中型8t限定
_バイクの免許をとります。
はあ?
_バイクの免許をとります。
それは聞いた。
そうじゃなくて急にどうした!?
弓道がどうのこうのは、いいのか?
_近くに道場がありませんでした。
そうか。……よかった。
_はぁ?
い、いや。残念だったな。
_ええ。ですのでバイクの免許をとります。
そ、そうか……。
いやいや。ちょっと待て。原付は乗ったことあるのか?
_原付……原動機付自転車……原付。
そう。あれはまだ地球がドロドロとした……
ソコからだと長くなりそうだな。
_おそらく地球が冷えて固まり車の免許を取ってまもなくの、19歳ぐらい。
まだ色々ピチピチぱつぱつしていて、肌が水を弾く根性があった頃。
見たかった!十代の頃ぜひ見たかった!!
_黙れ小僧!!お前に今の肌が救えるのか!!
すんません。
_忘れもしない梅雨明け宣言後の、ある暑い昼下がり。
その頃、原付で通勤していた兄に試しに乗ってみるかと誘われた。
自転車だ、自転車。エンジン付いた自転車。そう書いてあるんだから簡単だ。
_その説明を聞くと、なんだか乗れそうな気がしたのです。
おいおい。こえーな。
_駐車場でエンジンを掛けてもらい軽く跨り、いざ。
_なんということでしょう。
1歩も動いていないというのに、バイクだけ2メートル先に。
これが乗車拒否というものでしょうか。
当時は不景気で超買い手市場。立場が弱く足元を見られてはいましたが。
世知辛い世の中です。
いや。違うから。世の中のせいにすんな。
アクセル開きすぎてウイリーしてバイクだけ吹っ飛ぶ。
初心者にありがちな事故だから。
_照りつける太陽のもと立ちつくす19歳の乙女の心が酷く傷付いた瞬間でした。
おいおい。傷付いたのは、お前の兄貴の原付だろ。
謝ったんだろうな……?
_こうしてカップめんを作る時間より短く、ソーメンを茹でる時間よりは長い
過酷な挑戦は幕を閉じたのでした。
……つまり謝ってないんだな。
_つづく。
……えっ!?続くのか?