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オオカミと老木  作者: 雨地蔵
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2

大きな大きな森の中

ずうっとずうっと奥の方

若くて強いオオカミは

ひとりぼっちで走ってる。


森で一番嫌われた

森一番の暴れん坊

森の誰もが知っている

あいつに近付きゃ怪我をする。


けれども若いオオカミは

どんなにみんなが嫌っても

そんな事など気にしない。


仲間も友も家族さえ

誰もいないが気にしない。


何故なら若いオオカミは

小さな頃から親もなく

ひとりっきりで生きてきた。


何度も何度も死にかけて

ひとりで戦い生きてきた。


「強くなければ生きられぬ」

「強くなければ生きられぬ」


何度も何度もつぶやいて

ひとりで戦い生きてきた。


体に傷が増えるたび

知恵と度胸を身につけて

死肉をむさぼり生きてきた

泥水すすって生きてきた。


気づけばいつしかその体

誰より大きくなっていた。


まわりのオオカミ達よりも

ずうっと大きくなっていた。


大きな森に住んでいる

オオカミというオオカミに

次々ケンカを売り歩き

次から次にやっつける。


逆らう相手もいなくなり

一番強いオオカミと

誰もが認め讃えても

暴れん坊のオオカミは

群れも家族も作らない。


そんなものなど欲しくない。


そいつの頭にある事は

“ 強くなりたい ”ただそれだけ。


「オオカミだけでは物足りぬ!」

「森じゅう全ての生き物の

誰より強くなってやる!」


心に誓ったオオカミは

その牙その爪研ぎ澄まし

強い相手を求めては

ひとりぼっちでかけまわる。


今では荒くれ熊さえも

そいつの姿が見えたなら

しっぽを巻いて逃げて行く。


それでも若いオオカミは

「まだまだ足りぬ物足りぬ!」

「俺様はもっと強くなる!」

「この牙磨いて強くなる!」

「この爪磨いて強くなる!」


“ 生き抜く為の戦い ”が

いつしかひっくり返ってた

“ 戦う為に生きている ”


そんなある日に現れた

見知らぬヤツらが現れた

火をふく棒をたずさえた

『ニンゲン』どもが現れた。


森のみんなが次々に

火をふく棒で殺された。


手当たりしだいに殺された。


「俺様の森で何をする!」

「どこのどいつであろうとも

ここで勝手は許さない!」


だれもかれもが大慌て

『ニンゲン』どもから逃げるなか

恐れを知らないオオカミは

『ニンゲン』どもに立ち向かう。


知恵のはたらくオオカミは

火をふく棒などすぐ見抜く。


「素早く動いているかぎり

火をふく棒は怖くない!」


気づいた若いオオカミは

『ニンゲン』どもを逆に狩る。


一瞬のうちに忍び寄り

一瞬のうちに咬み殺す。


一人目二人目三人目・・・

手当たりしだいに咬み殺す。


わずかな油断も許されない

命をかけた戦いに

若くて強いオオカミは

なにより喜び感じてる。


おのれの強さを実感し

なにより喜び感じてる。


ある日若いオオカミは

火をふく棒をたずさえた

『ニンゲン』どもを追い求め

見知らぬ場所にやってきた。


きよらかな水をまんまんと

たたえた泉のそのほとり

雲つくばかりの老木が

雲つくばかりに立っている。


「こんな所があったのか」


暴れん坊のオオカミは

泉で渇きを癒しつつ

横眼で大きな老木を

ギロリとねめつけふと思う。


「これほど大きくなるまでに

どれほど長く生きたのか・・・」


「なんとみじめな年寄りだ」


「数え切れぬよな年月を

同じ場所から動けずに

地面に縛り付けられて

老いさらばえて行くなんて」


けれどもそんな考えも

まったくどうでもいい事と

あっと言う間に忘れてる。




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