9.アドの秘密
4人の奴隷たちが1の迷宮を攻略した。
数日前まで冒険者ではなかった者たちだ。
才のある者たち。
そばにいればいるほどに嫉妬してしまう。
喜んでいないわけでもない。
買った奴隷たちが優秀なのはいいことだ。
しかしあの子達を見ていると、本当に俺の35年は無駄だったと思ってしまう。
わかっていたことだ。
これまでよりもこれからを生きよう。
あの子達の目標になれるように頑張ろう。
そう自分に言い聞かせて、あの子達を祝福する。
「おめでとう」
「「「「ありがとうございます!」」」」
元気な返事が返ってくる。
このまま2の迷宮に入ることも可能ではあるが、理想は1人で1の迷宮を攻略することだ。
しかしあの子達を失いたくはない。
安全に強くしたいと思う。
なので2人一組で1の迷宮を攻略するように命令した。
フィーとオーギス。ルナとマサ。
力量的にこの組み合わせが良いと判断した。
1日の休息を奴隷たちに与えた。
俺は別行動をすることにした。若返った体を試すために。
「数日帰らないと思うが、明日からは2人一組で1の迷宮の攻略を始めてくれ」
「どこか行かれるのですか?」
「あぁ。勘を取り戻してくる」
俺が向かった先は2の迷宮。
12階層にある、隠し部屋だ。
ここで金の宝箱を見つけた。
他の誰にも教えていない。
俺だけの稼ぎ場所だ。
見つけたのは偶然だった。
やっとの思いで2の迷宮を10階層まで攻略できたのは、30前のことだった
1人で攻略のため、1階層の探索にかかる時間は長い。
しかし細かいところまで探索することができた。
眠ることもできず、勝てるかわからない魔物との遭遇は死を覚悟したこともある。
そのおかげで隠し部屋をいくつか見つけることができたのは、幸運だった。
隠し部屋には宝箱を置いてある。
何もないこともあるのだが、そこは安全地帯となっていて、休むには最適の場所だった。
12階層で見つけた隠し部屋は、今まで見つけた隠し部屋とは違った。
部屋というよりも通路だった。
一度中に入ると出ることができず、奥に進むと一体の魔物が鎮座していた。
魔物の姿は赤い鬼。
目測で自身よりも3倍の大きさをしていた。
隠しボス。
噂で聞いたことはあったが、まさか自分が出会うとは思っていなかった。
一定以上、魔物に近づかなければ攻撃してこないことを確認して自分ができることを試した。
接近では勝てない。
では遠距離なら?
ここから鬼を弓で攻撃するのはどうだろうか?
逃げ場はないが鬼が入ってこれるほどの広さはない。
きっと鬼を倒さなければ出られないのだ。
マジックバッグから弓と矢を取り出す。
どれくらい時間が経っただろうか。
矢はなくなり、水と食料も後わずか。
鬼は矢が刺さったまま全く動きを見せない。
矢がもっとあれば鬼を討伐することができる。
鬼を討伐して、生きて、ここから出る。
愛用の短刀を手にして、鬼へ駆ける。
矢を受けても動くことのなかった鬼が立ち上がる。
掴まれたら攻撃が当たったら、死ぬ。
矢で右目は潰してある。
死角となっているはずだ。
足を止めるな。
走り続けろ。
一撃離脱。
深追いはするな。
何時間、何分だったかもしれない。
鬼が倒れた。
奥へと進む道が現れる。
そこには宝箱があった。
金の宝箱だ。
勝ったと気を緩めたことで意識を失った。
目が覚めたら鬼の死体が視界に入った。
生きている。
はじめに感じたのは自身の鼓動だった。
まず金の宝箱をマジックバッグに入れて鬼の解体を行なった。
魔石の大きさは自分の頭ほどあって驚いた。
バラバラにした鬼をマジックバッグに入れて部屋を出た。
迷宮から出てると自分が10日も迷宮に入っていたことを知った。
ナーキには死んだと思われてたらしい。
3日ほど死んだように眠った。
起きた時は体の節々が痛かったのを覚えている。
鬼がいた部屋から帰還して5日後。
中をしっかりと確認していなかったことを思い出したので隠し部屋に入った。
鬼はいなかった。
宝箱があった部屋を調べると文字が彫られていた。
「10日に一度、蘇る」
鬼が、蘇る。
討伐すれば宝が手に入るのではないか?
さらに5日後、隠し部屋に入る。
鬼が鎮座していた。
鬼を討伐する準備は、出来ていた。
2回目の討伐では銀の宝箱が現れた。
何度も鬼を討伐しているが金の宝箱があったのは初めだけだった。
俺のほとんどの収入は鬼の魔石と銀の宝箱。
40を超えると鬼の討伐が難しくなった。
限界がきたのだ。
しかし若返った体を手に入れた今なら、鬼の討伐が出来ると思っている。
何年もやっていないことだが、準備はできている。
数年ぶりの鬼退治。
昔の感覚を取り戻す。
数日後、鬼を討伐して家に帰った。
奴隷たちが笑顔で出迎えてくれる。
どうやら2人一組で1の迷宮を攻略したらしい。
1人ずつ優しく頭を撫でて称賛する。
「よくやった」
ようやく2の迷宮を攻略する時がきたようだ。




