11.奴隷会議2
「第二回。奴隷会議を始めます。
二番奴隷のオーギスが進行させていただきます。
父さんは強かった」
「力はオーギスの方が強いだろうけど、速かったな。
あと油断してるようでめっちゃ警戒されてる」
ギルドからの帰り道。
マサがアドに膝カックンをしようとして失敗した。
アドはいつの間にかマサの隣にいてマサの耳をつまみあげた。
痛みを思い出してしまったのか。
マサはつままれた方の耳をさする。
「全く。ご主人様に何してるんですか。
明日の朝食はマサさんだけ一品少なくします」
「ごめんなさい、もうしません!」
フィーに胃袋を掴まれているマサは土下座をして許しをこう。
「マサの朝食はどうでもいいので置いといて。
ご主人様が強いのは予想外というか。
あそこまでの動きをされるとは思いませんでした。
あれでランクCというのは、納得できませんね」
「そうですか?
ご主人様が強いのは当たり前だと思ってました。
だって大金貨を45枚以上は稼いだ人ですよ?」
正確な家の値段はわからないが、フィーの見立てでは最低でも15枚は必要だと思われる。
そこに自分たちの値段を足して出てきた枚数をアドは稼いでいるのだとフィーは言う。
「そう言われるとそうですね。
強くて当たり前。ランクを上げていないだけ?
でもご主人様の目標はランクSのはず。
ランクを上げないのはなぜ?」
「アドさん自身がランクCくらいだと思ってるってところだと思うよ?」
「何か知っているのか?」
「ちょっと前にアドさんと2人で話したんだけど。
俺たちに嫉妬するほど自分には才能がないって、俺たちの才能が羨ましいって言ってた」
「ご主人様が」
「そうか」
「確かにアドさんには才能がないんだと思う。
けど諦めなかった人なんだ。自分の夢を。
やっとその夢に俺たちと進むことでたどり着ける。
叶えてあげようぜ?」
「当たり前です」
「父さんの夢は、俺の夢だから」
「上から目線な発言は見逃すとして、誰もご主人様に逆らうなんて言っていないからね」
「だって俺天才ですし」
「「「うざ」」」
「ひでぇ!」
「明日は2の迷宮攻略ですが、装備の点検は大丈夫ですか?」
「完璧」
「当たり前です」
「死にたくないからね。ちゃんとしてあるよ」
「それでは明日のために眠りましょうか」
第二回。奴隷会議はアドの夢を叶えることが目的であることを再確認して終了した。
「コソコソ何をしてるのかと思ったら」
倉庫の部屋から出てきた奴隷たちの背中を物陰から見ていたアド。
ポタリと床に水が落ちる。
「…まだまだ、追い越させはしないさ」
「2の迷宮が、封鎖?」
朝食を済ませてギルドに立ち寄ると何やらざわついていたのでナーナに声をかけたところ、2の迷宮が封鎖されたらしい。
「はい。魔物の数が減っているようです。
異常だと感じたので昔の記録を調べたところ、一定の場所に集まっているのではないかと予想されます」
「一定の場所に?」
「はい。昔の記録にあったのは、1階層から9階層で出会う魔物の数が減ったが、10階層に入ると視界に飛び込んできたのが」
「魔物の群れだった?」
「そのようです。
これからランクAのアンさんのパーティーに調査をお願いするところです」
「それに同行は可能か?」
調査が必要なら人数も必要になるはずなので、同行が可能か聞いてみる。
返ってきた答えは予想通りのものだった。
「ランクB以上の冒険者であれば、同行は可能です」
仕方ない。外の魔物討伐に予定を変更するか。
いや、いつまで封鎖かわからないから遠出するのもありではないか?
「そうか。俺たちは無理だな」
「はい。すみません」
ナーナから離れて依頼が貼られている掲示板を確認する。
目的の依頼を見つけたので、ナーナに依頼を受ける手続きを行ってからギルドを出る。
家に戻ると全員でリビングに移動する。
全員が椅子に座ったのを確認して遠出することを伝えた。
「というわけで、迷宮攻略はなしだ。
今日は遠出するための準備をすることにした」
「遠出、ですか?」
「あぁ。迷宮攻略が出来ないので護衛をすることにした」
「護衛、ですか」
「何事も経験だ。これからの迷宮攻略には野宿や夜の見張りなども必要になってくる。
迷宮で何日も泊まることもあるしな。護衛は予行練習だと思えばいい。
ただし気を抜くことは許さない。
これは仕事だ。失敗すればランクが下がることもある」
迷宮は階層を進むたびに広くなっていく。
1日で探索を終えることは無くなってくるだろう。
2の迷宮が封鎖されたのはいいタイミングだったかもしれないな。
「わかりました」
「なんだかピクニックみたいだな」
「ご主人様の話を聞いていなかったのか? 仕事だ。遊びじゃないんだぞ?」
「わかってるよ、ルナちゃん。そんなに睨まないでくれよ。可愛い顔が台無しだよ?」
「お前に可愛いと思われても嬉しくともなんともない」
「え? ツンデレ?」
「ツン、なんだ? なんだかわからんが、寒気のする呼び方をするな!」
ルナとマサは仲がいいな。
「父さん」
「なんだ?」
「粉があと少しになりました」
「そうか。いつまでもつ?」
「多分、10日くらい」
「わかった。作っておく」
「え? 素材は?」
「安心しろ。確保済みだ」
2の迷宮に鬼を討伐しに行った時だった。
迷宮街で露店をやっている冒険者が髪を黒くする粉の材料を売っていたのだ。
ないよりもあった方がいいだろうと思ったので購入した。
後は加工するだけだ。
「ありがとう、父さん」
護衛か。俺も初めての仕事だが、護衛する相手はドルビド君だ。
知っている人物とはいえ油断することなく完璧な仕事をしよう。




