依存
「ユン、ユン。起きてよ!」
「ぅぅ……んー。」
「ユン!」
ゆっさゆっさと揺り起こされ、僕はうっすらと目を開ける。
僕を覗き込んでいたのはフワフワした緑色の妖精さん。
「ぅー。……ほゎ?どーしたの?フゥ~。」
「ユン!ご主人様がなんか大変な事になってるみたいなの!」
「ほぇぇ!?カルが??な、なんで?」
「分からないよ。取り敢えず来て!」
「ユン、上に何か羽織った方がいいですよ。……全く、こんな時間に非常識な。」
グィーモに言われて、慌てて上着を着る。
時計の短い針は3を指していた。
「で、どこに行けば良いんですか?」
「……あっち。」
グィーモの問いに、イーフが壁を指差す。
「それじゃ、誰も分からないじゃん!」
「……じゃあ、あっち。」
「そっち、ドアだよね?方向全く別になってるよ!」
「……ん、……フゥが教えれば良い。」
「君のおかしな行動で時間無駄にしちゃってるんだよ?分かってる?ユンとグィーモを連れてh――」
「フゥ~、どこ行けば良いのー?」
「……シュラの部屋だよ。フレィム達がそこに運んでくる。……もぅ、着いてるかもしれないよ。」
フラフラと疲れたように飛行するフゥを先頭に、僕達はシュラの部屋へ向かう。
「カルぅ!!」
シュラの部屋の扉を開けたけど、カルはいなかった。
「おい、静かにしろ。寮母に怒られるぞ?」
「ぅぅー……。」
「シュラ、カルはどこですか?」
「知らね。連れてくるとか言ってたぞ?」
面倒くさそうにシュラはベッドに寝転がる。
「……あ、あ、あの、ベ、ベ、ベ、ベッド貸してくださいッ!!!」
「あん?」
「はぅ!」
どこからともなく現れたクリアはシュラに睨み付けられると、小さく丸まって震える。
「……わ、悪ぃ。急だったもんだから……つい。」
「…………べ…………を……。」
「うん?」
「ベベベベベベベベッどをををををををを…………かかか貸してくださいいいいい……ご、ご主人様ががががががががあああああ……。」
「お、おう……。」
勢いに乗せられてシュラがベッドから降りるのとほぼ同時に、突如壁からカルを抱えたみんなが出てきた。
「到着~ッ!!」
フレィムが元気よく宣言する。
ベッドに寝かせられたカルは、ボロ雑巾のようにズタズタボロボロ。
あちこちが切り裂かれ、血がいっぱい出ている。
「フレィムは楽しそうだね~。」
「うるせぇ!てめぇらが落ち込みすぎなんだろ?!」
「喧嘩している場合じゃないよ!この傷――」
「グィーモぉ~、シュラぁ~、治んないよぉー……。」
いくら魔力を注いでも、傷は全然塞がらない。
「……ユン君、止めな~?もぅ魔力尽きちゃってるよね~?体壊しちゃうよぉ~。」
「……ぅぅ。」
「はぁ?!」「はぃ?!」
シュラとグィーモが驚いてるけど、どうでも良い。
「カルぅ~。いなくなっちゃやだぁぁぁ~~~!!」
我慢できなくなって、血塗れのカルに抱き付く。
カルがいなくなるなんて嫌だ。絶対に嫌だ。
「おい、無属妖精。部屋の周りに結界張ってくれ。防音付きでな。それと、ベッドの周りに魔力遮断のを頼む。」
「は、は、はいぃー……。」
「グィーモ。ユンをこいつから剥がすの手伝ってくれ。」
「わかってます。」
「嫌ぁ~だー!!カルと一緒、一緒にいるの~。」
「一生一緒なんて無理だろうが。」
「ずっと、ずっと一緒なの〜。離れるなんて嫌ぁ~。」
「同じ部屋にいるでしょう?あんな酷い怪我では何処へも逃げません。」
「早く、僕が治してあげないと、カル死んじゃうぅ~。血ぃ、いっぱ出でてるよぉ~!僕が治すの~。早く、早くしないと!嫌だ、離してぇ!」
「落ち着け、ユン。」
「魔力は残っていないのでしょう?」
「嫌だ、嫌ぁだ~!!僕が、僕が治すのぉ~!カルはいなくなっちゃ嫌ぁだ~!」
しばらく僕は頑張ったけど、結局二人の力には負けてカルから引き剥がされちゃった。