表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/46

11 覇者の剣

 三日後。晴れ渡る空に強い風が吹き荒れる日、カエリウスは再びアストラリオン塔の離れを訪れた。


 部屋に入ると、トゥイラが中央に立ち、深く一礼する。

 カエリウスは振り返らず、低くアドリアンに囁いた。

「席を外せ」


 アドリアンは血の気を失った顔で抵抗したが、鋭い眼差しに射抜かれれば、家臣として否とは言えなかった。イコルとサラナも続きの間へ下がり、部屋には二人きりとなる。


「体調はどうだ」

「その節は……」

 黒髪を高く結い上げたトゥイラが、深淵のような瞳で見上げる。

 カエリウスは彼女からは距離を取り、立ったまま腕を組んだ。手の小さな震えを彼女から隠すように。

「話したいこと、渡したいものとは何だ。手短に言え」


 窓が風に鳴り、雲が陽を覆い、部屋が薄暗く沈む。

 トゥイラはカエリウスの前に膝をつき、布に包まれた大きな物を恭しく差し出した。


「お受け取りください。ノパシリの王」


「これは……何だ」


 赤布が剥がされ、姿を現す。

 全身が闇のように黒い刀。吸い込まれるような深い色は、カムルカ人の瞳を思わせる。


 トゥイラはそれを両手で捧げ上げた。

「覇者の剣。我がカムルカに伝わり、ノパシリの王へ授けられるべき剣」

 それを静かに見下ろしながら、低くした声で問う。

「貴女が度々口にする“ノパシリ”とは何だ」

「力を持ちし者」


 カエリウスは剣から静かに一歩退いた。

「なぜ私なのだ。セレスタの王は兄上だ」


「あの方は人の王に過ぎず。……貴方こそがこれを持ち、神をも恐れぬ力を得るのです」

 剣を掲げたまま顔を伏せる彼女が、今どのような表情をしているのか、カエリウスには察することもできなかった。

 彼は額に手を当て、青ざめた顔を覆う。

「……時間をくれ。我々には対話が必要だ」


 その声は、自ら驚くほど掠れていた。


「王がそれを求められるのであれば」

 トゥイラは剣を脇に置き、深く頭を垂れた。


 窓が、小さくカタカタと鳴り続けていた。

 それは風のせいか、それとも眠れる剣の息遣いか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ