~それでも彼の愛は突撃訪問してくる~
というわけで、すみません。ついつい連載をもう一個始めてみました。
『夢の中まで一途な溺愛王子様』という短編を元に、連載ものとして、
まったり進行していく予定です。よろしければお付き合いくださいませ。
「あ~!もうっ!腹が立つ腹が立つ~!!」
夢の時間が終わり、『アイツ』の手の届かない世界に戻ってきた。
アルパーノ公爵領、私の暮らす故郷とも言える場所であり、ここから王都は遥か遠くの地にある。
滅多に足を向けない王都。その中枢ともいえる王宮には、……私の天敵がいる。
出来ることなら顔も見たくないし、声も聞きたくない。
けれど……、敵は厄介な力の持ち主だった。
会いたくなかろうが、問答無用で睡魔と共に夢の中に引き摺り込まれ、
一日に何度も何度も顔を合わせる日々。
拒否権はないのか?と一度聞いてみたが、
『君に会えない日なんて、生きてる意味もない一日に等しいよ。
俺が会いたいから会いに来てるんだ。
そんな健気な俺を、拒否するの……?』
私の昔からの悩みであった、謎の睡魔とへんてこりんな夢を術で仕掛けていたのが
自分だと知られても、
敵は勢いを弱めるどころか、さらに性質の悪い存在に変貌してしまった。
もう、我儘王子ここに極まれりとでも言えばいいだろうか。
一度会ってぶん殴りに行ってやる!と宣言したあの日からも、
結局、私が夢に引き摺り込まれるのは変わらなくて……。
それどころか、
『ねぇ、まだ来ないの?俺のこと殴ってくれるんでしょ?
その柔らかい手で、怒りに歪んだ顔で俺だけを見てくれるんでしょ?』
……どこをどう間違って、そんな歪んだ育ち方をしたんだ、次期国王陛下よ。
そう、最悪なことに、私が天敵と見なしている男は、
この王国を治める最高権力者の息子であり、次代の王なのだ。
昔は、事情があって引きこもりの一途を辿っていた王子。
一人の幼い少女との出会いにより、成長過程を大きく狂わせた、内気で大人しかった少年。
王子、――セレインは、私に対して並々ならぬ深い執着心を育んでいた。
それは、彼のもつ能力、自分の夢を対象者の夢に繋げ、無理やり相手の夢に土足で上がり込むという、
最低最悪なものを行使するという形をとり、目下私の最大の悩みの種となっている。
『生身の君は、きっと抱き心地も気持ち良いんだろうな……。
俺の手に触れて、形を変える君の肌の感触……、
ふふ、……想像しただけでも、待ちきれなくなるよ』
悩みの種どころか、とっくの昔に毒々しい花を咲かせている気がする。
むしろ、触っただけでこちらの手が腐敗しそうな毒花……。
セレインの脳みそがイカレているとしか思えない言動の数々を思い出し、
私は背中に強烈な悪寒がゾクゾクゾクッ!と走るのを感じ、
震える身体を両手で抱き締めた。
――コンコン。
「どうぞ」
「失礼します。……リデリアお嬢様、どうなさったんですか?
お顔の色が悪いようですが……」
「だ、大丈夫。ちょっと思い出し酔いしただけ……」
部屋にティータイム用のカートと共に入ってきたのは、私のよく知る少年だ。
綺麗というよりは可愛いと形容した方が似合う顔立ちに、
声変わりしてもどこか甘い響きを帯びる中高音。
きっと女装でもさせたら、男だなんて絶対にバレない逸材だろう。
ちなみに、私専属の侍従を担当しており、
私の父であるアルパーノ公爵からも、頭の良い素直な子だと評されているほどの、
真面目で忠誠心溢れる家人だ。
名は、フィーシュローレル・エルゼ。
「ところで、フィーシュ。
準備の方、進んでる?」
「あぁ、王都への旅行の件ですね。
滅多に遠方になんて出たことのないお嬢様でしたので、
皆、はりきって旅支度を進めておりますよ」
「そう、悪いわね。急に王都なんて遠い場所に付き合わせることになって」
「いいえ、お嬢様の行かれるところでしたら、僕らはどこまでも御一緒いたします」
「ありがとう」
テーブルの上に淹れ立ての紅茶を私に差し出しながら、
フィーシュは、柔らかに相好を崩した。
いくら、あの変態王子を張った倒しにいくためとはいえ、
王都までの道のりは遠い。
必要最低限の人数で向かう事にしたとはいえ、
実は、その旅の目的を、家の者たちに話していなかったりするのだ。
まさか、次期国王陛下に渾身の一撃をお見舞いしに行きます!
とか言った日には、思い留まるように皆に説得されるだろう。
王家の者に手を出すなんて、気が触れたとしか思われないに違いない。
勿論、私だって、行ってすぐにセレインの顔面に右ストレートを喰らわせようなんて
思ってはいない。何の用意もなく暴力になど及んだら、それこそ我が家の危機だ。
だから、王都に着いたら、まずは、セレインではなく、国王陛下に謁見を賜ることに決めていた。
お父様には、今までの事の詳細は全て先日話してある。
昔から悩まされてきた、謎の睡魔。
その原因が、幼い頃にお父様に連れられて向かった王宮にあったこと。
全てを聞き終えたお父様は、暫く額に手を当てて考え込んでいた。
まさか、王家の跡継ぎが私利私欲に駆られて、自分の娘に害を為していたなど……。
幼かった頃の王子に心を砕いていたお父様としては複雑この上なかったことだろう。
そんなお父様に、私はどうにかあの変態王子に一矢報いたいと訴えた。
さすがに、暴力は駄目、絶対に許しませんと諭されたけれど、
私が苦しんでいたことを知っているお父様は、
セレインの父親である国王陛下に手紙をしたためてくれると言ってくれた。
従兄である国王陛下に予め話を通しておけば、なにかとやりやすいだろう。
けれど、絶対にいきなり暴力に訴えてはいけない。
きちんと言葉で話し合いなさい、と、最後まで念を押されてしまった。
……勿論、それで私の気が済むわけではないから、
何かひとつ罰を考えておくといい。お父様はそう疲れ気味に提案してくれた。
罰ねぇ……、
罵倒も怒りの感情も喜んでしまう変態に、果たして効く罰などあるのだろうか。
むしろ、ご褒美です!とか言い出すんじゃ……。
ありえそうで、正直身体が小さく震えた。
その時は、さすがに何も思いつかなかったから、
私は旅の途中で考えることにした。
「ねぇ、フィーシュ。
貴方は王都には行ったことなかったわよね?」
「そうですね。残念ながらまだ一度も。
王都の噂などは、時々耳にしますけど、
さすがに距離が遠いですからね。容易には行けません」
「噂、かぁ。……それって、王宮とかの噂もあるの?」
「王宮ですか?うーん……、
確か、この前屋敷に来た商人の方が、色々話していた気はしますね」
「どんなの?」
「王宮で行われた秋の宴の様子とか、
あ、一般市民にも王宮の庭園が解放されていたそうで、
商人さんも、その宴にすんなり入り込んで、色々売り込みをかけて成果を得られたって
喜んでましたねぇ……」
確か、今の国王陛下は民に対して寛容だと聞いたことがある。
才能のある者を、貴族、庶民と問わず雇用し、その育成にも力を注いでいるとかなんとか。
王宮行事にも懐深く民を迎えている姿勢といい、本当にあのセレインの父親かと疑問に思ってしまう。
息子の方は、どう考えても危険要素満載な男にしか見えない。
どうせなら、そんな歪んだ息子のやってきたことに早く気づいて、止めてくれれば良かったのに。
よその庭が見えていて、自分の家の庭が見えていないとしか思えない。
「あと~、そうだ。世継ぎの王子様の話もありましたね。
次期国王としての才覚に満ち溢れ、人柄も良く、民に慕われているとか」
「……は?」
「どうしました?」
「国王陛下には、他に王子がいらしたかと思って……」
「あぁ、確か、いることはいますけれど、まだ幼い王子様達のはずですし、
政務に携わっている王子様は、第一王子のセレイン様だと聞いています」
……。
ドコノ、セレインオウジサマデスカネ……。
聞き間違いだと思いたい。
私の知っているセレインと、現実のセレイン王子が大きく喰い違っていく。
あの男のどこに、次期国王への自覚とか才覚の片鱗が?
民に慕われてる?頭の中でにこやかに国民に手を振っているセレインの顔を思い浮かべてみる。
……駄目だ、胡散臭いことこの上ない。
最近、全てがわかってしまったせいか、あの男、夢の中での態度が遠慮ないのよね……。
前のようなハイテンションウザ系でないから、まだ静かでいいけど。
私に対する愛情表現が激しく歪んでいっているような気がしてならない……。
「お嬢様~?どうしたんですか~?
意識飛んでるみたいな顔になってますよ~」
「はっ!!ごめんごめん。
ちょっと考え事……を……あれ……」
「お嬢様、もしかして……いつもの、ですか?」
心配そうに、フィーシュが私の顔を覗き込んでくる。
だけど、私はふいに訪れた強い眠気に抗えず、テーブルの上に突っ伏してしまった。
あぁ、またか……。セレインが私を呼んでいる。
どうせ、最近の恒例になっている、『まだ俺のとこに来てくれないの?』の催促でもしたいんだろう。
もういい加減にしてほしいというのに……。
暫くすると、穏やかな寝息を立て始めた私の背中に、フィージュが風邪を引かないように、
厚みのある毛布を掛けて、傍で私を見守る為に椅子に腰を下ろした。
「……」
「(はむはむはむ~!リデリア姫様のおみ足は最高ですね~!!)」
「……何してんの?馬」
眠りに堕ちた意識が、夢の世界の私となって目を覚ます。
また、花畑。しかも、足元には、無断許可で白馬が人の足を甘噛みして喜んでいる。
喋る馬こと、王子の臣下・ヴェルガイアだ。
主も変態なら、馬もそれに似るということなのだろうか。
私は、今すぐ不埒なその馬に一撃をお見舞いすべく、拳を振り上げた。
しかし……。
―ビュゥウウウウウウウウウウウウン!!
「(あ~れ~!!)」
どこからか飛んできた鞭が、馬の胴体にしっかりと巻きつき、
そのまま花畑の向こうまで馬をふっ飛ばしてしまった。
遠くなる馬の声に、私の振り上げた拳は行き先を失ってしまった。
「ヴェルガイアは、筋金入りの足フェチだよねぇ……。
でも、俺のリデリアの足は、俺のものでもあるんだから、
わきまえてもらわないといね」
「……出たっ」
「うん、来たよ。仕事が一段落ついたから、リデリアと一緒に過ごそうと思って」
「来なくていい。ていうか、アンタ、こんなに頻繁に私に会いに来て、
よく仕事が滞らないわね」
「ふふ、そこはほら、俺は他と違って有能だからね。
パパッと片付けて、自分の時間を多くもてるよう頑張ってるんだよ」
いっそ、片付けきれないくらいの仕事を押し付けられて、忙殺されてしまえ!
傍に片膝をついて、私に触れてこようとする手を容赦なく跳ね退けようとするけれど、
その手は反対に、セレインの手の中に握り込まれてしまった。
全てがあきらかになる前なら、容易く決まっていた平手も蹴りも、
最近は、何もかもが不発に終わってしまっている。
それはつまり、最初から避けれるものを、セレインがわざと受けていたということで……。
「アンタって、本当っ、嫌な性格してるわよね!!」
「今日も活きが良くてなによりだよ、リデリア。
会う度に、君の感情全てを独り占めに出来る喜びで、
俺は、そろそろ、本気で狂ってしまいそうだよ……」
「いや、最初から狂ってるわよね!!歪んでるわよね!!
これ以上、どう狂う気よ!!この変態がっ!!」
「ん?……こうやって、夢の中だけで我慢してる俺のどこが?
リデリア、世の中にはね、相手を愛しすぎるあまり、
束縛したり、監禁したり、果ては……相手の命まで奪う人もいるんだよ。
だけど、……俺は絶対にそんなことはしない。
生きて、俺をその強い意思を秘めた瞳で睨んで、
力の限りに罵倒してくれる君を、ずっと見ている方が幸せだから」
……。
切なげに目を潤ませて、縋るように、掴んでいる私の手に頬ずりしてくる。
瞬間……、私の頭の上で一つの言葉が浮かんだ。
「アンタ……、もしかしなくても、ドM?」
普通、怒りや憎しみの感情を向けられて、喜びを感じる人間なんているんだろうか。
いや、滅多にいないだろう。
怒りには怒りを、憎しみには憎しみを。
その感情に違いはあれど、怒りに喜びを、憎しみに快感を。
そんな人は滅多にいないと思う……。
ということは、間違いなく……、
「あぁぁっ!!やっぱり、アンタ変態!!ド変態!!
歪んでる上にドMなんて、救いようがないわぁああああ!!」
鳥肌全開になった私は、セレインの手を思いきり振り払った。
そして、猛烈な勢いで後ろに後ずさる。
コイツの手の届かない場所まで、に・げ・た・いぃぃぃいいいいい!!
「ふふっ、その逃げっぷり、リデリアは本当に可愛いなぁ。
それと、勘違いしてるようだけど、俺はドMでもなければ、変態でもないよ?
ただ、君を愛するが故の暴走がたまにあるだけで」
「暴走って自覚だけはあるのね!!
あと、たまにじゃないわ!!常時通常運営でアンタは暴走してるわよおおおお!!」
私の叫びも虚しく、
気にした風もなく、即座に距離を詰められ、身体の自由を奪われる。
二人の衣服が擦れ合う音がして、気付けばセレインに押し倒されてしまった。
お、重い……っ。
さすがに、男性の体重を真正面から受け止めるには、少々無理がある。
セレインの背中をべしべしと抗議の意味を込めて叩く。
すると、少しだけ身体を浮かしてくれたセレインが私の頬を手を添えて、
じっと見下ろしてきた。
空色の髪がサラリと、私の頬にかかる。
青く美しい瞳は、一瞬も私から逸らされることがない。
「ねぇ、リデリア……。
早く、俺のいる王都に来てよ……。
本当の君を、この腕に力いっぱい抱き締めたいのに……」
「……はぁ、私はね、今までの恨みをアンタにぶつけるために、王都に行くのよ。
そう簡単には好きにはさせないわよ」
「俺は、したいようにする人間だから、
リデリアが抵抗しても、結局こんな風になると思うよ?」
「王都に着くまでに、武術を磨いておくわ」
「付け焼刃の力で、俺に敵うと思う?」
近づいてくる綺麗な形をした唇が、セレインの艶やかな囁きと共に触れる寸前、
――ドゴォッ……!
「っ」
「調子に乗らないでくれるかしら?このド変態王子……!」
幸いなことに、こちらの唇がそれに重ねられる前に、私は相手の意表を突くことに成功した。
覆いかぶさっていたセレインの腹目がけて、膝で渾身の一撃をお見舞いしてやったのだ。
自分の腹を押さえ、セレインが横に転がる。
「はぁ……、君は本当に、飽きがこないくらい、刺激的な人だよねぇ……」
「あら、飽きてくれて結構よ。その方が私も平和だし、きちんとした睡眠がとれるもの。
それと、アンタ王子なんでしょ?私ばっかり追いかけてないで、
他の綺麗な貴族のお嬢さんとかと交流でも深めなさいよ」
「お断りだね」
「即答しないでよ。アンタは、昔会った私のインパクトに縛られてるだけで、
他に目を向けてないだけだわ。世界は広いのよ?もっと他の女性も知って良い意味で、普通の恋をしなさいよ」
呆れたようにそう諭してやるけれど、セレインは拗ねたように私から背中を向けてしまった。
小声で、『男心がわかってない……』などと、ブツブツ何か言っているようだ。
だけど、私は構わず言葉を続けた。
教えてやらなくてはならない。一つのものに執着しすぎて間違った方向に走りまくっているこの男に。
「未来の国王陛下がお相手なのよ?お嫁さん候補を募ればよりどりみどり!
その中には、一人くらい、アンタの興味を惹く子だっているかもしれないわ。
貴族が嫌だっていうなら、町の子との運命の出会いに願いを託してもいいし、
身分差の方は、誰かの養女にでもして……」
「……」
「アンタ、顔と権力だけは有り余るほど良いもん持ってるんだから、
少しは自分で行動しなさいよ、大体……」
と、続けようとしたところで、再びセレインに組み敷かれてしまい、
今度は私の方が意表を突かれて、その行為を許してしまった。
強引に奪われた唇は、いきなりの行為に驚いたせいもあり無防備にも、
セレインの舌を受け入れ、その熱いぬくもりをもった動きに息さえままならない。
「んっ……、んーー!!」
離せと訴えるように、私は私は四肢を暴れさせて相手を引き剥がそうとするが、
今度は、その動きを封じ込めるように重さをかけられた。
頭にまわされた右手がしっかりと固定され、逃げ道を完全に塞がれてしまった。
触れ合う濡れた舌同士の感触が、くちゅりと音を響かせる。
そして、暫くの間パニックになっていた私を好き放題してくれていたセレインが、
やっと気が済んだかのように、唇を離すと、それと同時に私の平手が奴の頬にヒットしていた。
「このっ、馬鹿!!変態!!普通ここまでする!?」
「……」
「どうしようもない馬鹿だって思ってたけど、
これはいくらなんでも酷すぎるでしょ!!アンタ、人をなんだと思って……」
「じゃあ、リデリアは?」
「え……」
私の平手で赤く染まった頬を気にする様子もなく、セレインは抑えたような声音で口を開いた。
酷い真似をされたのは、私の方なのに……。
私を見下ろす青の瞳は、冷たく……どこか傷ついているかのように揺らいでいる。
「何年……、俺が君を想い続けてきたと思ってるの……。
会いに行きたいのを必死に堪えて……、せめて、夢の中だけでもって……。
俺がどれだけ我慢して生きてるか、……少しは考えてよ……」
「な、なによ!!そんなのアンタが勝手にやってるだけで……」
「そうだよ。俺がしたいから、好きなようにしてる。
リデリアが嫌だって言っても、夢を繋ぐことを止めることだってしない。
俺の一人よがりな行為だって、わかってる。
だけど……、俺を拒むのは仕方ないけど……、
よりによって、他の女を俺にあてがうとか、どれだけ残酷なの?」
「そ、それは……」
た、確かに……、好きな人がいる人に、他の恋を勧めるのは軽率だったかもしれない。
本人からすれば、心にドスドスと抜き身の剣を投下されているようなものだ。
だけど……、それで私が全部悪いみたいに言われると……。
「言わせてるアンタにだって原因あるでしょうが!!」
「ふぅん……、自分の非を認めないんだ……?
頑固で鈍感で、……俺より自分勝手なのは、リデリアじゃないか」
「アンタねぇっ……」
「……もういい。今日は帰る。
リデリアも戻りなよ。……それと、もし、現実で他の女なんてあてがってきたら、
俺、さすがに本気で怒るからね……?」
「……っ」
去り際、チラリと絶対零度の青い瞳で釘を刺された私は、
揺らいでいく夢の景色と共に、現実へと戻ったのであった……。
起きた時、思いきり具合が悪いのと寝覚めの悪さで、そのあと、一日寝込むことになった。
ヤンデレ、ってわけじゃないんですよね。この王子。
でも微妙に病んでる……。という感じです。
ヤンデレだと、相手を殺しちゃうぜ!とかになる気はするんですが、
彼は、活き活きとしたリデリアが好きなので、
それが損なわれる真似はあまりしないかと思われます。