ばいばい、またね《2》
ずっと暮らしていた場所で起きた出来事。
大きな地震。
発生した瞬間は、何が起きたのだろう。が、正直な気持ちだった。
揺れがおさまって、また揺れて。おさまったと安心する暇がないほど、何度も激しい揺れを感じた。
沸かしたお風呂が気になって、浴室に行った。
行く最中にも揺れて、浴室の扉を開けた。
湯槽に蓋を閉めるのを忘れていたことにも気にしなく、浴槽に溜めたお風呂のお湯が波をうって揺れていたのが見えていた。そして、そのまま入浴を済ませた。
こんな一大事の状況に置かれていたのに、わたしが気になっていたのは会社のことだった。
明日は、こんな状況になったから忙しくなる。
やるべきことは、ちゃんとしなければならない。どんな対応をするべきかは、会社の指示を承けてからになる。
出勤は、必ずしないとーー。
本当に、仕事のことばかりで頭がいっぱいだった。
明日があると、その日は就寝をした。
朝がきて、いつものように起きて身仕度をする。
あれだけ凄い揺れだったのに、部屋に置いている家具はずれていたけれど、倒れていなかった。
おばちゃんを、おばちゃんの写真を見るもした。
ちゃんと、まっすぐと。カラーボックスの上に置かれていた。
わたしは「行ってきます」と、手を合わせておばちゃんに挨拶をすると玄関に行って靴を履き、玄関の扉に鍵を掛けたーー。
出勤したのに、結局は自宅に戻ることになってしまった。
会社近くのバス停までバスは運行していたのに、会社に着いてたった数分で帰宅をしてしまうことにがっかりした。
ーーひーちゃん。お仕事が大切なのはわかるけれど、今やることは何かを考えようね。
おばちゃんがいたらきっということだと、帰る為のバスに乗る為に待っていたバス停で、考えたーー。
***
ご無沙汰してます、陽菜里の叔母です。
身体は無いですが、皆さんとお話しが出来ることは嬉しいですと、お伝えします。
あ、この事は陽菜里にはくれぐれも内緒にしていてくださいね。
では、本題に入ると致しましょう。
陽菜里は凄い地震を経験した。
本当は陽菜里に会ってお話しを聞けたら良いでしょうが、私はとっくに身体が無いので見たままのことを語るしか出来ません。
でも、陽菜里は強かった。
さぞかし怖かっただろうに怖いなんて関係ないという様子が逞しいと、感心しました。
此処までは、あくまで私の陽菜里についての解釈です。
身を震えさせるの体験をした瞬間は、感覚が麻痺していて感情を隆起させるは無理だったと思います。
私は心配しました。
陽菜里は、今はまだ無我夢中で時間を過ごしているけれど、日常の落ち着きを取り戻した頃が危ないと心配しました。
ひーちゃん、ごめんね。
おばちゃんは、ひーちゃんを黙って見ることしか出来ない。手を握ることも、抱き締めてあげることさえ出来ない。
でも、お願い。
疲れたからと、おばちゃんのところに行きたいと思うことはしないでね。
少しだけ。少しだけでいいから、ひーちゃんの今をおばちゃんに見せてねーー。




