30.最後の奴隷
城に招待された翌日。
ドルビドと一緒にオークションへ向かっていた。
「アドさんの予算はどれくらいですか?」
「50枚。即戦力を買う予定だ」
「何を買うつもりですか。20枚もあれば余裕だと思いますよ?」
「オークションは奴隷だけじゃないだろ? いい物があれば買う予定だからな」
「そういえば、金の宝箱はどうでした?」
「まだ開けてない。すぐに金が必要というわけじゃないからな」
それに、また呪いが入っていて今の呪いがなくなってしまうと、鬼になってしまう可能性がある。
今日、購入した奴隷によっては予定が変わるが、明日は妖精の女王様に会いに行く。
その時に色々と聞いてみる予定だ。
知らないならそれでもいい。
今のところは金に困っていない。金の宝箱を開けるのを先延ばしにすればいいだけだからな。
「エルフ族に王族と、かなりの報酬を貰われたようですからね」
「報酬なんだから貰って当たり前だろ?」
「確かに。それにしても、まさか未開封の金の宝箱が宝物庫にあるとは思いませんでしたね」
「希少価値が好きな奴らなら、そこまで不思議でもないけどな。金の宝箱を見つけて、開けずにいる冒険者はそうはいないだろ」
「その冒険者が目の前にいるのですが?」
「楽しみは後に取っておく。中身は絶対に使えるものとは限らないからな」
「確かに。呪いが入っている宝箱を開けた人の言うことは違いますね」
「喧嘩なら買うぞ?」
「商品なら売りますよ?」
ドルビドと会話をしていると会場に到着した。
基本的に貴族が参加するような催しだ。
面倒がないようにさっさと中に入って座ることにしよう。
闘技場。オークションの会場だ。
年に一回の武闘会や貴族に向けた騎士団の模擬戦なんかも行われる場所だ。
魔物同士を戦わせたりして、賭け事をやっていると言う話も聞いたことはある。
今回はオークションと言うことで、中央にはステージが用意されている。
ステージを囲むように椅子が設置されているので、後ろの方に座る。
「お待たせしました! オークションを開催します!」
ステージに奴隷が並んで行く。
容姿がいいのは当たり前。女性は薄い服を着せられて体型がよくわかるようになっている。
男性は上半身裸の薄いズボンだけを履いている。
見ただけであれば、買ってもいいと思うのは男性に1人だけいるが、即戦力になるとは思えない。
鍛えればなんとかと。
やはり貴族向けのオークションだと言うことだろう。
「買われないのですか?」
1人ずつ軽い自己紹介を行い、次々と値段がつけられ買われて行く。
俺が声を全く上げないのでドルビドが問いかけてきた。
「今回はやめておく。ミコトのところにいいのがいないか聞きに行くか」
そんなことを思っていたら、
「それでは、奴隷の目玉商品! 魔族の娘になります!」
真っ赤な髪を揺らしながら、堂々とした姿でステージに立っている彼女の姿が視界に入る。
真っ赤な瞳と目が合う。
「この娘は小さな村で生まれました。最初は普通の村娘として育っていましたが、村が魔物に襲われた時、黒い翼を背中から生やし、頭には角が生え、黒い尻尾をなびかせながら魔物を蹂躙したそうです。その姿はまさに魔族でした! 娘は村人に捕まり、奴隷として売られました! それでは、大金貨10枚からスタートです!」
「12!」「15!」「18!」「22!」
「30!」
「大金貨30枚! 他におられませんか? おられませんね。それでは、30枚でそちらのお客様が購入です!」
意外に30枚で買えるものだな。
「おめでとうございます」
「次は40枚という予定だったが、30枚で買えてよかった」
「そこまで欲しいと思えるほどでしたか?」
「いい目をしていると思った。戦えなくても家事はできるだろうしな」
「アドさんの人を見る目は疑ってしまいますが、少し目立ちすぎたようですね」
ドルビドの言葉で周りを見てみると、どこのものだ? 30枚も払えるのか、などの声が聞こえて来る。
「彼女は後で受け取りに行けばいいんだよな?」
無視するのが正解だろうと思い、ドルビドの方を向いて問いかける。
「そうですね。その前に支払いを済ませなければならないですが」
ドルビドの視線を追うと1人の男が近づいてきた。
「30枚を言われたお客様でお間違いありませんか?」
「そうだ。ここで渡せばいいのか?」
「契約などもありますので、こちらに」
奴隷を買った人間の支払いが終わるまで次のオークションは始まらないとのことなので、さっさと支払いを済ませることにする。
男の案内で部屋に移動する。そこには彼女がいた。
「ミコトの奴隷だったのか」
「大金貨30枚なんて、想像以上だよ」
「40枚出す予定だったけどな」
「一目惚れかい?」
「そんなところだ。で、彼女は?」
「外で待たせてるよ。連れて行くかい?」
「そうだな。連れて行っていいなら、連れて行きたい。話も聞きたいしな」
「いいよ。じゃあ出すもんだしな」
マジックバッグから大金貨30枚を入れた袋を取り出してミコトに渡す。
「確かに。ちょっと待ってな」
袋の中身を確認して部屋から出て行く。
すぐに部屋の扉が開いて、彼女が入ってきた。
「ミコトさんから話は聞いていました。お会いできて、買っていただいて光栄です。
私の名前は、ご主人様につけていただきたいと思います。よろしくお願いします」
「前の名前は捨てると言っていてね。教えてくれないんだよ。だから、あんたが決めてやってくれ」
それで彼女だけ、自己紹介がなかったのか。
「名前か。なんでもいいのか?」
「はい」
「…フェルーレ。ルーと呼ばせてもらう」
「フェルーレ。今日から私は、ご主人様だけのルーです。よろしくお願いします」
ルーを連れて席に戻る。ルーは後ろで立っていると言っていたが、隣に座らせた。
「すごい視線を感じるんですけど、わざとですか?」
「そんなつもりはないんだが」
周りからの視線は無視して、オークションが再開した。
ステージに商品が並んで行き、司会の男が説明しているが、これと言って欲しいものはない。
「そして、こちらが目玉商品! 金の宝箱でございます! 中身はありませんが、追加の機能があります。通常の宝箱は色によって入る容量が決まっています。金の宝箱はなんでも、いくらでも入ると言っても過言ではなく、入れた物の時間が止まっているとされています。中に手を入れれば中に入っているものが大まかにわかる、便利な箱で金庫として使うことができません。誰でも開けられて誰でも物を取り出せるからです。
ですが、この宝箱は魔力を登録した人間以外には開けることも、中にある物を取り出すこともできません! 宝箱の改造に成功したのです! なんでも入って1人にしか取り出すことができない金庫が完成したのです! それでは、大金貨20枚からスタートです!」
金の宝箱は大金貨32枚で購入された。
登録方法は購入者にしか教えられないとのことだ。
「それでは、最後の商品です! ドラゴンの卵3個でございます! 大金貨1枚からスタートです!」
誰も声を上げない。
「実は、前のオークションでもドラゴンの卵だと言って出された物があったんです。卵から生まれたものは、大きなトカゲでした。
育てればドラゴンになるのではと、買った貴族の方が育てているのですが、翼が生えるどころかただ大きくなるだけだったようで。
まあ、買った貴族の方はトカゲもドラゴンみたいなものだと喜んでいるので、大きな声では批判されませんでしたが」
「そうなのか」
マサでも連れてくれば本物かわかったんだがな。
「ご主人様。もう買われないのですか?」
「そうだな。余裕はあるが、買っても育てる人間がな」
トカゲが生まれたとして、育てるための場所は、あるといえばある。あとは人だ。
「あの、私に任せてもらえませんか?」
「育ててみたいのか?」
「は、はい。ごめんなさい。奴隷なのに、わがままを。聞かなかったことにしてください」
「2枚だ」
「ありがとうございます! 他にございませんか? それでは、そちらのお客様が大金貨2枚で購入です! これでオークションは終了とさせていただきます! また次回もよろしくお願いいたします!」
ドラゴンの卵だという3個を大金貨2枚で購入してオークションは終了した。
生き物は入らないのに、卵はマジックバッグに入ることを知った。




