○○の感情
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こんなものか。魔法を使っての破壊行為は訓練で慣れている。そこに亜人が加わっただけ、心身の状態に変化はない。強いて言えば興奮していると言ったところだ。
そもそも人ではなく亜人、人間未満の存在を亡きものにしたんだから、そこまで気に病む必要はない。家畜を殺したのと変わらない。
「すごいな、やはり勇者の称号は伊達ではないな」
僕の成果を見た教官がやって来た。言葉とは裏腹に嬉しくなさそうな表情だ。こんな子どもに対して○○の感情を抱くなんて大人げない。
「いえ、たまたまです」
「謙虚な姿勢も流石だ、ご両親の教育が良かったのだな」
「あ?」
「いや、すまない。配慮が足りなかったな」
見え透いた嘘をついて誤魔化したつもりか。僕の父が最近亡くなったことを知ってて“ご両親の教育”と嫌なことを言ってくるのだから手に負えない。
そもそも言葉と表情が何一つ噛み合っておらず、悲しげな表情をひとつも隠せていない。自分よりも年若い子どもに活躍の場を奪われて、悲しいと思うならもっと活躍して欲しいものだ。そうすれば父さんだって死ぬことはなかったんだ。
バツが悪くなった教官は他の新兵の所へと離れていく。去り際には「接近せずそのまま魔法で攻撃するように」と余計な一言を残して行った。僕はその後ろ姿を軽蔑の目で見る。
父さんが活躍していた時も○○の感情を抱いていたのだろう。力が無いくせに他人の足を引っ張る事には余念がないとは呆れたものだ。
僕がもっと早く戦場に出ていれば、こんな事にはならなかった。母さんがひとりで泣くことも、ニコに「そんなことも知らない」と責められることもなかったんだ。
戦場デビューを飾ったあと僕は多くの人に誉められ、論功行賞では戦功賞を頂いた。その後も戦場に出ては華々しい活躍をしていく。
相手も僕の魔法に対策を考えて、徒党を組んで風の魔法を使用したり、火の魔法を使用しなかったりとしてきたが、そのことごとくを吹き飛ばす。風の魔法だけで亜人を数百メートル打ち上げた。それほど迄に勇者の魔法は凄まじいものだった。
はじめは慣れなかった叙勲式も回を重ねる度に様になった。堂々とした姿に「子どもらしからぬ所作」との声も聞こえるくらいに。
「御家族も君を誇りに思うだろう」
誰の言葉だったかしらないが、訓練校に来た日から僕は故郷には帰っていないし、母さんやニコにも会っていない。僕の活躍は軍の配給を通して伝わっているだろうから、それでいい。
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子どもらしくない行動を増やせば大人に成れるのだろうか。
大人らしい行動を増やせば大人に成れるのだろうか。
らしい行動とは何だ?誰かの目に合わせて行動するのが大人なのか。
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戦場に出るようになって4ヶ月が経った頃、ビアードさんとピアンテさんが僕を訪ねて来た。訓練校の寄宿舎は戦場に出た時に引き払う形になり、住まいは別に用意されたので会うのは僕が父さんの事で帰郷する前以来だった。
「リトル久しぶりだな」
「ライト君、お久しぶりです」
前と同じ調子で話しかけてくる。年上で敬意を払っていた二人だけど、今となっては自分より小さく感じる。背だって僕より高いのにおかしな話だ。
「久しぶりです」
「どうしたリトル、ずいぶんと雰囲気が変わったじゃないか?」
「いえ、そんなことは」
「いいんですよ、ライト君。今日私達が寄ったのは顔を見に来ただけじゃないんです」
ピアンテさんは上着の内ポケットから指令書を取り出す。その指令書には次の作戦で訓練校時代と同じように二人と組んで班行動をするように書かれており、発行者の名はトレメイン大佐だった。
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つづく




