23.骸の王
『『『骸の王だ!! 』』』
俺たちは今、14階層にいる。
広々とした空間にポツンと大きな椅子に座っている大きな骸骨。
「エ?」
言葉を理解するようだが、こいつが異変に違いない。
13階層で多数の魔物と何度も戦闘をしてきたというのに、俺たちは笑みを浮かべながら骸の王に突撃していく。
「チョ! マ、マッテクダサイ!」
『『『魔物が喋った!?』』』
俺以外が止まったので、俺も止まりそうになるが、止まることなく骸の王に短剣を向けて突撃する。
「ヒィィイ!」
「…本当に魔物が?」
先ほどまで王座とも呼べそうな大きな椅子に座って堂々としていた姿は無く、命乞いをするように椅子に抱きついて悲鳴をあげる骸の王。
いや、王じゃないな。ただの骸か?
「アド先輩。話聞いてあげません? なんか、可哀想です」
「あ、あぁ」
これが演技で俺たちを騙そうとしていると考えられるが、演技にしては無防備すぎる。
もしものためにフィーとリアが魔法の準備をしているので、骸からゆっくりと短剣を離していく。
「ハ、ハナシヲキイテクレルノデスカ?」
「私達なら貴方を一瞬で灰にできます。妙な動きをせずに話してください」
アンが笑みを浮かべながら怯えて椅子に抱きついている骸に近づいていく。
骸の王。王とは呼ばれてはいるが、所詮はスケルトンだ。
治癒魔法を使ってやれば灰になる。攻撃魔法を当ててやれば灰になる。
たかが骨だ。バラバラにしてしまえば動けなくなる。
冒険者の中では有名な話だ。骸の王はカモだと。
ただし、迷宮の外で現れたら厄災レベルだ。
迷宮内には骸の仲間となる死体がない。
迷宮は魔物の死体を吸収しているらしい。
マジックバッグに入れず、死体を放置すると消えたという記録が残っている。
次の魔物を作るために吸収しているのではと推定されている。
「ハ、ハイ。私が目を覚ましたのは、つい最近のことです。多分、人間だったはずです。自分の名前もわからなければ、過去のことを一切覚えていません。どうしたらいいのかわからず、ここにいました」
「ここにいることで、何か変化はあったか?」
「エット、力がみなぎるというか、時間が経つにつれて元気になるというか」
迷宮が小さくなったのはこいつが原因で間違い無いだろう。
「ここを調べさせてもらってもいいか?」
「ドウゾドウゾ! 何も無いところですが。あ、椅子はあるか」
調べた結果。奥に進む道もなければ、戻るための道もなかった。
「閉じ込められたみたいだな」
「俺様も、何も見つけられなかったぜ」
探索は俺とルノで行ったが、本当に何もなかった。
オーギスとラーキに頼んで、骸が座っていた大きな椅子を退けてもらったが、隠し通路なんてものもなかった。
ということは、あいつを討伐しない限りはここから出られないということだろうか?
「アンのやつ、怖いもの知らずというか」
アンと骸は楽しそうに談笑している。骸の表情は全くわからないが、楽しそうだというのは見て取れる。
あ、いつの間にかマサも会話に混じっていた。
「うちのリーダーは何も考えてないからな! 俺様も難しいことはわからねえけど、あいつは悪いやつじゃねえと思うぜ!」
だといいんだがな。
「今、なんて言った?」
「俺と」
「ワタシガ」
「「契約します」」
どうしてそうなった?
俺とルノが探索を終えて合流すると、マサと骸がありえないことを言い出した。
記憶がないはずなのにマサと意気投合して、マサが契約できると言い出した。
即答で骸が契約すると言ったことで、今にいたるようだ。
「ここから出られないかもしれないぞ?」
「なんとかなりますよ!」
鑑定で何かわかったのだろうか?
倒した方が手っ取り早いんだが、なんか他の奴らとも仲良くなってるみたいだしな。
「はあ、許可する。やっちまえ」
「サンキューボス!」
俺からの許可が出たことで骸は安心した様子だ。
マサが短剣で地面に魔法陣を描いていく。
魔法陣に興味があるリアと契約する骸はマサの作業を見ている。
「マサくんて、何者なんですか?」
3人を見ていた俺にアンが声をかけてきた。それは俺が聞きたいよ。
「天才だって言っただろ?」
「それを通り越して規格外ですよ。ぶっちゃけ化け物です」
ここへくるまでの戦闘を思い出す。
マサの動きが良くなりすぎている。
勇者の覚醒というやつの影響なのだろうか?
あいつの目には、何が見えているんだろう。
「できました! 契約しますよ?」
「さっさとやっちまえ」
最終確認をしてくるマサに、もうどうにでもなれという気持ちで承諾する。
「お前の名前は、今日からネロだ!」
契約するためには相手に名前をつける必要があるようだ。
「ネロ。マサ、ありがとう!」
契約が完了した。魔法陣の中にいたはずのネロが居なくなっている。
「どこに行ったんだ?」
「こいつですね」
マサが首にかけていた黒い宝石のようなものが付いたネックレスを見せてくる。
「それは?」
「族長からもらった、契約した魔獣を保管するものらしいです。これをつけたまま魔法陣を描いて魔石を消費すると、契約した魔獣を召喚できます」
「ネロは魔獣じゃないけどな」
「ですね。これで一件落着ですか?」
「さあな。またこの部屋を探索してみるか。何か変化があるかもしれない」
俺とルノでまたこの大部屋を探索する。
「クリスタルと金の宝箱か」
さっきまでなかったはずだが、隠し部屋を見つけることができた。
罠がないことを確認して、部屋に入るとクリスタルと宝箱があったので、全員を呼ぶ。
「アド先輩にあげますよ。異変を解決したのは、アド先輩のパーティーですからね」
金の宝箱だぞ? 山分けになると思っていたが、アンは俺にくれるという。
「いいのか?」
「私たちを誰だと思ってるんですか? 3の迷宮を攻略中の天才パーティーですよ? 2の迷宮の宝箱なんていりませんよ」
「そういうなら、ありがたくもらっておく」
「早く追いついてきてくださいね! アド先輩」
アン達のパーティーがクリスタルを使って先に転移した。
金の宝箱をマジックバッグに入れる。
「帰るか?」
「「「「はい!」」」」
クリスタルを使って転移した場所は、森の中だった。
どうやらまだ終わっていないらしい。
近くにアン達の姿はない。無事に帰れているといいが。
いや、他人の心配をしている暇はなさそうだ。
「くるぞ!」
草むらから木の根っこのようなものが襲いかかってきた。
返事が聞こえない。まさかと思い後ろを向くと、誰もいなかった。




