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泣ける話  作者: 紅夏
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part5~人の優しさ~

久しぶりに菊田君が泣ける話を書いてくれたので、投稿を開始。

今回は、割といい感じですね。


「痛っ!」


どうやら、頭を思い切り打ち付けた様だ。


打ち付けたと思われるひたいをさする。

少しずつ痛みが引いていったので、さすっていた手を額から離し、なんとなく見てみる。


 ……真っ赤?


いや、勘違いか……


一瞬真っ赤に見えた手は、いつもと変わらない肌色だった。


手を握る。

その手を広げる。

それを少し繰り返す。


別に意味なんてないが。


ここはどこだろう?


「ワーオ! 真っ白~」


……何くだらない事を言ってるんだ。

我ながら自分に笑える。

 

自分を包む世界は、真っ白だった。


周りが全て真っ白なんだ。

ペンキをぶちまけたような周りをもう一度見回す。



あれ?


誰かいる?


寝ているのかな?


いや、倒れているのかな?


まぁ行って見ればいいや。

そういって立ち上がろうとしたけど、足に力を入れた瞬間体がよろけて倒れる。


「あれ~? なら、ふっ!」


掛け声というか、気合いをいれると立てた。


今のところ寝ている様に見える誰かの元に歩みよる。見た感じ、大した事は無い距離だった。


それなのに、歩いてみると結構な距離だと思った。


一歩いっぽ歩く度に体に重くのしかかるような感覚がある。


途中であの人のいる所まで行くのを躊躇ためらったが、何故かそう思った瞬間に、あの人の元に行かなければ行けない気がした。


正直辛いが、何か分からない使命感に動かされ僕は足を動かし続けた。


少女まであと一歩の距離まで来た。


だけど、その一歩を踏み出そうとする足が動かない。


力を入れる。しかし、余計に動かなかった。


なら、逆転の発想だ。


力を抜いて・・・・・、足を動かす。


足はすんなりと動いてくれた。


無事到着。

見ると、それは小さな女の子だった。


俯せになって、その小さな手で紙に何か書いている。

女の子の手は、スラスラと何かを書くために動き続けている。


「君は何をしているの?」


そういいながらしゃがみ込んで紙を覗く。

そこには、色々な言葉が書かれていた。


物の名前から人らしき名前。

不可思議なものとか、とにかく色々と……。



悲しみ?



その言葉が妙に引っ掛かった。


なんで、引っ掛かるんだろう?


頭を悩ます。


「愛を、解いているのです」


……へっ!?


愛を、解く?


イマイチ理解が出来なかった。


その少女の顔を見て、「愛を解いている?」とさっき言われたことをそのまま聞いてしまった。


「そうです。愛を、解いているんです」


ニコッと笑って答えてくれた。


笑顔がとても可憐だった。

少女の可愛さもあって、とても綺麗だった。


思わず見とれてしまい、「そうなんだ」 と言葉だけの理解をしてしまった。



が。



冷静になると、おかしいと感じる。


愛なんて、解けるわけない。


「お兄さんは愛を解けましたか?」


そう、不意に聞かれてしまった。


そう聞かれた僕は、

「愛なんて、解けないよ」

何も分からない小さな子供に、言い聞かせるように言っていた。


「なんで?」


なんで…?


……なんで、だろう?


理由があったはずだ。


理由を思い出そうとする度に、なぜか胸が痛くなった。


刺さるような感覚がきた時


「愛を解くには全てを捨てなくちゃいけないから」


口から言葉が零れ始めた


「愛を解こうと思うなら自分を捨てなくちゃいけない」


流れる、ようだ


「自分を捨てるんだから、愛が解けた時にそこに自分はいない……だから、結局答えを見れないんだ」


まるで、流れるようだ


「愛を解こうとするなら、誰かを傷つけなくちゃならない! それでも君はそんな・・こと、出来るの?」


本当に、流れていく


「僕には出来なかった! 自分を捨てることも! 誰かを傷つけることも!」


全部、流れた


「解けずに残るのは、後悔くらいだ!」


流れていたのは、涙もだった。


この気持ちは、何だろう?


僕は、誰なんだろう?


なんで……、なんで……悲しいんだ?


「ここは、人の心です」


女の子が、僕に教えてくれた。


「あなたは新しく生まれた人の感情……悲しみです」


とても、優しい声だった。


「愛という物の中で生まれた、感情」


……そっか。


愛に、悩んで生まれたのか……。

じゃあ、さっきの道は、記憶だったのか。


道理で、重いわけだ。


「あなたは、悲しみから出来たんです。涙が止まらないのも、仕方ありません」


自分でも気付かなかったが、涙はまだ止まっていなかった。


「僕は……悲しみだけじゃない、よな」


女の子に、聞いてみる。


「それは私にはわかりません。悲しみさんが、気付かないと」


悲しみさんって呼ばれちゃったよ。


「君は……なんて感情?」


この女の子もここにいるということは、何かの感情なんだろう。

そう思って、女の子に聞いてみる。


「私は、好奇心。知りたいと思うことを止めない……この手を休めることの出来ない、好奇心です」


僕と話しながらも手が止まらなかったのは、そういうことか。


「一人でこの手を動かしつづける……私は、機械となんにも変わらないよ」


すごく、悲しそうだった。


自分の“悲しみ”の目からでもわかるくらいに……


体が、勝手に動きだした。


体は女の子に被さるように。

僕は女の子の動き続ける手に、自分の手を重ねた。


女の子は一度振り向き、こちらに向けて笑顔を向けてくれた。


「悲しみを知ってるから、悲しんでる君にも優しく出来る」


僕はそう言って、顔を伏せた。


「優しい、優しい悲しみさん! どうも、ありがとう!」



優しさって、こうやって生まれるんだと思いませんか?


ふむふむ。

心にじんわりとくる感じの内容でしたね。


いやあ、良く書けるな、こういうの……

以上、傍観者としての紅夏でした。

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