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プロペラ  作者: 塩味うすめ
9/12

空を自由に飛んでみたいと思わないかい?①


+++++++++++++++++++++++++++++++✈️


 ポプラの広場に笑い声が響く。トルクとダイヤが楽しそうに笑い、リンも控えめだけど笑っている。「プロペラッ」をものにした僕は裸にならずとも面白く表現できる方法を編み出していた。

 

「ライト兄ちゃん、ハハハ何それ」

「きゃはは、へんなの~」

「ライトったら、フフフ」


 股の間で棒を挟んで、腰をグルグルと回す。意識は棒の先端についたプロペラの羽2枚を回すことに集中していて、余計な雑念は入らない。腰に手を当ててタービンが如く羽を回す、その姿が内股なことも合間って、面白さが表現できる。それに「見せたいものがあるんだ」と3人を誘ったのには、もうひとつ狙いがあった。


「ところでさ、ライト兄ちゃん、プロペラって何?」

「トルク、プロペラというのは、クルクル回る力を進む力に変える道具のことなんだ。これを見るとわかると思う」


 トルクが狙い通りの疑問を抱いてくれたので、内心ほくそ笑む。僕は股の間に挟んでいた物を手にとって、羽の部分を固定そして、両手に挟んで回転させた後に手を離す。するとプロペラの羽がついた棒は回って、上昇していく。上方向に力を加えていないのに、魔法の力が働いたように、空中をさ迷うように飛んでいく。

 それをカエルが水を浴びたような表情になって、見上げる3人。開いた口がプロペラの羽がついた棒、プロペラ棒と同じ軌道の弧を描く。回転する力は徐々に弱まってプロペラ棒は落ちていく。ダイヤがあわてたように走って、リンが後を追いかける。         

 

「...ライト兄ちゃん、何あれ魔法?」  

「魔法じゃない、あれがプロペラさ」


 向こうの方でダイヤが僕の真似をしてプロペラ棒を飛ばすが、上手く回転できず直ぐに落ちてしまう「なんで」と言いたげに首をかしげてダイヤはリンを見る。リンは恐る恐るといった感じでプロペラ棒を手に取ると、じっくりと観察してからプロペラ棒を回し始めた。「リン、そのまま勢いをつけて前に放るように離して」僕は掛け声をかけて、リンは頷くとプロペラ棒が空中に舞い上がる。

  

「くるくる~」 


 ダイヤがプロペラ棒のように両手を広げて回る、トルクも続いて回り、リンも続いて、連鎖的に僕も回る。しばらく僕らは回り続ける。誰かから何処かから笑いが起きて、みんなが笑う。笑い声が重なりあって、ひとりまた、ひとりとその場に屈んでいく。世界ぐらぐらと揺れて立てそうにない。


「もう限界」

「ううっ何をしていたの私...」

「とばない」

「ダイヤ、僕らが回転しても重くて飛べないんだよ。プロペラ棒が空に飛んでいくのには揚力という力が働いているんだけど、僕らが回転してもその揚力は生まれないんだ」


 僕はみんなに、プロペラ棒を見せて揚力の話をする。空気という気体が流体であり、羽の形状によって圧力差が生じ、下から上への力が生まれる事を地面に図を描いて話す。


「べるぬーい?」

「そんな人、聞いたことないわ」

「ライト兄ちゃんのパパの知り合い?」

「うっ、まぁそんなとこ。でさ、僕はいつかこの揚力を使って空を飛ぶものを作りたいんだ」


 なんとかここまで流れを持ってこれた。僕が転生を選んだ理由、あの映画のシーンのように飛行機で空を飛ぶを実現させる為にどうしようかと漠然としていた。が、それも昨日までの話。

 昨晩、またお風呂場で「プロペラッ」をパパに披露していた時「ライト、それをどうにか裸にならず出来ないか」と言われ思い付いたのがプロペラ棒。そこから、この流れにと回路が繋がるのは早かった。

 という訳で、僕はいま内心ドキドキしながら用意していた台詞を言い切ったのだが、みんなの反応はというと。


「よーりょく?」

「空を?」

「ライト兄ちゃん?」


 上手く伝わっていない、ダイヤに至っては揚力についてまだ理解できていないようだ。だがここで諦める僕ではない。そんな選択は転生を選択した時から永久に削除されている。


「空を自由に飛んでみたいと思わないかい?」   

 

+++++++++++++++++++++++++++++++✈️


 

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