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31.卵

「フェルーレです。ルーとお呼びください。よろしくお願いします」


 簡単な自己紹介だけ済ませて、ルーを女性陣に任せてマサを呼ぶ。


「マサ、こいつの鑑定を頼む」


 テーブルに買って来た卵を3つ置く。

 改めて見ると大きい。人の頭2人分くらいだろうか?


「卵? 飛竜? マジっすか?」


 どうやら本当にドラゴンの卵らしい。

 騙されなかったことを喜ぶべきだが、3匹の飛竜をここで飼うことはできないだろう。


「詳しくわかるか?」


「ん~卵を肌身離さず持っていれば、1日で孵るみたいですね」


「1日で孵るのか」


「肌身離さず持っていることで、その人の魔力を覚えて親だと思うみたいなんですよ?」


「そうか。じゃあこれはマサに渡しておく。マサなら契約したら召喚できるだろ?」


「えっと、できるみたいですね。いいんですか?」


「ちゃんと世話しろよ」


「やった! 頑張って最強のドラゴンに育ててみせます!」


 そこまで目指さなくてもいいが、あと2つか。1つはルーに渡すか。

 家に着くまでに少し話を聞いたら、生き物を育てたいと言っていたし、あと1つか。


 双子に渡してみるか。2匹なら使っていない庭で放し飼いしても問題ないだろう。


 大きくなったら、またその時に考えよう。


「「飛竜の卵ですか?」」


「あぁ。育ててみる気はないか?」


「「やってみたいです!」」


 ということで、マサ、ルー、双子に卵を渡した。これで明日は休みが確定した。


 家事などはフィーとルナがやるそうだ。今日の夕食はルーの歓迎会ということで豪華だった。


 4人が卵を抱えながらの食事というのは、おかしな光景だった。

 双子はぴったりとくっついて真ん中に卵があって、器用だなと感心してしまった。


 4人に卵を渡した次の日の夕方。

 俺とオーギスはギルドで模擬戦を終えて家に帰ると、大騒ぎになっていた。


「「「ぎー!」」」


 黒、赤、白の小さな何かが飛び込んできた。


「アドさん、捕まえて!」


 いきなりのことで固まっていたがマサの声で我に返り、飛び込んでくる3匹の飛竜を捕まえようとするが、


「「「きゅ~」」」


 捕まえる必要はなかったらしい。3匹の飛竜に抱きつかれてしまった。

 甘えられている?


「どういうことだ?」


「アドさんが親ってことですよ」


「どうしてそうなった?」


「俺たちってアドさんの奴隷じゃないですか? 奴隷って魔力で縛られているので、アドさんの魔力をそいつらは覚えたみたいなんですよね。まあ、俺たちの魔力も覚えてくれてるんですけど、アドさんが帰ってきた瞬間に暴れ出していきなり飛んで行ったんです」


 1番は俺で、2番はマサ達ということらしい。黒がマサ、赤がルー、白が双子の温めていた卵から生まれた飛竜。


「「「きゅ~」」」


「ほら、それぞれの所に戻れ」


「「「きゅ!」」」


 なんとなく言ってみたが、言葉がわかるようだ。俺に抱きついていた3匹は離れていった。


 マサに黒が抱きつき、ルーに赤が、双子の間でどちらに抱きつこうか悩んでいる白を双子が同時に抱きしめた。


「名前は決めたのか?」


「俺たちが決めてもいいんですか?」


「お前達が温めたんだから、お前達が決めたらいいと思うけどな」


「わかりました。考えてみます」


 大部屋に向かうと、割れた卵の殻が散乱していた。

 フィーとルナが集めた卵の殻を集めていたので手伝う。

 集めた殻に飛竜達が集まって、パリパリと殻を食べ始めた。


「止めなくていいのか?」


 マサなら鑑定で分かるだろうと思い問いかける。


「殻には栄養が豊富に含まれてるらしいので、大丈夫みたいです」


 自然界ではこれが普通なんだろう。


「エサは?」


「なんでも食べるみたいですよ」


 人間の食べ物でもいいらしいので、夕食は同じものを食べることにした。

 4人が3匹の飛竜に食事を与える姿はなかなか微笑ましい光景だった。


 その日の夜中。

 部屋の扉が開いた。


 入ってきたのは、3匹の飛竜だった。


 器用に扉を閉めてパタパタと小さな翼を羽ばたかせて俺が寝ているベッドに降りた。


 左に2匹、右に1匹。丸くなっている。

 少しすると寝息が聞こえてきた。


 3匹の頭を順番に優しく撫でてやり、眠りについた。


 朝起きると3匹の姿はなかった。

 マサ達の部屋に戻ったのかもしれない。


「アドさん! ドラ見ませんでしたか!?」


「ご主人様! アル見ませんでしたか!?」


「「ご主人様! ルリがいない!」」


「ドラ? アル? ルリ?」


「黒い飛竜です! ドラグーンのドラです!」


「赤い飛竜のフィアルドのアルです!」


「「白い飛竜のルリです!」」


 どうやら3匹の名前は決まったようだ。

 そんなことよりも、4人の慌てようから3匹の姿が見えないということか。


「落ち着け。他に見てない場所は?」


「「「「ご主人様の部屋だけです!」」」」


 起きた時はいなかったんだが、どっかに隠れてるのか?


「いなかったぞ?」


「「「「どこにいったの!?」」」」


「そのうち帰ってくるだろ」


「「「「心配じゃないんですか!?」」」」


 4人に壁へと追い詰められる。

 親を怒らせるとここまで怖いのか。


「お、落ち着け。昨日生まれたばかりだが、飛竜だぞ? ほとんどの生物の頂点に近い存在だ。それに、昨日抱きつかれた俺だから分かるのかもしれないが、あいつらは相当強いぞ? 直前で勢いを落としてくれなかったら俺は吹き飛んでいた」


「「「「それでもまだ赤ちゃんなんですよ!」」」」


 息ぴったりである。


「わかったわかった。俺も探すよ」


 とはいったものの、外に出たとしか考えられないので、寝間着から外着に着替えようと部屋に戻ると、3匹が部屋の中にいた。


「ドラ!」「アル!」「「ルリ!」」


 4人が俺を押しのけて部屋に入っていく。


「「「ぎゅー」」」


 抱きしめられた3匹は苦しそうだが、4人は離すことなく無事を確認するように抱きしめながら撫で回している。


「それぐらいにしとけ」


 1人ずつ頭にチョップを当てて、3匹を解放させる。

 解放された3匹が俺に近づいてくる。

 ドラが頭に、左肩にアル、右肩にルリが乗る。


 まったく重くない。


「それで、どこいってたんだ?」


「「「きゅ!」」」


 俺の体が浮いた。これは魔法?

 開いている窓から外に出ると、オークの死体が転がっていた。


「狩ってきたのか?」


「「「きゅ!」」」


 王国から出てオークを狩って、ここまで運んできたようだ。

 外で騒ぎが起こってないことから、誰にも見られてはいないようだが、4人が心配していたので叱っておくか。


「褒めてやりたいが、勝手に外へ出たらダメだろ? ほら、4人にちゃんと謝れ」


 俺を地面におろして3匹が離れていき、4人に近づいて頭を下げた。

 本当に賢いな。


「「「きゅ~」」」


「「「「かわいいから許す!」」」」


「オークか。血抜きして昼飯にするか。ドラ、アル、ルリ。よくやった」


 ちゃんと謝ったことも含めて3匹を褒めてやる。


「「「きゅ!」」」


 褒められた喜びからか、3匹に抱きつかれてしまった。

 そして空に飛び上がる。


「ま、待て待て待て!」


「「「きゅ~!」」」


「心の準備がぁぁぁあ!」


 家の上をくるくると回る。

 俺は、高いところが少し怖くなった。

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