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ゴブリン退治だ!

 そして、翌日。わたしは一つの提案をおじいにする。


「は? 今何と言ったんじゃ?」

「わたしがゴブリン退治する」


 そう、わたしの提案とは山の上のゴブリン退治を請け負う事だ。。目的は、勿論レベル上げ。いつか天の神が気分が変わって襲ってきても、どうにか出来るくらいに……そうでなくても、暴れる人間を駆除できるくらいに強くなっておかないといけない。


「……うーむ、しかしのう」

「レベルなら20だよ。なんとかなるよ」

「そうは言うがのう……」


 おじいは言いながら、困ったようにわたしを見下ろす。この小さい体は確かにおじいよりは頼りないかもしれないけど。


「なら、ミケにもお願いするから。それならいいでしょ?」


 ミケのレベルはわたしよりも高い。ついてきてくれるなら、凄い頼りになるはずだ。


「にゃー。テスラ様のお望みとあらばついていきますが、それならばおじい殿に任せた方が良いと思いますにゃあ」

「それだとレベル上がらないじゃない」


 わたしの目的はあくまでレベル上げだ。おじいに助けてもらったんじゃ、たぶんわたしのレベルは上がらない。ミケとなら、まだわたしも活躍できるからレベル上げのチャンスも充分にある。


「そうは仰りますけどにゃあ。テスラ様、足は速くなりましたかにゃ?」

「え?」

「ゴブリン共の強さは連携力と卑怯さと、足の速さですにゃ。一撃で全部吹っ飛ばしたと思っても、回り込んだ奴が残ってる可能性もありますにゃ。その時に逃げられますかにゃ?」


 ……確かに、足の速さは全然変わってない。ちょっとくらい速くなった気もするけど、あくまで「気がする」程度のものだ。


「……でも」

「だったら、僕が一緒に行けばいいよ!」

「え?」

「む?」

「おや?」


 わたし達が振り向いた先に居たのは、まだ寝ていたはずのイチローだ。


「テスラが僕に乗れば、ビュンビュン動けるよ。そうでしょ?」

「……確かに。それならいける気もしますにゃ」

「ううむ、そうじゃのう」

「え。で、でも!」


 わたしの頭をよぎるのは、イチローが砕けてしまったあの光景。またイチローがああなったら。そう考えてしまって、思わず言いかけて。


「大丈夫だよ、テスラ! 僕、強くなったから! 今度はテスラを守れるよ!」

「イチロー……」


 そんな事を言うイチローに、私の否定の言葉は止まってしまう。

 今度は、とイチローは言った。あの死んでしまった時の事を、イチローはたぶん覚えていない。なのに、イチローは「今度は」と言った。

 覚えてないのに、記憶の何処かに何かが残ってるんだろうか?


「まあ……そうじゃの。イチローとミケと一緒ならば良い……かのう?」

「やったー!」

「お任せされましたにゃ」


 イチローとミケが頷いて。わたしもしばらく悩んだ後に、ゆっくりと頷く。

 ゴブリン退治。わたしとミケはイチローに乗って、おじいの洞窟から出発する。


「で、何処から登ればいいのかなあ」


 おじいの洞窟の入り口から見上げた山は、断崖絶壁。とても上り下りが出来るような状態じゃない。でも、ゴブリンが来たなら何処かから行けるはずだよね。


「とりあえずぐるっと回ってみればいいと思いますにゃ」

「そうだね……イチロー、お願いできる!」

「まかせてー!」


 イチローはばむん、ばむん、と力強い音を響かせて跳ねていく。

 ばむん、ばむん、ばむんっ。進むイチローに乗って、私とミケは周囲に視線を巡らせる。

 山に登るルート。山から下りてきているゴブリン。見逃さないように、周囲を見回して。


「あ……見て!」


 ぐるりと角を曲がって、しばらく進んだ先。他と比べると傾斜の緩い場所から、ゆっくりと降りてくるゴブリンの姿を見つけた。


「ミケ!」

「はいですにゃ!」


 イチローの身体を蹴って跳んだミケの剣がゴブリンの首を一気に斬り飛ばす。ぐらりと倒れたゴブリンの先には、山を下りてくる最中の別のゴブリン数匹。


「イチロー、お願い!」

「うん!」


 わたしを乗せたままイチローは走り、その上でわたしは風の原初魔法を構築する。

 イメージするのは、今見たばかりのミケの斬撃。相手を斬り裂くイメージを込めて、解き放つ。


「斬り……裂けええええええ!」


 腕を振る動きに合わせて、風の刃がゴブリンへと飛び2体を切り裂いて。続けて高く跳んだイチローの体当たりが、残る1匹のゴブリンを弾き飛ばした。倒れて強く身体を打ったゴブリンはそのまま動かなくなり……他にゴブリンが残っていない事を確認すると、わたしはふうと息を吐く。


「なんとかなったけど……もう次が降りてきてるんだね」

「どうですかにゃあ……この数だと、どちらかというと連絡か様子見……といったところではありませんかにゃ?」

「様子見?」

「はいですにゃ。先遣隊がサボっていないかの確認……といったところではないかと思いますにゃ」


 そして、そういうものが出ると言う事は……あの集団はやっぱり先遣隊で、進化体を部下と出来るようなゴブリンが居るのだとミケは教えてくれる。


「どうしますかにゃ? 今なら戻れますにゃ。ゴブリンの進化体を先遣隊に出来るとなると、相当強いゴブリンですにゃ」

「行くよ。おじいには頼らない」


 そう、それは変わらない。わたしは、もっと強くならないといけないんだから。守られるばかりじゃ、いられない。


「……仰せのままに、ですにゃ」

「じゃあ、此処登るんだよね?」

「うん。ミケ、早く乗って!」

「はいですにゃ」


 ミケが私の前に乗ったのを確認すると、再びイチローはばむん、ばむんと跳ねる。

 わたし一人じゃ辛い坂も、イチローに乗っていると凄い楽。こんな楽してたらレベルも上がらない気もするけど、正直に言って一人で行っていたら途中で疲れて戦えなくなってたかもしれない。そう考えると……。


「うーん……」

「どうしたの?」


 心配そうに聞いてくるイチローに、私は「えっとね」と返す。


「わたし、まだまだだなあ……って思って」

「そうなの?」

「うん。わたし一人じゃ、こんな坂登れないし。たぶん歩くだけでも疲れちゃうと思うし……」

「じゃあ、僕と一緒だね!」

「え?」

 嬉しそうなイチローに、思わずわたしはそう聞き返す。


「だって、僕もまだまだだから! テスラは強い魔法が使えるけど、速く走れないでしょ?」

「うん」

「僕は魔法は使えないけど、速く走れる! でも僕もテスラも、いつかは両方できるかもしれないよね」

「そう、だね」


 そうかな。どうだろう。わたし、そんな風に成長できるかなあ?


「でも、それまではお互いに足りないところを助け合って強くなれるもの! それって、きっと凄く楽しいよね!」

「……うん」


 そうだね。そうだよね。確かにそれは、きっと素敵な事だ。わたしとイチローなら、お互いに助け合える。


「よし、行こうイチロー、ミケ! ゴブリンなんか、さっさとやっつけちゃおう!」

「うん!」

「はいですにゃ!」

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