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アルステスラの願い

こんばんは、天野ハザマです。

ほのぼのスローライフを書きたかった……はずなんですが。

でもスローライフって人生をゆったり楽しむものらしいので、たぶんいけるはず……!

頑張れ私! どうぞ応援よろしくお願いいたします!

 世界には、主に三種類の人間がいます。

 普人。神に最初に創られた、あらゆる全ての祖たる人間。

 何にでもなれるけど、特化した才能は有りません。


 亜人。他の生き物の特徴や性質が混ざっていたり、普人とはかなり違う形をしていたり。そういう、ちょっと「ズレ」た人間。

 主に身体的能力に優れていて、スペシャリストになりやすいです。


 魔人。三つの種族の中で、一番最後に生まれた人間。世界に満ちる魔力を感じ取る能力に優れ、魔法と呼ばれる技術に長けています。


 三つの種族は「普人王」「亜人王」「魔人王」と呼ばれる王によって統治されていました。

 でもある日、王様になりたいと思った一人の普人が切っ掛けで普人の国は真っ二つに割れてしまいます。

 ……そして、それが始まりだったのでしょう。新たな普人王は亜人の国に戦争を仕掛け、そこから百年以上続く戦争は始まりました。国境が進み、戻り。色んな悲劇も生まれました。誰もが疲れて、涙も枯れて。なんで戦っていたのかも分からなくなる頃に、「それ」は生まれました。


 勇者。そう呼ばれる、異常な能力を持つ者が生まれたのです。常人とは違う身体能力や、様々なスキルを操る勇者は二人。

 すなわち、普人の勇者アベルと亜人の勇者カイン。二人の勇者は激突し、やがて普人の勇者が勝利しました。こうして戦争は終わり、普人は亜人の「上」に立ちました。戦争を終え莫大な領土を手に入れたこの時の普人王は、今度は魔人の領土が欲しくなりました。

 だから、亜人との戦いの歴史を改竄したように魔人を悪なる存在と宣言し戦争を仕掛けました。

 いえ、戦争などという言葉は使いません。「討伐」と称したのです。勇者アベルを唆し莫大な軍勢を率いて攻め込んで。そんな万能感に浸っていたからこそ、その可能性には気付きませんでした。自分達に与えられたものと同じものが、魔人にも平等に与えられる可能性に。


 そうして、魔人の勇者デルフリートは生まれました。圧倒的な攻撃魔法を操るデルフリートに普人軍は蹴散らされ、しかし同時にアベルによって魔人軍も甚大な被害を受けました。そして激しい戦いの末……アベルはデルフリートによって討たれ、しかしデルフリートもまた深い傷を負いました。

 互いに戦える状態では無くなった普人軍と魔人軍は講和条約を結び……けれど、その事実は知らされませんでした。普人王は魔人を「いつでも滅ぼされかねない危険な生き物」と考えるようになったし、魔人王は普人王を……いえ、普人を危険な生き物と見做していたからです。

 そうして、歴史の真実を誰もが忘れたままに現代に至るのです。


 ……ちなみに、ちなみにですが。そんな彼等とは違う生き物も世界には存在しています。

 たとえば、犬とか猫とか。鹿とか豚みたいな獣。その中でも馬は、普人に乗り物として利用されていますし犬や猫は可愛がられています。豚や牛みたいに食用にされている獣も居ます。これらは主に普人や亜人の生息域に居ます。


 そして、それとは違う生き物。魔物と呼ばれる生き物も居ます。

 スライムと呼ばれる軟体生命体。ワイルドキャットと呼ばれる、猫のようで猫ではない魔物。ゾンビやスケルトンと呼ばれる、死体から生まれると信じられる魔物。ゴーレムと呼ばれる、自然物から生まれる特殊生命体。一部の例を除けば嫌われる性質を持ったものばかりです。

 けれど、それも仕方がありません。彼等は、世界に溜まった「悪い心」が形になったものだからです。長く続く戦いの中、自分達こそが正義と信じて戦う人間達は、自分の中に悪はないと信じていました。認められなかった「悪」は互いに押し付けられあって、やがて「要らない子」として世界に留まりました。それらはやがて世界に染み込み、魔物として生まれました。


 その始まりからして呪われた魔物は、嫌われ者です。たとえその始まりを人間達が知らずとも、その外見は邪悪な何かによって生み出された「人間の敵」に見えたのでしょう。言葉が通じなかったのも、その一助となったかもしれません。人間達は魔物の駆除を始め、魔物達はそれに抵抗します。やがて人間対魔物という図式が互いに常識となり始めた頃、何処からか「魔物は魔人が生み出したものだ」という噂が流れ始めました。

 実際、魔物を何かに利用できないかと実験している魔人も多数いたので全くのデマというわけでもないのですが……こうして一括りに「魔族」と呼ばれる下地が出来上がりました。


 でも、です。当の魔物からしてみれば、そんな事は知ったことではないのです。なんか言葉の通じない怖い連中が襲い掛かってくる。国どころか、町や村という互助会すら持たずに殺されていく魔物達の恐怖たるや、如何ほどのものか。

 何故人間達が自分を殺すのかすらも分からないのです。一部の魔物は「殺される前に殺せ」が習慣化しましたが、そうすることも出来ずに人間の暮らさぬ辺境へと逃げた魔物も多数いました。


 何故自分達は殺されなければならないのか。何故そんなに怖い感情を向けるのか。

 何故、何故。

 何故、自分達は愛されないのか?

 絶望の中、魔物達は大きく二つに分かれます。

 ある魔物達は、奪いたいと考えました。お前達が持っているものを自分達に寄越せと、そう叫びました。

 ある魔物達は、与えてほしいと考えました。誰にも愛されない自分達だけど、それでも愛されたいと願いました。


 だから、貴方は生まれました。

 貴方は、魔王は。全ての魔物を愛する為に生まれてきました。

 だから、行きなさい私の愛しい子よ。神にすら愛されない魔物達を、貴方が愛してあげてください。

 その為の全ての知識は私が与えましょう。

 私はアルステスラ。この世界そのものであり、世界に根付いた意思。天より来たる神とは真逆なる者……。

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