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ミケの進化と皆でレベル上げ

「ん、確かにのう」

「吾輩、食事をとってまいりますが……テスラ様は何を召し上がりますかにゃ?」


 言われて洞窟の外を見ると、確かに暗くなり始めている。洞窟の中がぼんやり光ってるから気付かなかった。


「え? あ、うーん……分かんない」

「おや。てっきり吾輩と同じようにキノコや果物を召し上がるかと思ってましたにゃ」


 うーん。なんだろう、「食べる」っていうのは知識としては持ってるけど、然程そういう欲求が湧かないというか。お腹すいてない……っていうのが正しいのかな? そもそもわたしって何食べるの?


―特殊知識:魔王の食事が解凍されました!―


 魔王の食事。魔王は人間に似た形をしていますが大きく異なります。食事については経口摂取も可能ですが必ずしも必要ではありません。外部からのエナジードレイン……魔力吸収と呼ばれる行為がそれにあたり、これは意図的に量、方向などを調整できます。基本的に摂取した全ては体内で自己の魔力に変換される為、無駄が発生しないのが魔王の食事です。


 ふーん……。エナジードレイン、か。


「んー……なんか魔力食べるみたい。キノコ、とかも食べられるけど」

「僕達に似てるね、おじい」

「そうじゃのう。ワシ等スライムは何でも食べられるが、食べたものによって進化先が異なるとも言われておる。魔力の高いものを食べる程良いとは言われておるから、魔力を食べておるいのかもしれんな」

「え、じゃあおじいって土食べてたの?」

「そうじゃよ?」

「僕は色々食べてるよ!」


 うーん、そうなのか。だからおじいって洞窟に住んでるのかな……?


「では吾輩の分だけですかにゃ。少し寂しいですが食事に行ってまいりますにゃ」

「あ、うん」


 猫特有の動きで洞窟の外に出て行ったミケを見送ると、わたしとイチローはおじいを見上げる。


「じゃあ、レベル上げは明日?」

「その方がいいかもしれんのう。なあに、大丈夫じゃよ。明日に備えて、ゆっくりお休み」

「……うん。寝よっか、イチロー」

「うん!」


 わたしはイチローに乗ったまま、枯れ草のベッドまで運ばれていく。

 たっぷり重ねた枯れ草は、ちょっとフワフワ。保存の魔法とかいうのが上手く効いているのかもしれない。

 目を瞑ってみると意外に疲れていたんだろうか、眠気が襲ってくる。


「……おやすみイチロー、おじい」


 そう言って、私は目を瞑って。ぐっすりと眠って、目を覚ます。


「おはようございますにゃ、テスラ様」


 そうして起きたわたしの目の前に、黒い服を纏った二足歩行のミケが居た。


「……」


 思わず、無言でステータスを視る。


名前:ミケランジェロ

 種族:ナイトキャット

 職業:影騎士(魔王軍)

 レベル:37

 体力:120

 力:18

 魔力:550

 素早さ:90

 物理防御:20

 魔法防御:668

 技術:53

 運:10

 

 スキル:魔法制御(レベル4)、気配遮断(レベル3)、騎士道(レベル1)、影潜み(レベル1)、影操作(レベル1)


「ナイトキャット……?」

「おお、吾輩のステータスをご覧になりましたかにゃ!」


 嬉しそうに言うミケは、黒い服を自慢げに引っ張ってみせる。

 なんていうか、ミケの着ている黒い服は凄く立派だ。服自体が綺麗ではあるんだけど、黒い下地に金色の線が通っていて……なんだか分からないけど、ベルトと剣までついている。確かに見た目は「ナイト」っぽい、のかな?


「進化、したの?」

「はいですにゃ。昨日は4足歩行の定め故たいしてお手伝いもできませんでしたが、もはや心配ご無用。この二つの手がテスラ様をばっちりサポートいたしますにゃ!」


 そう言って差し出してくる前足……もとい手の肉球を、ふにりと押す。うん、ちょっと固いね。思ったより柔らかくない。


「何故不満そうな顔をなさるのですにゃ……」

「思ったより肉球が柔らかくないから……」


 癒しを求めて、近くで寝ているイチローに近寄って上に乗っかる。このもにゅっという感覚がとても気持ちいい。


「……ん? おはようテスラ。どうしたの?」

「おはよう、イチロー。ミケが進化したよ」

「え? ほんと?」

「おはようですにゃ、イチロー。吾輩の雄姿は如何ですかにゃ?」


 イチローはミケをじっと見ると、楽しそうにブルンッと震える。


「わあ、凄いねミケ! ねえねえテスラ、僕はいつ進化できるかな?」

「え、うーん。いつだろうね?」


 でも、イチローの進化かあ。どういう風になるんだろ?


「僕もかっこよくなりたいなあ……そうだ、テスラやミケみたいに二本足で歩くってい7うのはどうかな!」

「え、それはちょっと」

「やめたほうがいいと思いますにゃあ」

「えー」


 二本足で歩くイチロー。想像してみたけど……ちょっとやだ。


「そういえばミケ、その服とかはどうしたの?」


 昨日の荷物にはそんなもの無かった気がするけど、隠してたとか?


「進化したらもう着てましたにゃ」

「ふーん?」


 進化って不思議。どういう理屈なのかな……・。


―種族知識:ナイトキャットが解凍されました!―


 ナイトキャット。猫騎士。騎士道に目覚めた猫系魔物が進化する。個人の特性に合わせた服や装備を纏っているが、それは本人の進化時に自ら魔力で編み出した福産品である。大抵は高品質のマジックアイテムとなっており、人間に戦利品として狙われることもある。


 あ、そういう理屈なんだ。ていうか人間怖い……。

 わたしが人知れず震えていると、イチローが真似するようにブルブルと小刻みに震え始める。


「む? もう目が覚めておったのか。おはよう、皆」

「あ、おはよう、おじい」

「おじい、おはよう!」

「おじい殿、おはようございますにゃ」


 おじいはその大きな体を静かに揺らすと、ずいっと一歩前に出る。


「さて。では早速じゃが、レベル上げを始めようかのう?」


 うん、待ってました。わたしもイチローも歓声をあげて、おじいについていく。

 ……まあ、わたしはイチローに乗ったままだけどね?


 そうして辿り着いた場所は、広い草原。というか、昨日わたしとイチローが会った場所だ。

 並んだわたし達三人を前に、おじいがえへんと咳ばらいをする。


「さて、それではレベル上げについての話から始めるとするかの?」

「はーい!」

「うむ、元気でよろしい。ではミケ、レベルはどうすれば上がるかの?」

「はい、おじい殿。ゴブリン共の寝込みを襲って腹下し草の粉末でも水に混ぜてやれば大入りですにゃ!」

「うむ、実に卑怯じゃの!」

「お褒めに預かり光栄ですにゃ!」


 ちなみにだけど、ゴブリンは魔物じゃなくて亜人らしい。アルステスラ様から授かった知識によると、だけど。


「あ、ねえおじい。質問!」

「うむ、何かの?」

「ゴブリンって、確か亜人なんだよね?」

「そうじゃの」

「うん、そうだよね……」


 そう、ゴブリンは亜人のはずだ。なのに、どうしてアルステスラ様から授かった知識の中にわざわざ「ゴブリンは魔物じゃなくて亜人です」ってあるんだろう?

 ……ま、いいか。


「まあ、最初は身体を鍛えたりするとレベルが上がったりするのう」

「え? でもおじい、僕毎日走ってるけど中々レベル上がらないよ!?」


 そういえばイチローは昨日もわたし載せて走ってたもんね。


「うむ、そこじゃ。レベルを上げるには気持ちが大切じゃ。強くなりたい、という気持ちがの。人間がワシ等魔物を倒す事でレベルを上げるのも、命がけの戦いで肉体と精神共に鍛えられるというのが大きいのう」

「んーと……つまり、向上心が重要ってことだよね? その上で、自分を鍛える必要がある?」

「その通りじゃ。だからこそ、同じことだけやっていてもレベルは上がりにくいのじゃ。レベルの高い人間が強い魔物を探すのも同じ理由じゃの」


 なるほど、なんとなく分かった気がする。さっきのミケの例でいえば、寝ているゴブリンの住処に忍び込んで毒を混ぜるという「命がけの潜入」が成長……レベルアップに繋がったんだろう。それが日常になったら、たぶんレベルは上がりにくくなってただろう。


「というわけで、まずは体操から始めようかのう」

「え?」

「テスラはレベル1じゃからの。小さいし、あまり厳しい運動は辛いじゃろう」


 ……まあ、それは確かにそうかも。でもわたし、体操なんて知らないよ?

 いや、どういうものかは知ってるけど。言葉だけしか知らないし。


「では、三人ともワシの真似をするんじゃぞ!」


 おじいが大きく身体を震わせると、そう叫ぶ。なるほど、確かにおじいの真似をするだけならわたしにも出来るかも!


「では、まずは身体を大きく震わせて全身の運動!」


 え、ちょっと待って?

 ブルルルルン、と高速で身体を震わせるおじいを見て、わたしは思わず両隣の二人を見る。

 イチローは……ダメだ、参考にならない!

 ミケは……身体を微妙に左右に揺らして……そっか、これだ!

 わたしもミケの真似をして、身体を左右にブルルンと小刻みに揺らす。うう、結構きついかも?


「充分に身体を震わせたら、大きく右に伸びる!」


 み、右!? 体の一部分をぞぶっ、と伸ばしたおじいだけど……えーと、右に身体を伸ばせばいいのかな!?

 右手と右足を横にやー、と気合一杯伸ばすと、おじいの身体がひゅっと元に戻る。


「では次は大きく左に伸びる!」

「のびー!」

「とあー!」


 今度は左手と左足を。物理的に伸びるわけじゃないけど、気持ちは大切、のはず。


「次は上に伸びる!」


 右手と左手を頭の上にあげて、思いっきり背伸び。ぐぐっと、身長まで伸びた気分。


「そのままジャンプ!」


 ぴょーん、と跳んで。


「最後に全方向に伸び!」


 ぼんっ、と弾けるようにおじいの全身が全方向に伸びる。


「う、うえっ!?」


 慌てて両手を広げるけど、そこが限界。たいして高く跳んだわけでもないわたしの身体は無情にも地面に到達してしまう。ていうか、なにあれ。


―レベルアップ! レベルが2になりました!―


「あ……レベル上がった」

「うわあ、おめでとうテスラ!」

「おめでとうございますにゃテスラ様!」

「初レベルアップじゃの、おめでとうテスラ」


 皆が口々に祝福してくれる。素直に嬉しいけど、これは……。


「なんだか、疲れがとれた気がする……」


 さっきの体操で実は結構息が上がったんだけど、それも無くなってる。身体もなんだかスッキリしていて、とっても元気。


「レベルが上がると体力も回復するから、そのせいじゃろうのう」


 ……なるほど。そういえばおじい達を魔王軍に登録した後ステータス見てなかったけど、どうなったのかな?


名前:テスラ

 種族:魔王

 職業:魔王

 レベル:2

 体力:げんきいっぱい

 力:う……ん?

 魔力:いんふぃにてぃー

 素早さ:にゃんこをめざせ

 物理防御:ぷにぷにっ

 魔法防御:きゅーきょくまおうさま

 技術:あきらめないで

 運:せかいにあいされてる


 スキル:魔王


 ……なに、この間違い探し。ひどすぎない?

 レベルが上がってるのは分かるしなんか細部が違うのも分かるけど、全く強くなった気が……いや、1が2になったくらいじゃ仕方ないのかなあ。


「どうかの?」

「んーと……あんまり変わらない、かも?」

「そうじゃろうのう。レベル1つ程度ではあまり変わらんと言われておる。じゃが、分かる事もあるんじゃぞ?」

「そうなの?」

「うむ。どの能力が良く上がるかで、本人の適性が分かると言われておる。ワシの場合は体力型じゃの」

「ふーん……?」


 ということは、イチローも体力型……で、ミケは……あれ?


「ねえ、ミケって魔力型か素早さ型じゃないの?」

「にゃ?」

「だって魔力、凄い高いし……素早さも……」

「吾輩は騎士ですにゃ」

「え、でも」

「吾輩は騎士ですにゃ」


 うん、そっか。まあ、本人がいいならいいよね? 

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