変わった両親
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最近一人部屋を与えられた僕。就寝前のひとりの時間は窓辺で過ごす事が多い。今日の窓には霜が降りていて、拭うと手に水滴が付いた。この世界、この地域にも気候の変動はあり、僕は今、ストーブで暖められた部屋で過ごしている。陽が落ちるのが早くなって、朝は水で顔を洗うのが億劫になってきた。水滴の付いた手を拭いてから、また窓を覗くと、今度はチラリチラリと雪が見える。
積もりそうな雰囲気に、わくわくする。雪の存在を嬉しく思いながら、おもちゃ箱の底に隠している一枚の包装紙を取り出した。
包装紙の裏には、人力で飛ぶ飛行機の設計図が描かれている。あれから、いくつかの月日が流れたけど、リン達に「一緒にプロペラ飛行機を作ろう」とは、まだ言い出せていなかった。更に言えば、パパとママに飛行機、僕の憧れについてはまだ話せていない。
話をする際に、必ずプロペラ機構の知識の出所について聞かれるだろうから。リン達と違って誤魔化しは通用しない。必然的に、前世のことを話さなくてはいけなくなる。パパとママに前世のことを受け入れてもらえるだろうかと思うと話せないでいた。
僕の両親は変わっている。前世で写真しか見たことのない両親も、子どもを産んで直ぐに手放すのだから、変わっていると言えば変わっているけど、今世の両親も変わっている。
子どもを溺愛しているし、遊びにも全力で付き合ってくれる。いつだって人生を楽しんでいるような、そんな風に見えて、笑い声の絶える日がない。
この前なんて、今年の初雪は予期せず大雪になったのだけど、そのせいでいくつかの作物が駄目になった、僕の好きな葉野菜までも。普通ならその日一日、悲嘆にくれてしまう所だけど、パパとママは違った。
駄目になった作物は肥料にする事にして、積もった雪を使って遊び始めたんだ。僕はそんなふたりを見て、子どもっぽいと思った。だから好きな葉野菜が駄目になった事もあって「作物が駄目になったっていうのに何遊んでいるのさ」と八つ当たりをしてしまったんだ、だと言うのに。
「ライト、悪いことばかりに目を向けていても仕方がないんだ」
僕の憤りを受け止めるように発せられた声だった。でも僕はまだ納得が出来なくて「だからって遊ぶ必要はないよ」って続けたんだけど。
「ライトちゃん、人は悲しい事が起きても、いつか立ち向かわなくてはいけない。それなら早い方、どうせなら楽しんだ方が良いと思わない?」
僕の苛立ちを包み込むような視線に、なにも言い返せなくなってしまう。ママの言うことは分かるけど、でもそれにしたって。
「どう?ライトちゃん」
目の前に作られた雪像を自慢げに紹介するママとパパ。そこには腰に手を当てて「プロペラッ」のポーズを決める、はだかの僕の姿が形作られていた。
「これはないよ!丸裸じゃないか!」
「ライト、男は裸一貫だ」
「うん、って意味がわからないよ!」
「ライト、悪いことばかりに目を向けていても仕方がないんだ」
「それ、さっき聞いた!」
「ライトちゃん、人はいつか立ち向かわなくてはいけないのよ」
「何でふたりとも決め顔なの?!」
次第に遊びの騒ぎは大きくなり、リンとトルクの家とダイヤの家を含む4家族を巻き込んで、雪まつりみたいになった。僕はリン達が参加する前に、邪魔するパパとママをかわして、はだかの雪像をなんとか壊すことに成功し、僕の尊厳を保つのであった。
こんな感じだから、前世の事を話しても大丈夫だと思うけど。今はまだ、純粋な「子ども」で居たいから内緒にしておく。
雪はしんしんと降り続いている。さて、今度はどんな遊びになるだろうか、僕はおもちゃ箱の底にプロペラ飛行機の設計図が描かれた包装紙をしまい、明日の朝を楽しみに眠りについた。
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つづく




