裏切り者のベル
ベルは観念してローブを脱いだ。丈の短い黒いドレスのような装いに、健康的な肌が映える。春の草原を思わせる緑色の長い髪は、後ろで一つにまとめられていた。
その瞳はサクラを、どこか懐かしむような優しさで見つめている。
「お久しぶりですね、サクラさん。三年ぶりでしょうか」
「そうだね、よく覚えてるよ。あんたが師匠を殺して姿を消した、あの日のことはね」
サクラは落ち着いている、少なくとも隣に座るタオにはそう見えた。語気は静かで、目つきに殺意はなく、その手はまだ刀の柄にはかかっていない。
だが、同時にこうも感じた。サクラは、目の前の女を強く憎んでいると。今の冷静さは、仮初のものに過ぎないのだと。
ベルはそれを知ってか知らずか、飄々と答える。
「確かにあの日、私は師である彼女と決闘に臨み、その果てに殺すに至りましたが……仮にあの日、彼女が生き永らえていたとしても、遅かれ早かれ命を落としていましたよ。私を恨むのは筋違いというものです」
「どうしてそう思うの?」
「彼女は自らの責任を放棄した。力ある者として生を受け、その才を十分に育んでいたにもかかわらず、世界に還元する努力を怠った。それは、報いを受けるべき大罪です。裁いたのが私の剣だったのは、偶然にすぎませんよ」
「……偶然、ね」
カウンターの上の、サクラの左手が微かに震えているのを、タオは見逃さなかった。
「サクラ」
「…………大丈夫、分かってるよ」
無理に笑って、サクラは何度か深呼吸をしてから言った。
「その件は、今はいいよ。何か話があるんでしょ」
「賢明な判断です。私たちももう子供ではないのですから、穏便に、建設的な話をしましょう」
そう言って、ベルはドレスの襟元を大きく広げて見せた。豊満な乳房が露になるが、はしたないと諫める者はない。
サクラとタオの視線は、彼女の左胸に刻まれた薔薇の蕾を模した刻印に釘付けになっていた。




