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21/29

*慎重に繰り返す

相変わらずの部屋。


血に染まった家具や壁までそのままだ。

さすがに遺体は処分したようだけれど、防具や刀は前と同じく棚に綺麗に並べられたまま残っている。

後始末をしてくれた彼女には感謝しないといけないな。




長剣と短剣を手に取る。


防具は必要ない。愛剣だけ拝借する。

これがないと駄目なんだ。確実に失敗してしまう。



必要な物を手に入れた僕は空間を開くと、ミユちゃんのいる一時拠点へと戻る。

彼女はまだ帰ってきていないようで安心した。


泥棒と同等の行いをしてきた事がバレれば何を言われるか……。いや、何を言われるかなんて分かりきっている。以前バレた時なんて、とてつもなく面倒だった。主に説教が。










「ただいまー。」



噂をすれば何とやら。

ミユちゃんが帰ってきた。



「うん、おかえり。街はどうだった?」


「んー普通。」


「良い事もあったし、悪い事もあった。プラスマイナス0(ゼロ)って事かい?」


「……まぁね。塔から出て以来、力の調節が出来るようになったみたいで、人混みでもあんま煩くないかも。」



ミユちゃんは“人の心が読める”という<呪い>を持っている。

<呪い>は所謂『加護』の事だが、“人が持つべき力ではない”として昔から<呪い>と呼ばれている。

そして今まで彼女はその<呪い>をコントロールできず、人混みでは特に苦しんできたらしい。



「それで悪い事は、男共には絡まれた、と?」


「そそ。チラッと心覗いたら、下心満載で引いたゎ。」


ミユちゃんのスタイルは割りと良い。スラッとした体型、それなりに大きい胸。

一人でこの街を歩けば、男共の餌食になるのは確実。

だが、今こうして彼女が無事ということは、言い寄ってしまった奴等が無事ではないということだろう。

自業自得。


「ま、それがこの国……バードリ?の特徴なんでしょう?」


「うん。実力主義、武力国家。強い者が上へ立ち、弱い者は従え。それが嫌なら嫌なら強くなれ。それがバードリ国。」


「そして変態も多い。」


「まぁね。」



苦笑いの僕と、爆笑のミユちゃん。




「でもなんか嫌かな、そういうの。『力が全て』ってさ。……偽善かもしれないケド。」



しばらく笑い転げた後、照れたように呟くミユちゃん。

はにかむミユちゃんにつられて、僕も目尻が下がる。



「でも、こういうのもあるんだよ。『強き者は弱き者を守るべし。弱き者を傷付ける事は禁ず。』」


「へぇ、そうなんだ。意外ー。強ければ威張って良い、みたいな感じたと思ってた。」


「ハハハ。僕も最初来た頃は“強いが偉い”な国だと思ってたなー。」



遠い昔の話。

思い出せば、チクリと心が痛む。


キラキラと楽しかった()はもう過去の話。

もう元には戻れない。




「あ、ねぇねぇ。これからどうするの?」


暗く沈みかけた僕の心とは対照的に、ミユちゃんは輝くような笑顔で聞いてくる。



「そうだな……。」



タイムリミットまでは後3ヶ月半。

すべての原因が分かっている訳じゃない。



それでもとりあえず、今出来ることは……っと。



「まずは冒険者登録でもしようか。」



キョトンとはてなマークを浮かべるミユちゃんに、僕は微笑んだ。


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