【3】
りらりの案内で未知のゲームショップへとやって来た。
一言で表すなら、迷路だった。
本棚はキレイに並んでおらず、やたらに煩雑だ。縦、横、斜め。あらゆる状態で置かれており、壁でもないのに行き止まりが存在している。
また、棚の側面にはポスターが貼られているが、それもまたデタラメ。ポスターにポスターが貼られていたり、逆さまだったり、明らかに古い日付の物であったり。
だいぶいい加減な雰囲気が漂っており、照明が暗いのも相まって少し不気味だった。
そんな店内を、りらりは慣れた様子で進んでいく。迷いなど一切ない、堂々さ満点のスピードだった。
「古いのも新しいのもあるから、好きに選んでちょうだい」
「ジャンルは何でもいいのかい?」
「そうね、ノベルゲーム以外にしてもらおうかしら。そっちに関しては趣味でちょっとだけ詳しいから」
「1人用と大人数用は?」
「それもお任せするわ。私向けであれば、何でもいいわよ」
うーん、大雑把過ぎる注文だな。ご飯のリクエストで何でもいいと言われると逆に困るという話と同じだ。
とりあえず、グルグルと回ってみる。
しかし、本当に雑多だ。
誰もが知る有名ゲームから、もはやジャンルすらよくわからないタイトルまである。
こうやって実物のソフトを見ながら選定するのは随分と久しぶりだ。もうこの数年はネットでダウンロードしてプレイするばかりで、現物を買いに行くということをしなくなってしまった。
こうやってパッケージを眺めていると、懐かしさを感じる。
同時に、苦しい。
僕は、戻れるのだろうか。
戻った方がいいのだろうか。
それとも――
「これとかどうかな?」
落ち着け。今はそんなことを考えている場合じゃない。
僕はりらりに色々な噂を解き明かすゲームを勧めた。
……このゲームはここ最近のゲームなのだが、なぜか十数年前のハードのソフトと同じ棚にあった。棚の並びだけでなく、中までゴチャゴチャだった。
「へー、これ、家庭用機でもできるのね」
「知っていたかい? なら話は早い。とにかくやってみて欲しい。きっとりらり好みの作風だから。あぁ、ストーリー系のだから、ネタバレは踏まないように気を付けてね」
「そうねぇ……」
と、りらりが口を開く。
そこから先の言葉は、いつも通りのものだと想像していた。
これにすると決断するか、他がいいと別の物をお願いするか。あるいは雑談か。
とにかく、そういう類だと思っていた。
だから――
「それ、実況しやすかった?」
そう言われて僕は、冗談抜きで冷や汗が出た。
「え……何で……」
誤魔化すか、驚きつつ認めるか。どちらかを行うべきだった。
相手はりらりだ。僕にとっての1番だ。あの活動のこと以外は彼女と経験したと言っても過言でない程に、親密で、信頼していて、だから、お互い目指すものがあったから、高校卒業後はお互いに連絡を取ることもせず、それでも僕らの繋がりは存在できるとわかっていて、全てを話しても構わないはずなのに――
ダメだった。
僕はただ、狼狽するだけで、りらりを困らせていた。
「……ごめんなさいね。でも、確証が得られたわ。やっぱり、何かあったのね」
りらりは僕が勧めたゲームを手に取り、僕の手を取り、
「シーソーに乗りましょう」