43 誓い
翌朝、セレスタとアルブレヒトの面々は帰還する。復興支援については、物資と人員を明日以降に送ることで決まった。
一行が魔術陣の前に集められた時、カエリウスは最後にもう一度、見送りに来たカムルカの人々を振り返った。
日数にすればわずかな滞在だった。だが、この地で過ごした日々は、長い年月に匹敵するほど濃く、忘れ難いものになっていた。
カムイチカが目を真っ赤にして立っていた。情の厚い青年だ。カエリウスは歩み寄り、抱擁を交わす。
隣にいたウタラの前にも進み出て、腰を少しかがめて抱き締めた。老女の背は細かったが、その温もりには強さがあった。
そして――トゥイラ。黒い大きな瞳が潤んでいる。その姿が愛しくて、カエリウスは彼女を強く抱き締め、顎をすくい上げて口づけた。
途端にトゥイラは顔を真っ赤にし、周囲から悲鳴のような声があがった。
不思議に思って顔を上げると、カムルカの人々は皆、赤面して動揺している。
「カ……カムルカでは、人前でこういうことはしないのだ!」
トゥイラの抗議に、カエリウスは爽やかに笑った。
「はははっ。そうか、それは悪かった」
そう言って、もう一度唇を重ねた。
「この……!」
顔を真っ赤にして睨みつけるトゥイラの髪を、カエリウスは優しく撫でてやる。
「すぐ迎えに来る。いい子にして待っていてくれ……いいね?」
トゥイラは赤い顔のまま、黙って小さく頷いた。
カエリウスは振り返り、カムルカの人々を見渡す。静かな声が、朝の空気に響いた。
「復興が一日も早くなされることを祈っている。ここで過ごした日々を、私は生涯忘れない。どうか皆、健やかに。世話になった」
そう告げて輪の中に加わり、小さく手を掲げる。
次の瞬間、光が一同を包み込み、その姿は静かに消えていった。
残されたカムルカの民は、誰もいなくなったその場所に向かって、いつまでも深く頭を垂れ続けていた。
朝の風が、彼らの頬を撫で、焚火の灰を空へと運んでいく。
――約束の言葉だけが、柔らかな光となって、長くその地に残った。




