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勝者不在の決着

「がっ……!?」



 左手で傷口を押さえ、よろめくベル。完全に意識の外からの攻撃、肉体的にも精神的にも無防備だった。


 口惜しさと苛立ちに歯ぎしりしながら振り返る。狙撃は下から、かつ角度も急ではなかったので、相手は地上の離れたところにいる。そうアタリを付けたが、寂れたスラム街に忌々しい狙撃手の姿は見当たらない。すでに身を隠したか。



「く、そっ……!」



 胸からは壊れた蛇口のように血が流れ出し、傷を押さえる左手を真っ赤に濡らしている。今の彼女は、心臓を失ったとて死にはしない。だが再生には時間がかかるし、深手を負って血を大量に失えば、死なないまでも身動きは取れなくなる。


 そこまで考えて、ベルは気付いた。斬られた右腕の再生が遅すぎる。腕の傷口は、まるでただの人間の肉体のように血を垂れ流すだけだ。



「……」



 少しの逡巡を経て、ベルは撤退を決めた。情けない戦果だが、ここで動けなくなって捕まるリスクを考えれば致し方ない。


 せめてサクラの息の根を止めてからという思いはあったが、再び心臓を背後から撃ち抜かれたことで失った。痛みと失血で視界が揺らぎ、もはや狙撃手を探す余力はない。


 ベルは真っ赤に染まった左手で、『祝福の薔薇』に触れる。すると刻印が青白く輝き、次の瞬間には彼女の姿は忽然と消えた。その場には、血だまりに横たわるサクラだけが残された。

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