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20.ランクA

 王族から城に呼び出されてから2日後の朝。


 冒険者ギルドに来ていた。

 受付に向かうとナーナが笑みを浮かべていた。


「アドさん、おめでとうございます!

 ランクAに昇格です!」


「Bじゃないのか?」


「はい。エルフ族の森に現れた鬼はランクA以上であると推測されました。

 さらに今までの鬼討伐分も合わせてランクを上げると、Bを通り越してAになると、ギルド長が決定されました」


「そうか。とうとうランクAか」


「おめでとうございます! アドさんがAになられたことで、パーティーランクはB扱いとなります。

 ですので、2の迷宮の調査をギルドからお願いします」


「そのつもりで来たからな。詳しい話を聞かせてくれるか?」


「はい。ランクAパーティーからの報告によると、12階層に魔物が集まっています。

 2の迷宮にいるはずのない魔物の存在も確認されています。

 今日までに攻略できた階層は、13階層までです。13階層にも魔物が集まっているようで、戦闘の連続で全く攻略が進みません」


「斥候は?」


「魔物が多すぎて、不可能とのことです」


 そこまで魔物が集まっているのか。

 何かを守っている?


 迷宮の奥に、一体何があるのだろう。


「クリスタルは使えるのか?」


「迷宮を出ることはできます。しかし入口にあるクリスタルで12階層以上には移動できません」


「わかった。俺たちは1階層から攻略して行く。アンのパーティーはもう中に入っているのか?」


「それが、盾役のメンバーが大怪我を負ってしまったそうで、今日は休むと連絡が来ています」


「ランクAの盾役だった冒険者を大怪我させる魔物がいるのか。笑えない冗談だ」


「…死なないでください」


「わかってる。今まで死にそうになったことはあるけど、死んでないからな。これからも死なないように行動する」


「はい。よろしくお願いします」


 ギルドを出て迷宮街へ向かう前に打ち合わせを行う。


「一番前に俺が出る。オーギスとルナは俺の後ろで援護を頼む。マサは剣と弓を使ってフィーを守りながら俺たちの援護だ。フィーは司令塔として指示を頼む。魔法の援護も期待している」


「私が、司令塔ですか?」


「フィーはみんなをよく見ている。全体を把握する力があると思っている。俺が前に出る以上、指示を出しにくいことはある。大丈夫だ。フィーならできる」


「は、はい! 頑張ります!」


「マサはしっかりとフィーの補佐をしろ」


「わかってますよ。アドさんが死んでも、フィーは俺が守りますから」


「頼んだぞ。オーギスとルナもそれでいいか?」


「お姉ちゃんなら信用できる」


「そうですね。フィーさんならできると思います」


「決まりだな。魔物が少ないらしいからな、1階層から11階層までに何度か戦闘をして慣れてから、12階層の本格的な攻略を行うことにしよう。

 今日の目標は11階層までだ。期待してるぞ?」


「「「「はい!」」」」


 打ち合わせを終えて迷宮街に向かう。

 普段なら冒険者をよく見る時間帯のはずだが、全くと言っていいほど人がいない。


 よく使われていた2の迷宮に異変があったからだろう。


 今更、1の迷宮に入って探索する物好きな冒険者はいないということか。


 2の迷宮の前には、ギルド長が立っていた。


「よう、アド。ランクAにしてやったぞ」


「やっとここまで来れたよ、ナーキ」


「お前がエルフ喰いの鬼を討伐したと聞いた時は、息子がランクAになった時よりも喜んじまったぜ」


「ラーキに申し訳ないな」


「ドワーフ族は細けえことは気にしねえよ」


「そうか。そういえば、大怪我をしたのは」


「あぁ。バカ息子だ。ナーナから聞いてないか?」


「盾役が大怪我をしたとは聞いた」


「そうか。お前に心配させないようにしたんだろうな」


「大丈夫なのか?」


「飯食って、酒飲んで、1日寝たら元気になるさ! 治癒魔法も受けたみたいだしな。心配することねえよ。どっちかといえば、お前達が俺としては心配だ。

 ラーキの話によると、相手はドラゴンだそうだ」


「2の迷宮にドラゴンか。さらに奥には何がいるのか、想像もできないな」


「死ぬなよ」


「夢を叶うまでは、死なない。この子達も、失うことはさせない」


「随分と強くなったな」


「そうか? あんま自覚はないな」


「頑張ってこい。帰ってきたら、一杯やろう」


「異変を解決してからなら、いくらでも付き合うよ」


「あぁ。楽しみにしてるぜ。俺は基本的にここにいる。何かあればすぐに救助へ行けるようにと、王国騎士に伝えられるようにしている」


「わかった。退屈な仕事から解放できるように頑張るよ」


「頼んだぜ!」


 ナーキに背を向けて2の迷宮へ入っていく。


 何十年も1階層には入っていなかったが、こんなに静かな場所ではなかったはずだ。


 本当に魔物が減っているんだな。


「とりあえず、打ち合わせ通りに行くぞ」


 一番前を歩く。魔物の気配を見つければ、近づいていき戦闘を行う。


 相手は3匹のウルフだ。素早い動きで噛み付いたり、引っ掻いたりしてくる。


 マジックバッグから二本の短剣を取り出す。


 この短剣はドルビドの知り合いに頼んで、鬼の角から加工してもらっていた短剣だ。


 普段は一本の短剣を使っているが、この二本は一緒に使った方がいいと感じる。


 始めて握るはずなのに、何年も使って来たような錯覚をするほどに、手に馴染む。


 ウルフが3匹同時に駆け寄ってくる。


「父さんは見てて」


「この程度の敵なら私とオーギスだけで十分です」


 せっかく新しい武器が使えると思ったが、ここは2人に任せることにした。


 

 フィーを見る。集中しているようで、俺の視線に気づいているが顔を向けることなく、オーギスとルナの戦いを見ている。


「オーギス! 前に出過ぎない! ルナは後ろに回り込まれないよいに注意して!」


 2人ともフィーの指示をしっかりと聞いて行動している。


 知らないところでこの子達は互いに信頼関係を築いていたのだろう。


 マサはフィーから指示をされる前に弓を構えている。


「撃って」


 フィーはマサのことを見ることなく、言葉を発する。

 言葉が発されるのと同時に、マサが矢を放つ。


 ウルフの額に矢が刺さると同時にオーギスとルナが2匹の討伐に成功した。


 オーギスとルナとマサはウルフの解体を始めた。

 フィーに近づいて労いの言葉をかける。


「お疲れ様」


「ありがとうございます。どうでしたか?」


「俺がいなくても問題はなさそうだな。俺に指示を出す時も呼び捨てでいいからな?」


「は、はい。頑張ります」


 戦闘と休憩をしながら順調に1階層から11階層まで攻略することができた。


 魔物が少ないからとはいえ、半日で11階層まで来ることはできないはずだ。


 違和感はあった。俺が覚えている隠し部屋が全てなくなっていた。


 もしかすると気づいていないだけで構造が変わっているのかもしれない。


 よく知っている場所だからと、地図と見比べていなかったのは失敗だったか。


 迷宮が小さくなっているかもしれないということは報告しておくか。


「今日はここまでにするか。明日はようやく魔物の巣窟となっているらしい12階層だ。

 早めの就寝を心がけてくれ。夕食はルタとリタが用意してくれているだろうから、休むことだけを考えろ。俺はギルドに報告してから帰る。先に帰って休んでいてくれ」


「「「「はい! お疲れ様でした!」」」」


 11階層から12階層に上がる前にあるクリスタルで入口へ転移して、フィー達を先に家へ帰らせる。


 まだ帰っていなかったナーキに近づいて、自分が感じた違和感を伝えた。


「迷宮が小さくなってる?」


「あぁ。魔物が少ないとはいえ、半日で11階層まで行けたのは、それしか考えられない。あとで気づいたから地図での確認はしていないが、間違い無いと思う」


「本当にどうなってんだ?」


 ナーキが2の迷宮へ視線を移動させる。

 嫌な予感しかしないな。


 2の迷宮は朝から夜までナーキが見張って、夜から朝まで王国騎士が見張りをすることになっているようだ。


 ナーキと交代に来たのは、騎士団長だった。


「アドさん、こんばんは」


「騎士団長が見張りをするのか」


「なんだ? 知り合いか?」


 ナーキが俺と騎士団長を交互に見る。


「見張りとはいえ、誰でもいいわけではありませんからね。アドさんが国王様に呼ばれた時に案内をさせてもらったんですよ。模擬戦を申し込んだんですけど、断られてしまいました」


「高ランクの魔物が出て来る可能性があるから当たり前といえば、当たり前か。笑顔で殺気を向けて来るような相手と模擬戦なんて、疲れて時に受けるわけがないだろ」


「なるほどな。模擬戦くらいしてやればよかったじゃねえか。減るもんじゃねえし」


「ナーキさんもこう言っておられますし、この異変が終わったらお願いできませんか?」


「体力が減るだろ。異変が片付いて落ち着いたらな」


「審判は俺がやってやるぜ!」


「楽しみにしていますよ。そうと決まれば、早くこの異変を解決するように努力しますか」


「この戦闘狂どもが」


 ちなみに騎士団長の名前は城を出る前に教えてもらっていた。


 ジルバドル。親しい相手からはジルと呼ばれているそうだ。


 俺は騎士団長としか呼ばないが。

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