新たな仲間
「……ふう」
グラスの水を飲み干し、タオは小さく息を吐いた。窓際に座らされ風に当たった甲斐もあってか、表情は落ち着きを取り戻している。
傍らに立つミヨが言った。
「気分はどうですか、タオ」
「うん、大分いいよ。二人とも、ありがとう」
タオが頭を下げると、ミヨは満足そうに、セルードは困ったように笑った。
グラスを窓の縁に置いて、タオはベッドに横たわるサクラに視線を向ける。
「まあでも一番は、あの能天気な寝顔が見れたからかな」
「さもありなん、ですね。死人はあんな顔をしませんから」
「はは、言えてる」
タオの笑顔を見て、ミヨは小さく頷いた。どうやら、話を進めることができそうだ。
「要点を整理しましょう。タオ、ここを出てから戻ってくるまでに何があったか、説明していただけますか」
タオは真剣な表情で頷き、訥々と話し始めた。なるべく主観を交えず、事実のみを伝えるよう留意した。
バーでの交流や戦闘、ベルとの邂逅、決闘の顛末。見聞きした全てを吐き出すまでに、十分以上を要した。
話が終わると、ミヨが優しく微笑んで言った。
「まず、よくサクラの元に戻りましたね。あなたの機転で、最悪の事態は免れました」
「怒られちゃうかもだけどね、約束破ったわけだし。でも、放っとけなくてさ」
「好判断です。さすが、彼女の親友というだけのことはありますね」
「えへへ」
照れくさそうに笑うタオだが、視界の端に頭を抱えるセルードを確認して首を傾げた。
「どしたの? この世の終わりみたいな顔して」
「いや……その、なんだ。俺の学者人生をひっくり返すような言葉が飛び交っていたものでな……」
「セルード、立場を弁えてくださいね」
釘を刺すミヨに、セルードは頭を抱えたままで頷いた。
「分かっているとも。『神造聖人』、『福音継承者』、そして神の力を宿す少女……俺の研究が一足飛びに進展するに違いない人材の宝庫だが、ケジメをつけるまでは協力を仰いだりはしないさ」
「理解しているようで安心です」
「むしろ知恵を貸したいくらいだ、贖罪の一環としてな。だが一神学者の見解など、『神造聖人』の前ではハリボテ同然か」
「まさか、忌憚なく口を挟んでください。当時を生きただけの私と、それを専門に学んだあなたでは知識の角度や質が違います。きっと参考に……タオ? どうかしましたか」
「えっ?」
淡々と言葉を交わす二人をぼんやりと見つめていたタオは、急に声をかけられて驚いたようだった。それから、取り繕うように少し大げさに笑って見せる。
「いやあ、いつの間にこんなに仲良くなったんだろうって思ってさ」
「仲良く……?」
「なったか……?」
不思議そうに視線を交わす二人に、タオは優しい視線を向ける。どんな経緯で加入したとしても、彼も旅の仲間なのだ。どうせなら、仲がいい方が楽しいに決まっている。




