無血の攻防
サクラたちは広々とした応接室に通された。高級感ある三人掛けの革張りのソファに、サクラを除く三人が座る。小難しい交渉事を三人に押し付けたサクラは、壁の絵画や書を興味深げに眺めている。
ガラス張りのローテーブルを挟んで三人の向かいに座るのは、先ほどの金髪の男。彼はサクラを一瞥した後、三人に視線を向けた。
「改めて、話し合いに応じてくれて感謝するよ。僕はダダナン、しがない船乗りだ」
ダダナンの友好的な笑みに、セルードが怪訝そうな表情を浮かべる。
「しがない船乗りが、公的機関の応接室など使えるはずがないだろう。何者なんだ。さっきの男は、お前を副社長と呼んでいたようだが」
「元、だよ。ついこの間辞表を叩きつけたばかりさ」
「例の、禁足海域について探るためか」
セルードの言葉にタオは目を見開き、ミヨとダダナンは感心したように目を細めた。踏み込んだ発言だが、セルードは落ち着いている。
一呼吸おいて、ダダナンが口を開いた。
「なぜそう思うんだい?」
「禁足海域はオデュレーリ全体の大きな問題だ。中央へ直接渡れなくなって困るのは旅人だけじゃない、むしろ最も大きく影響を受けるのは一般市民だ。運賃の高騰や中央との交易の遅れは、生活に大きな打撃を与える。だというのに、ろくな説明もなしでは納得などできまい」
「抗議とかできないの?」
「言ったろう、騎士団長直々の命だと。ただでさえ経済や権力は中央に偏っているんだ、騎士団長の名前まで出されては誰も口出しなどできんよ」
「なるほど、よく理解している。サーニラシブ……いや、王都と縁があるのかな?」
探るようなダダナンの視線に、セルードは苦笑で返す。
「しがない神学者でね、ずっとお上に睨まれているのさ」
「はは、同じ境遇ということか。そりゃ、僕の思惑にも気づくはずだ」
「そうだな。ただ、根拠はもう一つある」
セルードが、刀を描いた水墨画に見入っているサクラの背に視線を向けた。
「彼女の戦闘を、どこかで見ていただろう」




