執行録2 情報員チンタ
執行連の待機員が集う拠点に着いた。
しかし、今日はやけに騒がしい。何か大きな事件でも発生したのだろうか・・・。
情報員のチンタが、たまたま近くに座っていたので話しかけることにした。
「この騒ぎはなんだ?」
「お、リルさんじゃないっすか! 無事、任務は完了したみたいっすね」
相変わらず、小物感漂う喋り方である。
年齢は十三歳と若く、まだ青いこともあり、誰に対しても生意気である。
しかし、この若さで組織に入っているので実力は認められている。
実際、チンタは腕が立つ。持ち前の明るさからか、何故か人が引き寄せられるのだ。
情報員を務める者にとって、この能力は身に付けたくても身に付けられない。
まさに、天性の才能ともいえる。
今回のターゲットも、チンタが良くない噂を小耳にはさみ、俺に教えてくれたのだ。
「今、リーダーが戻ってきているんっすよ。それで、みんな目にするのは初めてっぽくて、こういう状況ってわけっす」
「そうか。それにしても珍しいな。リーダーが戻ってくるなんて」
「そうっすよね! 自分もビックリしたっす」
ほとんどリーダーは、この拠点に戻ってくることはない。
そのため、基本的に任務は専属の情報員から伝えられる。
俺だと、このチンタが自分専属の情報員である。
まさか、リーダーがこんな大勢の連員の前で姿を現すなんて・・・
自分はよく知っているからこそ、この行動を取ることに違和感しかなかった。
「それでリーダーはどこにいる?」
「連長室にいると思うっすよ」
「助かる。あと、これ今回の礼だ」
連長室に向かう前に、俺はチンタに情報提供のお礼として1金貨を支払った。
こうして、俺たち執行員と情報員の関係は成り立っている。
1金貨あれば、半年は遊んで暮らせる。
そんな大金を払う必要がないと思われるかもしれないが、情報員は執行員より危険が伴う。
ターゲットの情報を提供するために、身辺や組織内に潜伏しなければならない。
この1金貨は、命を懸けて行動してくれた情報員を尊敬しての金額でもある。
「まいどっす。じゃあ、また情報入手したら、お伝えしますんで」
「ああ、よろしく頼む」
「では、お別れのハイタッチを」
チンタはそう言い、片手を上げた。
「なあ、これやる必要あるか」
「あるっすよ。信頼関係を築くためには、こういう何気ないやり取りも重要なんすよ」
そんなもの俺には分からない。この組織に入ってから、俺は悪人を裁くことだけをやってきた。
友達なんていらないし、家族も必要ない。
大事なものを抱えたら、その分だけ失った時、多く悲しむことになってしまう。
もう、あんな思いは二度としたくないからな。
「そうなのか・・・」
チンタがそう言うなら、俺はその言い分に従う事にした。
パンッ!と綺麗な音が鳴った。
「力加減してくださいっす」
チンタは、上げてた片手に息を何度も吹きかけていた。
だいぶ手のひらは赤くなっていたことから、そこで自分が力強くやっていたことを自覚した。
そんなつもりはなかったけど、チンタには「ごめん」と一言だけ謝った。
そして、少しの罪悪感を胸に、連長室へと向かった。




