特別
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王都での生活という言葉を聞くと華やかな生活を想像したが、実際は寄宿舎での規則正しい生活、訓練校では決まった教育課程が組まれており、華やかさとは無縁な質素な生活だった。
戦時中だったのだから当然だ。何も分かっていなかったと悔やんでも、何も戻りはしない。
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王都で、父さんと会えたのは少しの時間。ベフェルの馬車から降りて訓練校に着くまでの間だけだった。村と違って忙しなく動いていく時間、訓練校に着いてからも今後の教育課程についての説明、訓練校の案内と挨拶回り。休む暇もなく寄宿舎へと移動して、説明を受けた後に部屋へと案内された。そこで出会ったのがビアードさんとピアンテさん。
初対面で年上の若者と話すのは初めてで緊張を覚えたけど、訓練や新生活に慣れるのに必死でいつの間にか緊張もなくなっていた。
豪快なビアードさんと神経質なピアンテさん、気が合わなそうに思えたけど、共同生活というのは不思議なもので、日を重ねる毎に僕らの仲は深まった。
ビアードさんは僕達の事を適当なあだ名で呼ぶくせに、あだ名で呼ばれると本名を呼ぶように言ってくる。
ピアンテさんはいつも眼鏡の位置を気にしている「グラス」と呼ばれるのも納得だった。
「リトルは小さいのに、しっかりしているな」
「何ですか、その目に写った視界みたいな言い方は。ライト君はあの空の騎士のご子息ですよ?貴方とは違うんです」
「ああ?そりゃ俺とは違うに決まってるじゃあねぇか、なぁリトル?」
「はは、そうですね」
仲が悪くならなかったのは、僕が二人の間を取り持っていたからのような気もする。前世を含めれば僕は二人よりも大人なのだから。
「本当に、流石です。勇者とは品性も持ち合わせているものなのですね。このピアンテいたく感銘しました」
「委託加盟?なんの話だ?」
「...はぁ、あなたには機微が分からないと言う事です」
「キビね、なんだキビの話か。そりゃリトルは小さいから得意だろうよ、動きが早い」
「それは機敏ですよ、まったく」
「あ!二人とも、そろそろ行かないと朝御飯の時間が無くなります」
三人連れ添って食堂へと向かう。日常はこんな感じだったけど、訓練になるとビアードさんもピアンテさんも違った顔を見せた。二人からすれば何も変わっていないのだろうけど、ビアードさんは勇敢にピアンテさんは緻密に見えて、お互いに噛み合っていた。
軍の戦闘班は三人で1つの班となっており、戦闘班の3班で分隊、分隊が3つで小隊となっていく。戦闘班は寄宿舎でのルームメイトで分けられていて、細心の注意を払うピアンテさんが考えすぎて動けなくなった時、ビアードさんの行動力が救い。ビアードさんの行動が蛮勇になりそうな時は緻密な計算が救っていた。
二人はいいコンビで、おかげで僕は気兼ねなく単独行動が出来た。
訓練をし始めて体が慣れてきた頃、僕の才能は開花した「勇者」の称号は伊達じゃなかったのだ。戦闘のセンス、魔法の扱い方、武器の扱い方、戦うことに関する全てにおいて他と隔絶した力を発揮した。
ただ、それらは努力して体得したものではなく与えられたものであった為、僕は他者と共有することが出来なかったんだ。
何度か一緒に行動をしたが、僕か二人どちらかが足を引っ張る形になってしまう。他の兵士と組んでみたり、班の人数を増やしたりと試行錯誤した結果、今二人はコンビで、僕は単独行動する形に落ち着いていたた。
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勇者の称号は特別なものだったが「特別」は周囲によってもたらされるもので、その「特別」は13歳になったばかりの少年の方を選んでいたんだ。
もっと頼って欲しかった、無理などして欲しくなかった。
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訓練は進み、僕達の班が実戦投入される日も近づいていた。期待と不安を感じながらベッドに身を沈め、戦争について思いを馳せる。前世の自国では歴史で習った過去の出来事で、縁遠い画面の向こうでの出来事。教科書に載っていた写真にはイタズラ書きをして、画面の向こうで飛ぶ光る銃弾をみてキレイだと思っていた。
目の前に戦争が迫るなか、僕は自分の思いを言葉にすることが出来ないまま過ごした。それでも日々の課題に取り組んでいると「勇者」としての役割を全うすることが使命と思うようになる。そう思うようになってからは、そこに僕の意思は必要ないと思うようになっていた。
「ライト君、家に一度戻りなさい」
キースさんが訓練に向かう僕を呼び止めてそう告げた。久しぶりに見たキースさんは酷く弱って見えて、知っている人に会えた嬉しさを感じる暇もなかった。
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つづく




