりなさい!」


 宿に戻るとオーギスが起きていた。

 部屋に入った瞬間に抱きつかれる。


 子供を持ったことはないが、なかなか嬉しいものだ。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


「ただいま」


 抱きついているオーギスの頭を撫でながらフィーに近づいていく。

 空いている手をフィーの頭に近づけていき優しく撫でる。


「あ、あの…」


 2人とも気持ちよさそうにしているが、フィーは恥ずかしそうだ。


「2人に話がある」


「なに?」


「こら! ご主人様ですよ!」


 フィーはしっかりと教育を受けているようだが、オーギスは教育を受けていないようだ。


「そのうちな」


 なんで叱られているのかわからないオーギスと、慌てているフィーの頭を撫でながら笑みを浮かべる。


「明日から冒険者として活動する。

 フィーは使いたい武器はあるか?」


「私は杖をお願いします。

剣も少しなら扱えます」


「オーギスは?」


「大剣! おれ、力持ちだから!」


 スキルの確認などは冒険者の登録を行った後だ。

 冒険者ギルドで発行されるカードがないと詳しく確認することができない。


「そうか。すごいな」


 オーギスの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。

 楽しそうに笑うオーギスをフィーは嬉しそうに見ていた。


「2人にこれを渡す」


 腰につけられるポーチのマジックバッグを2人に1つずつ渡す。

 中には数枚の銀貨と水筒が入っている。


 マジックバッグにもいろいろ種類があって大きさによって入るものが変わる。


 俺が持っているマジックバッグはポーチが3つとバッグが1つだ。


 マジックバッグは作ることができる。

 素材や作り手の魔力によって性能が変わるそうだ。


「い、いいんでしょうか?」


「持ってないと不便だろう。

 しっかり働いてくれればそれでいい」


 オーギスはポーチに手を入れて水筒を出したり入れたりして遊んでいる。


「頑張ります!」


「おお!」


 元気に返事をするフィーと水筒を持ち上げて返事をするオーギス。

 大変かもしれないが楽しいと感じている。


 明日は家を受け取ってその後にギルドで登録してから迷宮探索に決まった。


 外での訓練を行いたかったがオーギスは忌み子だ。

 見られて騒がれると面倒だ。


 その点、迷宮は死と隣り合わせな状態だ。

 2人が入れるのは初心者用の迷宮のみ。


 余裕のある初心者などそうそういるものではない。

 オーギスの髪が見られる確率は低いだろう。


「明日は迷宮だ。そろそろ寝よう」


 夕食を済ませてから床に毛布を敷いて横になる。

 フィーとオーギスが床で寝ると言っていたが却下した。


 子供を床に寝かせて風邪を引かれては明日の予定が狂ってしまう。

 まだ金はあるがあればあるだけいい。


 明日は2人の訓練だ。

 そこまで深く潜ることもないだろうし、よく知っている迷宮だ。


 なにから始めようか。

 どのように行おうかと考えながら眠りについた。


 左右に動くものを感じながら。

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