*普通みたいな異質な日
見慣れた天井をボンヤリと眺める。
――胸糞悪い夢を見た。
俺は嫌な物を吐き出すように、ため息をついた。
夢の中で言われた『愛してる』。
その言葉が、妙に耳から離れないでいた。
「チッ……。」
「カル、起きたのですか?」
舌打ちが聞こえたのか、ベッドの上段から下を覗きもせずに声を掛けるのはルームメートであり、よくつるむ仲であるうちの一人、グィーモ・サティヌ。
頭が良く成績トップの秀才。
風魔術と水魔術が得意で、剣術も大得意。その実力は学校内でも上位。
まさに文武両道。
ついでに有名貴族であるサティヌ家の長男でもある。
サティヌ家の血筋の金髪緑眼で顔立ちも良いが、少々無愛想なのが偶に傷。
もちろん裏では、『偶に見せる笑顔が素敵』とか『知的で格好いい』等と女子にはモテモテ。
対して俺、カルサンス・アネンは、他人に対して自慢できるようなことなど一切無い。
能力は、ほぼすべてにおいて普通かそれ以下。
家柄も、ただの寂れた村の一般農民。
赤髪黒眼。顔立ちも普通。
それなのに、何故グィーモのような出来の良いお坊っちゃまと、俺のような一般人が友達していられるのか疑問だったりする。
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「起きたのならさっさと着替えて食堂行くぞ。もうすぐ朝食の時間だ。」
「うぃうぃ。」
低い天井に頭をぶつけないように体を起こし、ベッドから這い出る。
天井というのはもちろん2段ベッドの、上の段の床の事だ。
微妙に低くて、ベッドに腰掛けると姿勢によっては頭が天井にぶつかる。
俺はいつものように顔を洗い髪を整え、掛けてあった制服を着る。
そしてグィーモを含め、他部屋のユンナス・フィクター、シュツライン・アティオと共に食堂へ向かった。
序章終了。