#1 冷淡な始まり
初めまして、紫織まると申します。
初投稿にして初BL小説です。
まだまだ稚拙だとは思いますが、是非アドバイスなどございましたら感想にてよろしくお願いいたします。
生年月日 平成10年 8月31日
年齢 15歳
性別 男
身長・体重 175㎝ 64.3㎏
出身中学 市立御波中学校
出席番号 1年5組14番
得意科目 現代文
苦手科目 数学 物理
趣味 読書 軟式テニス
好きなもの───
「神崎 昭君。堅すぎますよ、この自己紹介。」
その一言と共に、自分の目の前に座る男の眼鏡がゆるりと揺れた。
担任教師、志水春樹と初めて面と向かって話したのは実にあのときであった。
その日は4月28日は俺がこの桜花第一高等学校へ晴れて入学してから丁度3週間が経過した日。
小学生、中学生と勉強漬けの毎日はようやく一段落のついた頃である。
しかし入学して1週間が経ったとは言え、まだ慣れることも出来ていない高校生活は実に窮屈なものであった。
青春真っ只中の高校生。
県内有数の進学校とはいえ自由な校風と、何よりもすべてに全力を投じるこの高校故の文武両道の校訓、他校に比べて抜きん出た成績と明るい雰囲気は元々俺には合わなかった。と言うのがその結果である。
そんな中の眼鏡に表情も堅く、人と視線を合わせることを好まないバカ真面目な考えしか持つことのできない寡黙。それが俺だった。
「怖い。」
「口に出さねえとわかんねえよ。」
「ちょっとおかしいんじゃねーの。」
嘲笑、罵り、隔たり。
そんなものはもう慣れた。
そして、高校生になっても不幸なことに俺の席は中央の右列一番前。
気づいたら既に自分の後ろの方の席には友人グループができていて、せっかく友好的に話しかけてもらった同級生にも冷たく接してしまい、だからと言ってこの性情で誰かに声をかけられることもなく
結果、俺は教室に一人、残されたままとなった。
「部活登録は無所属…。趣味がテニスとあるのですから君、テニス部に入ったらどうですか?」
再び目の前の先生の口が開かれた。
「いえ、あれは硬式です。軟式テニスしか僕には出来ません。」
それに、先輩などの部員と話せる自信もない。
「高校生から始めるという考えもいいと思いますけど。しかしどちらにせよそれは勿体ない事です。」
そう言って面と向かって話していた先生は眼鏡をあげた。
第一回桜花第一高等学校個人面談。
一年生にとってこれが初めての進路アンケートを使った担任と二人きりで話す機会になる。
どの教師も大体一人5分長くても10分で終わらせるはずなのだが、俺の場合始めてから既に20分は経っていた。
話すことは勉学、生活、そして部活関係のことなど。
しかし先程から先生は何か引っ掛かる話し方をするのだ。まだ本題のありそうな俺の顔を伺うような、そんな言い方である。
「先生、本題は何ですか。」
痺れを切らした俺はそう言って少し鎌をかけてみた。
すると目の前の先生は驚いたようにこちらを見て、親指と中指で眼鏡の両端を押し上げるようにした。
「いえ、本題も何もありませんよ。」
外れた。
何なんだこの教師は。
面談を終えていない生徒もいるのだから、それならさっさと面談を終わらせてしまえば良いものの…。
もうそろそろ帰らせてくれると思った矢先、代わりに優しそうな雰囲気のこの教師から発せられたのは思わぬ言葉だった。
「それより君、友人はいるんですか。」
「……。」
それも思った以上に直線的な。
思わず俺は閉口した。
膝の上にのせた握り拳の力が強まる。
「もう一度聞き直します。どうですか、学校生活は。」
目の前に座る教師は、冷たい目でプリントを眺めなから極々平淡な口調で言った。
いない。自分の性格を直したい。
なんて言えるはずがない。
しかしここでその事を相談することができるのなら、自分の悩みは少しでも解消することができるのかもしれない。
一方、自分の可笑しいプライドと、この瞬間ふと働いた妙な反抗心、それに加え志水春樹というこの教師に対するごく自然的な嫌悪感が脳内を横切った。
そして俺の自分勝手な無言の圧力に追い詰められた俺は結果、
「……すみません。この後塾があるんです。」
──現実から逃げた。
言えない。
言えないことにこんなに苦しめられなんて。
小学生や中学生とは状況が根から違う。
自分で人間関係を管理していかねばならない。
俺は先生の返事を聞く前に、逃げるように椅子を立った。
「そうですか。少し長くなりました。」
背後で先生のそんな言葉を聞きながら「ありがとうございました」と小さく挨拶をすると俺は静かに部屋を出た。
先程も書いた通り俺が先生と直接話したのは事実これが初めての事であった。
そしてそれはごく冷たく冷淡なものに終わった。