表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

24 出立前夜

 アルブレヒト皇国から、聖女と司祭、そして聖騎士たちがセレスタ王国に到着した。彼らは揃って右手を胸に当て、礼をする。アルブレヒト皇国聖光教会流の挨拶だ。


「おや、君たちは……以前、会ったことがあるね」

 カエリウスが穏やかに声を掛けると、聖女と司祭は一瞬驚き、そして破顔した。厳しい戒律の下にあった聖光教会だが、彼らは真面目でありながら、どこか人懐こさを感じさせる。


「カエリウス殿下、再びお会いできて光栄です」

「現在はヴァルデン公閣下です。閣下とお呼びください」

 アドリアンが厳しく指摘すると、司祭は「あ」という顔をして頭を下げた。


「いいんだ。そう気にしないでくれ。……ベネディクト司祭だったな」

 はにかみながら差し出した手を握り返す司祭に、カエリウスも柔らかく笑みを浮かべる。


「ヴァルデン公閣下、聖女ソフィアと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「大変な仕事になるかもしれない」

「承知しております」


 その言葉に、カエリウスの胸中にも静かな力が宿る。必ず彼らを無事にアルブレヒトへ送り返す――改めてそう誓った。


◇◇◇


 王城の小ホールを借り、ささやかな立食式の壮行会が開かれた。

 アルベリクとカエリウスは一段高い席に並び、思い思いに語らう人々を眺めている。


「無事に戻れよ」

「私は安全な場所で指揮するだけだから」


 カエリウスが隣の兄に目をやると、心配そうに細められた瞳が返ってきた。やんちゃな弟を見守るような視線に、胸の奥が少しだけ温まる。


「……無事に戻れよ」

「……はい、兄上」


 見上げれば、王城の高窓から二つの月が覗いていた。

 白と赤。寄り添うように、今夜も静かに輝いている。


 静かな夜は更けていく。

 そして明日の朝、彼らはついにカムルカへと出立する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ