後始末
「いやー、綺麗になった! 悪いね、お客さんに掃除なんてさせちゃってさ」
「私のせいみたいなもんだし、気にしないでよ。むしろ、一番面倒な死体の処理押し付けちゃって申し訳ないよ」
「慣れてんだよ、気にしなさんな」
「怖いなあ、世界はまだまだ平和じゃないってことかあ」
脚立を降りながら、サクラは雑巾片手に笑う。
「それより、お店閉めちゃってて大丈夫?」
「いいんだよ、どうせこの時間はあのオヤジくらいしか客いないしね。そういえばタオちゃん、様子はどうだい?」
「まだ寝てるよ、うなされてる」
椅子を並べた簡易的なベッドで横になる男の顔を覗き込んで、タオが言った。ヨンガがため息をつく。
「まったく、だらしないねえ。か弱い女三人が頑張って掃除してるってのにさ」
「二人は付き合い長いの?」
サクラの質問に、ヨンガは少し考えてから答えた。
「腐れ縁さ。付き合いは長いけど、大した仲じゃないよ」
「ふーん、そういうもんか」
「あんたたちは仲よさそうだね、さっきも息が合ってた。付き合いが浅いとは思えないよ」
「でしょ? 親友で戦友なんだ」
「そうかい、そりゃいい。大事にするんだよ」
優しい顔でそう言ったヨンガは、けれどどこか寂しそうだった。サクラは気付いていたが、詮索するほど野暮ではなかった。
「んじゃ、掃除も終わったしそろそろ行くね」
「ああ、またおいで。ああそうだ、タオちゃん。頼まれたもの、冷蔵庫の横に置いてるから持っていきな」
「お、いつの間に。ありがとう」
タオが大きな風呂敷を持ってサクラのもとに駆け寄る。サクラが不思議そうに首をかしげる。
「なにそれ、いつの間に注文してたの?」
「サービスさ、留守番してるお友達がいるんだろう?」
「ああ、お土産。でもあの子、いらないって言ってなかったっけ」
「食べる必要がないとは言ってたけど、食べないとは言ってないでしょ? 私のサンドイッチも褒めてくれたし。遠慮してると思うんだよね、私たちの負担になると思ってさ」
「なるほどね、さっき言ってたのはそれか……んじゃ、とっとと帰ってあげますか」
二人はヨンガに軽く一礼した。
「じゃ、行くね。ごちそう様」
「ありがとう、ヨンガさん」
「ああ、またおいで」




