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32.妖精の国

 飛竜の3匹に解放されて朝食を済ます。大部屋に全員が集まっているので今日の予定を話すことにした。

 俺の頭と両肩に乗っている3匹に全員の視線が集中しているが、何事もないように振る舞う。

 また飛び回されるのはごめんだからな。


「マサの力で妖精の国に行く。その後に時間があれば俺とルーは1の迷宮に、フィー達は2の迷宮の攻略をする。双子は3匹の面倒を見てくれ。質問は?」


「マサ兄が勇者だというのは本当なのですか?」


「意外なことに本当だ。妖精の女王は女性になら加護を与えられるそうだし、双子もついてくるか?」


「「いいのですか?」」


「どうなんだ? マサ」


「大丈夫だと思いますよ。俺たちの弱点は少なくしておく方がいいでしょうし」


 もしも、マサが勇者だと知れ渡り、マサを利用しようとする輩が脅しのために双子を攫うなどの行動に出るかもしれない。


 そんなことにはならないようにするつもりだが、もしもの場合があるしな。

 ダメ元で頼んでみるか。


「そうだな。どんな人? なのかは知らないが、頼んでみるか」


 というわけで全員+3匹で妖精の国にやってきた。


「待っていたぞ。勇者とその仲間達に、勇者の主人殿。私は妖精族の女王、レノルだ」


「初めまして、アドと言います。今回は勇者の話といくつかの質問をさせていただきに参りました」


「気軽に接してくれ。その方が楽なのでな。聞きたいことというのは、鬼のことか? それとも、そっちの赤髪の女性のことか? もしくは、呪いのことか?」


「全て聞かせてもらえるか?」


「いいだろう。まずは鬼から説明しようか。それは鬼の呪いで、鬼を殺し続けた者にかかるが、功績として鬼の力を得る。しかし力を使い続けるといつの間にか鬼となる欠点がある。今のアドは半分鬼と言える状態だな。だが奇妙な呪いを受けているせいで完全な鬼になることはないだろう。その呪いがある限り、安心して力を使うといい。ただし、奇妙な呪いがなくなりでもしたらすぐに鬼となるだろう。注意するのだぞ」


「わかった。次は、この娘。ルーについて教えて欲しい」


「その娘は悪魔のいたずらによって生まれたのだろう。悪魔化という力を持っているだけで、害はない。使い続けても体に影響はないし、子供ができても悪魔の子供が生まれることもない。どうしてもというのなら、悪魔化を消すことはできるが、どうする?」


 妖精がいて、悪魔もいる。おとぎ話にでも迷い込んだ気分だ。

 しかし消すことができるのか。消してしまうとルーの力が無くなる。

 本人に決めさせるか。もし消すことを選ぶのなら、双子のように家のことをして貰えばいい。


「ルーが決めるといい」


「私は、ご主人様のお役に立ちたいです。ご主人様は、どう考えておられるのでしょうか?」


「悪魔化というのが使えれば魔物と戦わせる。使えなくなったのなら、双子と一緒に家を頼むことになるだろう。好きな方を選べ」


「私は、戦います」


「わかった。厳しくするから覚悟しておけ。嫌になったら、後で消してもらうように頼めばいい」


「はい。頑張ります!」


「消したくなったらいつでもくるといい」


「ありがとう。次は、奇妙な呪いのことを頼む」


「色々と説明すると面倒だから簡潔に言ってしまうと、呪いという名の神からの祝福だ。とある理由から迷宮には神と呼ばれる存在がいる。そいつはいたずら好きというか、予想できない展開が好きらしくてな。いくつかある中の1つで宝箱に呪いを入れて遊んでいる。アドが開けた宝箱がその1つだったというだけだ」


「他にもあるのか?」


「あの神のことだ。どんなものか詳しくはわからないが、金の宝箱を持ってきてくれたら中身を調べてやってもいいぞ。アドの呪いが無くなってしまうのは、私としても困るのでな」


「それは勇者の話と関係があるということか?」


「そういうことだ。では、本題に入ろうか。勇者というのは異世界から迷い込んだ人間のことで、この世界に愛された者だ。帰る方法は、見つかっていない。マサの前の勇者は魔王と呼ばれて、この世界の者たちによって殺された。魔王と勇者の話は同一人物を2人に分けて、この世界のいいように作られた話だ。私達はこの世界の者たちに呆れてしまってここに住んでいる。しかし私達が迷宮に籠っていることでこの世界が魔物によって滅ぼされることがわかった。だから今回の勇者であるマサに、迷宮の攻略を依頼したい」


「迷宮の攻略?」


「今は結界で外の様子はわからないが、あっちにまっすぐ進むと景色が森に変わる。森を進んでいくと草原になっている。そこにはお前達がボスと呼ぶ存在がいる。そいつを倒すと扉が現れるはずだ。扉の先は部屋になっていると思う。その部屋にはクリスタルと宝箱があるはずだ。クリスタルを使えば次の階層に行ける。全階層にボスが存在する。何階層まであるのかは、不明だ」


「俺たちにここの迷宮を攻略してほしいということか」


「その通りだ。すぐにというわけじゃないが、100年以内には攻略してほしい」


「俺たち以外にここの存在を教えてもいいのか?」


「なるべく避けてもらえると助かる。それに聖剣がなければここには入れない、出ることもできない。マサの力がどの程度あるのかわからないが、一度に運べる人数には限りがあるだろう」


「そうか。俺は受けていいと思っているが、マサはどうする?」


「頼めないだろうか?」


 俺とレノルの視線がマサに向けられる。


「俺に決定権があるんですか?」


「俺の夢は知ってるだろ? ここを攻略する必要はない。それに、これはマサへの依頼だからな」


「確かにそうですけど、攻略しないと世界が崩壊? するけど、100年以上後だし。今の俺には関係ないですけど、もしかするとフィーとの子供の子供が死ぬとか、想像するだけでも嫌なので、救ってやりましょう! 世界を! この俺が!」


「というわけだ。目標としては10年以内に攻略したいな」


 それ以上、フィー達を奴隷にはしておけないだろう。

 奴隷のままにしてしまうと、マサの欲望が爆発してしまいそうだ。


「ありがとう」


「そうと決まれば、早速特訓ですね! フィー、オーギス、ルナちゃん、2の迷宮をサクッと攻略しちゃおう!」


「待て待て。帰る前にレノルに頼みたいことがある」


「なんだ?」


「レノルは女性になら加護を与えられると聞いた。双子とルーに加護を与えてはくれないだろうか?」


「そっちの双子にならいいが、悪魔化を持ったルーは無理だ。男達も加護が欲しいなら王に頼んでくれ」


「王?」


「この迷宮のどこかに精霊の国がある。そこの王に頼んでくれ」


 妖精に悪魔ときて、精霊か。

 ここは本当に現実なのだろうか?


 とりあえず双子にレノルの加護をもらった。


「「「きゅ!」」」


 ずっと俺の頭と両肩に乗っていた飛竜達がレノルに飛びつく。

 レノルは飛竜達と会話ができる様子で、何やら話しているがまったく聞こえなかった。


「こやつらにも加護を与えた。お前達の役に立ちたいそうだ」


 定位置に戻って来る飛竜達。

 レノルから加護をもらったようだ。


 そういえば、金の宝箱を見せたら中身がわかると言っていたな。

 というわけで、金の宝箱を見てもらったが神の悪戯はなかったようだ。


 これで安心して開けられる。

 と思っていたが、神なら中身をいじることができるらしい。


 俺に不利益なことは起こらないだろうとレノルに言われたが、また開けるのが怖くなったのが正直な気持ちだ。

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