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戦う理由

 サクラが戦意に満ちた笑みを浮かべて言った。



「手ぇ出そうとしてんなよ、人の女によ」


「血の気が多いですね、相変わらず……!」



 ベルは痛みに顔を歪めて吐き捨てる。サクラはそれに、続く二撃目で応えた。袈裟懸けの斬撃は、けれど空しく空を切る。ベルはその強靭な脚力でもって真上に跳び、薄い天井を突き破って外に出た。


 サクラは刀を握りしめ、タオに視線を向ける。



「行ってくる、さっきはありがとね」


「なにつれないこと言ってんの、私も……」



 サクラは静かに、けれど確かな決意を込めて首を横に振った。



「交渉の余地がなくなった以上、ここから先は殺し合い……ただの殺し合いならともかく、あいつとやるならあなたは巻き込めない」


「……弔い合戦でもする気?」


「はは、まさか。私はそこまで親不孝じゃないよ。どんな理由があったとしても、師匠は決闘に負けて死んだ。ならその死の責任を誰かに求めるのは、かえって師匠への侮辱になる」



 力なく笑って、サクラはベルが空けた穴を見上げる。



「ただ、あいつは裏切ったんだ。師匠の信頼を、私たちとの絆を。そのケジメはつけさせる。だから、ここは私に任せてよ。私の顔を立てると思ってさ」


「……」



 タオは少しだけ逡巡してから、不承不承に頷いた。



「じゃあ、先帰ってる。ミヨにおにぎり届けなきゃだし」


「ありがと、ミヨも喜ぶよ」


「……サクラ。帰ってきてよ。ケガくらいなら治してあげられるけど、死なれたらどうにもできないからね」


「分かってるって」



 サクラは笑って、カウンターに足をかけて跳んだ。その姿が消え、天井に着地した音が聞こえてから、タオは踵を返して店を出た。

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